70 / 805
本編
18
しおりを挟む
「ただ、わたくしは、前王妃……貴方のお母様であるハンナ様にとても嫌われているし、わたくしも嫌いなの」
にこにこと笑いながら、リラ達の母親、リリーは言う。
「お母様?」
「だってあの方、わたくしを敵視するのは良いけれど、する事が稚拙過ぎてつまらないし、周りの言葉に振り回された挙げ句、わたくしと貴方のお父様、当時の王太子でもあるマーウィン様との有りもしないデマを鵜呑みにして、鬱陶しいったら無かったわ。誰もが未来の王妃を夢見てる、なんて思い込みは、迷惑でしかなかったもの」
良い笑顔で宣う侯爵夫人。
「わたくしは最初から、幼馴染みの旦那様一筋だと言うのに、婚約者候補の一人に挙げられ、怒りしか無いのに、その上執拗で幼稚な嫌がらせ。まぁ、それを理由に引き籠った振りをして、旦那様の所に押し掛け、嫁に貰って下さらなければ修道院に駆け込んで、一生をそこで過ごすわよと脅し、わたくしの本気を知った旦那様が貰って下さったの。だからわたくしは幸せですけれど、まさかハンナ様の息子がリラを望むなんてねぇ」
しみじみとエドワルドを見ながら言うリリーに敵意は無い。
「ハンナ様は猛反対なさると思うけれど、本当に良いのね?恨まれるかも知れなくてよ?」
母、ハンナとの確執が有った事を知らずにいたエドワルドだが、物心付いた頃には既に構いもしなかったハンナの気を引こうとした事すら無く、エドワルドにとっての母は、血の繋がった赤の他人と言う認識でしかなかった。
「私は母に疎まれているので、問題無いかと。元々母にとって私は息子では無い者ですから」
「噂には聴いていたけれど、実の息子を蔑ろにするなんて、相変わらず馬鹿な方。いいわ、貴方は義理の息子になるんだもの、わたくしを実の母とでも思いなさいな。あの方の激怒する顔が思い浮かぶわ、愉快な事」
心底面白がっているリリーの姿は、極親しい者が見れば、必ずジーンを彷彿とさせる。『ああ、やっぱり親子だな』と。
ジーンは明らかにこの母の二面性を継いでいるが、二人して巧みに使い分けている為、公の顔しか知らない者が殆どだ。
そして、喩え気付いた者がいたとしても、それを他者に話した所で誰も信じたりはしないだろう。
それ程までに巧妙に隠している為、こうして本性を自ら晒す事は非常に珍しく、敵認定されたか身内認定されたかのどちらかしかないと言う事だ。
「ハンナ様が何か言ってくるような事があれば、このわたくしに言いなさい。わたくしの知るあの方の弱味をいくらでも教えて差し上げますわ」
リリーからすれば、ハンナを黙らせる事ぐらい容易であり、大した手間も掛からない。今までは相手にする気も起きなかったが、リラや未来の息子を守る為なら、自ら動いてやろうと思ったのだ。
にこにこと笑いながら、リラ達の母親、リリーは言う。
「お母様?」
「だってあの方、わたくしを敵視するのは良いけれど、する事が稚拙過ぎてつまらないし、周りの言葉に振り回された挙げ句、わたくしと貴方のお父様、当時の王太子でもあるマーウィン様との有りもしないデマを鵜呑みにして、鬱陶しいったら無かったわ。誰もが未来の王妃を夢見てる、なんて思い込みは、迷惑でしかなかったもの」
良い笑顔で宣う侯爵夫人。
「わたくしは最初から、幼馴染みの旦那様一筋だと言うのに、婚約者候補の一人に挙げられ、怒りしか無いのに、その上執拗で幼稚な嫌がらせ。まぁ、それを理由に引き籠った振りをして、旦那様の所に押し掛け、嫁に貰って下さらなければ修道院に駆け込んで、一生をそこで過ごすわよと脅し、わたくしの本気を知った旦那様が貰って下さったの。だからわたくしは幸せですけれど、まさかハンナ様の息子がリラを望むなんてねぇ」
しみじみとエドワルドを見ながら言うリリーに敵意は無い。
「ハンナ様は猛反対なさると思うけれど、本当に良いのね?恨まれるかも知れなくてよ?」
母、ハンナとの確執が有った事を知らずにいたエドワルドだが、物心付いた頃には既に構いもしなかったハンナの気を引こうとした事すら無く、エドワルドにとっての母は、血の繋がった赤の他人と言う認識でしかなかった。
「私は母に疎まれているので、問題無いかと。元々母にとって私は息子では無い者ですから」
「噂には聴いていたけれど、実の息子を蔑ろにするなんて、相変わらず馬鹿な方。いいわ、貴方は義理の息子になるんだもの、わたくしを実の母とでも思いなさいな。あの方の激怒する顔が思い浮かぶわ、愉快な事」
心底面白がっているリリーの姿は、極親しい者が見れば、必ずジーンを彷彿とさせる。『ああ、やっぱり親子だな』と。
ジーンは明らかにこの母の二面性を継いでいるが、二人して巧みに使い分けている為、公の顔しか知らない者が殆どだ。
そして、喩え気付いた者がいたとしても、それを他者に話した所で誰も信じたりはしないだろう。
それ程までに巧妙に隠している為、こうして本性を自ら晒す事は非常に珍しく、敵認定されたか身内認定されたかのどちらかしかないと言う事だ。
「ハンナ様が何か言ってくるような事があれば、このわたくしに言いなさい。わたくしの知るあの方の弱味をいくらでも教えて差し上げますわ」
リリーからすれば、ハンナを黙らせる事ぐらい容易であり、大した手間も掛からない。今までは相手にする気も起きなかったが、リラや未来の息子を守る為なら、自ら動いてやろうと思ったのだ。
116
お気に入りに追加
9,278
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

番を辞めますさようなら
京佳
恋愛
番である婚約者に冷遇され続けた私は彼の裏切りを目撃した。心が壊れた私は彼の番で居続ける事を放棄した。私ではなく別の人と幸せになって下さい。さようなら…
愛されなかった番
すれ違いエンド
ざまぁ
ゆるゆる設定
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる