氷結の毒華は王弟公爵に囲われる

カザハナ

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本編

34 (エドワルド視点)

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 エドワルドは、リラにキスをしたまま、理性と欲望の狭間で苦悩する。

 このままジーンの忠告を無視して馬車に押し込み、お持ち帰りしてリラを貪り尽くすか、キスまでに留め、後日クルルフォーン邸にてリラを襲い、その素肌を貪り堪能するか。

 問題は、事が終わった後で、今日このまま連れ帰った場合、身体に影響の少ない避妊薬を飲んで貰えば子供が出来る確率はかなり低くはなるが、ジーンがリラを引き取りに来た後、式までリラと会えなくなる確率が高いと言う事。

(彼女との情事を知り尽くした上で、彼女と長期間、会う事も出来ずに離れた儘で、狂う事無く私は真面まともで居られるのだろうか?)

 勿論、エドワルドはリラとの子供ならいくらでも欲しいと思っているが、リラへの悪評を増やしたいとは思わない。

 そもそも、縁談を申し込みに行ったその日に、既成事実の噂が万一流れよう物ならば、リラは身持ちの悪い娘、縁談を確実に成立させる為に身体の関係を迫ったと、謂れの無い噂まで流され兼ねない。

 いくらエドワルドからの縁談申し込みとは言え、世間では、リラが王族や公爵狙いだと思われているのだ。エドワルド的には世間体等どうでもいいが、その事により、リラが傷付くとなれば大問題だ。

(キスだけで、これ程気持ち良いのなら、この先を知れば、きっと直ぐに欲しくなる。今ですら、この唇を離したくないのに、長期間なんて絶対に我慢出来る筈が無い!)

 結婚許可証なら、兄が国王なので一週間以内に発行する事は可能だが、許可証は、あくまで許可証。婚姻とは認められないし、式の際に教会で書く結婚成約証が必要だし、盛大な式となると、ドレス製作に通常半年は掛かる上、場所も食材も人員も確保しなければならない。

 王位が無いとは言え、元は王子。お金は有り余る程で、経済力もすこぶる高いのに、質素な教会で質素に式を挙げる等、リラへの想いが皆無だと思われ、世間体の為に結婚した、愛人のような物だと誤解され兼ねない。

 エドワルドはリラと結婚出来るなら、今直ぐにでも結婚したいし、場所も質も問題にしないが、貴族の一員として、それで通るかと言えばそうでは無い。

(彼女を正式な妻と認識されなければ、他の男共が彼女を愛人扱いした上で、彼女に手を出そうとするだろう。何せ貴女は高嶺の華。氷結の毒華と呼ばれようが、男共にとっては至高の存在。それが、愛人としてなら手に入ると少しでも希望を持てば、手を伸ばそうとするだろう。私がそれを許す筈もないと言うのにだ)

 名の知れない場所で、誰も呼ばずに早々に式を挙げる事は可能だが、貴族ではお披露目が何より大事とされている。

 お持ち帰りをしても、バレずに済む事もあるが、既にエドワルドがエヴァンス家に縁談の申し込みをした話が出回っているだろう。リラ達の母であるリリーが今日の茶会で何も言ってなかったとしても、あに王妃あねに大々的に触れ回るよう、頼んでいたのだ。

 きっと誰もが真相を知ろうと、朝から奔走しているに違いない。そんな奴等にリラを奪われる訳にはいかない。エドワルドは魑魅魍魎ちみもうりょうの貴族達からリラを守る為に、何とか理性を保たせた。



*****

 ※内密にするとジーンが何かにつけて断る可能性があったので、兄に根回しし、他人の目が多い場所で縁談話を持ち込ませたエドワルドだけど、リラの予想以上の可愛さに理性崩壊の危機に陥りました。実は自分で自分の首を絞めてたエドワルド。内密にしてたら、持ち帰りが出来たかもです(笑)。
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