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本編

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「こっ、国王……陛下にも?!」


 リラの驚きに、エドワルドは首を傾げる。


「あれ、聞いてないですか?この縁談は国王からの打診で、王命に近い物ですよ。私が兄に、リラ=エヴァンス侯爵令嬢としか結婚は致しませんと、きっぱり言い切りましたし、認めて頂けないのなら、拐ってでも駆け落ちしますし、国も捨てる覚悟ですと言った所、快くお認め下さいましたから」


 その言葉にリラは驚く以外の反応は出来ない。

 そもそもこの国の王は、執務の大半をエドワルドに任せているとの噂だ。

 勿論、頭が悪いと言う訳ではないし、真面目で明るく家族想いの強い人柄だ。弟であるエドワルドをとても可愛がり、王位継承権を放棄したエドワルドが遠くに行かないよう、王子の後見人だけでなく、国王が自らの補佐にしたと言われている。

 ジーン曰く、王位に固執するような性格だったのなら、確実に内乱が起きただろうし、エドワルドが王に就いた可能性の方が高かっただろうとの事。

 能力的にはエドワルドの方が高いが、感情の起伏や、物や人に対する執着と言った人間性が欠けている為、幼少の頃は多くの大人に人形みたいで気味が悪いと囁かれていた程だ。

 そんな弟が、国を捨ててまで欲しいと言う相手が、悪評高い氷結の毒華だと知った時の兄王の心境は、複雑だった事だろう。


「リラはエヴァンス家の宝です、間違ってもリラを連れての国外逃亡はしないで下さい。エヴァンス家の総力を持って取り戻しますからね」

「国内なら問題が無いのかな?」

「そもそも、リラを連れて逃げる意味が無いでしょう。国王陛下から打診されて、連れて逃げたいのは私達の方ですよ」

「優秀なエヴァンス侯爵家に逃げられるのは困るな。けれど、私がリラ嬢を諦めるなんて選択肢は有り得ない。リラ嬢は私が責任を持って、一生大事にすると誓おう。私の愛する華として」


(わっ、わたくしの話ですわよね?!どっ、同名の、別の令嬢の話であって欲しいですぅ~!)

 リラの兄であるジーンが言い合いをしているのだ。他の令嬢である訳が無い。

 ただ、リラとしては、非現実的過ぎて、現実逃避をしたくなったようだ。

(こんな非現実的要素は要りません~!)


「リラ、現実逃避したくなるのは解るけど……隙を見せたらこれに・・・食われるから気を付けなさい」


 ジーンは冷ややかな視線でエドワルドを見るがエドワルドはリラに甘く微笑んでるだけだ。


「わっ、わたくし、美味しくなんてありません~!」


 顔を真っ赤に染め上げ涙目で訴えるリラは、異性が見れば思わず手を出したくなるような表情だと言うのに、実に説得力が無い台詞を口にした。
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