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本編

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(結婚なんて、出来ないと思っていたのに……)

 自分はきっと愛されない。リラはずっとそう思っていた。

(それなのに、こんな風にわたくしを欲しがる人が現れるなんて……)

 兄のジーンは『僕の気に入った男にしかリラは譲らない』と言ってくれていたが、実際の所、リラはその言葉を結婚出来ないリラへの労りや慰めだと思っていた。

(兄様が見付けてくれるとも言ってくれていたけれど、そうなると相手は渋々、嫌々でもわたくしに気のある振りをしなければならないし、兄様が選んだ人なら大丈夫だとは思うのだけれど、わたくしのような平凡な小娘なんて、飽きるに決まってます。それならば、喩えこの先飽きられたとしても、エドワルド様の方が良い。でも、その時が来たのなら、わたくしはどうすれば良いの?もう既にエドワルド様へと気持ちが充分傾いているのに、これ以上好きになって捨てられるのは怖い……。でも、これだけわたくしに想いを寄せて頂いているのに、わたくしが返さないなんて出来ない。エドワルド様が何を嫌うのかも分からないのに、聞いても大丈夫だろうか?疎ましいと思われないだろうか?)

 聞けば、絶対答えを返して来るだろうが、リラは今一理解しわかってない。自分がどれ程重い愛情を傾けられているのかを。

 リラの中で不安が心を占めていく。その不安を振り払いたくて、エドワルドに回した腕に力を込めると、エドワルドが応えるように、少しだけ力を強く抱き締め直してくれる。

(やっぱりこの人が良い……)

 リラは、喩えエドワルドの気持ちが一過性の物だとしても、エドワルドに向かう気持ちが止められそうにないと思ってしまう。

 母にしろ兄にしろ、エドワルドの愛は重いと言うが、リラにはピンとこない。

(きっとわたくしの方が、重い愛になりそうです……。それでもエドワルド様はわたくしで良いと言って下さるかしら?)

 エドワルドが知ろう物なら確実に押し倒し、リラを貪り尽くすだろう事を平気で悩んでいるリラだが、この場で口にしなかった事は、賢く正しい選択だっただろう。

(わたくし、どうすれば良いのか未だによく分かりませんが、他の女性に取られぬよう、もっともっとエドワルド様に想って貰えるよう、頑張りますね?だからずっと、わたくしの傍らに居て下さいね?)

 端から見たら、もう既に危ない領域だからそれ以上刺激するのは止めなさい!と、誰もが思う事を決意するリラだった。
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