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本編

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 エドワルドが帰った翌日以降、リラは、無礼な来客が訪れる可能性もあるからと、一応部屋で過ごすように兄から言われる。

 元々部屋で過ごす事に苦痛を感じないリラは、部屋で本を読んだり、エドワルドに貰った装飾品のお礼とまではいかないだろうが、ジーンに頼んで渡して貰おうと、ハンカチに刺繍を刺したりと、普通の日常を送っていた。

 唯一、今までと違うと言えるのは、毎日エドワルドからの贈り物が届くようになった事。

 言葉と一輪の花が添えられ、リラの宝が増えていく。

 贈り物は、本だったり茶葉だったりお菓子だったり、一日も空けずに送られて来る為、リラは、本当にこんなに毎日貰ってもいいのだろうかと、兄に相談するも、貰っときなよとあっさり言われてしまう。


「エドワルド殿の為だけに目一杯着飾って、笑顔で有難うと言うだけでも、充分だと思うけど。そんなに気になるなら、今度二人切りになった時、リラからキスでもしてやれば?見返りを求めては無いだろうけど(下心は有るから)、それだけでも喜ぶよ」


 因みにリラは、自分からのキスと聞いて、唇にと言う発想は全く無く、手や頬に、と頭に思い浮かべる。


「そんなので、エドワルド様へのお礼になる?」

「充分なるよ」


 一応、ジーンは照れもせずにリラが聞き返した為、唇にと言う発想が無い事も気付いているが、突っ込んで言う気は全く無い。

 そんな事はエドワルド本人が教えれば良い事で、そんな発想が全く無いリラはリラらしいと思っているからだ。

 余談として、リラは部屋にいて全く気付かなかったが、何人かの、予定の取り付けすら無い無礼で身勝手な訪問者は、使用人達の手により門前払いを食らった上、ジーンに報告をされた為、ジーンから痛烈な嫌味と敵認定を下されていた。

 勿論、リラに送られてくる手紙も全て事前開封し、茶会や夜会のお誘いから、悪意ある手紙の全てをジーンに手渡している程で、喩えエドワルドの名前の入った手紙や贈り物でも、全てチェックしてからと言う徹底振りだった。

 エヴァンス邸では、密偵として動ける者は交代でどこかの家に潜り込んでいるが、リラには領地、もしくは王都にいるよと誤魔化してある。リラに気付かれた所で支障は全くと言って無いのだが、潜入となると、リラがどうしても心配する為だ。

 貴族の中には使用人を乱雑に扱う者もいる。それなのにリラは、使用人達を家族同様に想っていてくれるのだ。

 そんなリラを害する輩は、徹底的に排除する。それがエヴァンス家の使用人達が掲げるスローガンだった。



*****

 ※野心を持って近付く者は何故かことごとく不幸な目に合う、と言う噂の真相(笑)
 レベッカはリラ専属なので潜入はしませんが、その分サポートとして大活躍です。リラと鉢合わせしないようにとか、別人仕様のメイクを施すとか教えるとかとか。
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