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本編

12 (男同士の話し合い 2)

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「ーーそんな訳で、私はリラの心を傷付けた男の股間を蹴り上げたし、両親共々貴族社会に戻れないようにしましたが、どうせなら蹴るのではなく切り落とせば良かったと、後悔した事がありますね」


 ジーンは過去の制裁をも話して聞かせる。

 この程度で気付けづくなら、所詮、それまでの男だ。そんな男にリラはやれない。ただ、エドワルドはそんな事で引き下がるような男では無い事を、ジーンは本能的に気付いてる。良くも悪くも、多少は違えど似た者同士と言う類いだ。

(あの男の両親が勝手にリラを婚約者候補に考えていたなんて知っていたら、リラを傷付けたと知った時点で切り落としてやったものを……)

 男が聞けば震え上がる事間違いないが、ジーンは平然と物騒な事を思っているし、逆の立場ならエドワルドも同意した事だろう。


「だから、貴方がリラを傷付けるなら、私は容赦しませんよ。リラは私の大切な妹です。もし貴方が他の女にうつつを抜かしたら、その女共々地獄へと送ってみせますから覚悟していて下さい」


 そうは言っても、エドワルドが異性に対する無関心っぷりは、難攻不落と呼ばれる渾名あだなが示す通りだ。

 リラに興味を持った事自体、奇跡に近いと言えるだろう。


「私に興味を抱かせたのはリラ嬢のみなので、その心配は要りませんが、ジーン殿が安心するなら約束しましょう。その代わり、愛故の暴走は大目に見て下さい。私がどれ程リラ嬢に心を惹かれているのか、態度や行動で示さなければ、リラ嬢に信じて頂けそうに無いですからね」


(彼女の全てを手に入れる。あの笑顔が私の物になるのだ。他の男に渡す気は更々無い。彼女の全ては私の物だ)

 エドワルドは二年程前の、リラを見付けた時の事を思い浮かべる。

 最初は、噂通りの令嬢だなと、何の感情も浮かばずに、ただ見ていただけだった。そのリラが、周りを伺い人がいない事を確認し、ふわりと華が綻ぶように浮かべた微笑みに、心臓を鷲掴みにされた気分だった。

 初めて見たリラの微笑が、目に焼き付き頭から離れない。彼女は他に、どんな顔をするのだろう。怒った顔は?驚いた顔は?泣き顔も可愛いだろうが、快感に悶える顔が見てみたい。あの冷たい色合いアイスブルーの瞳を蕩け潤ませ欲情させたい。そして、その瞳に私の姿を捉えさせたい。

 彼女を見掛ける度に、想いが募る。彼女を思い出すだけで恋い焦がれ、欲が湧く。

 だからこそ、この二年の月日はエドワルドにとって、焦燥と苛立ちの連続だった。

 そんなエドワルドが本人を前に、面倒だからと諦めるなんて有り得ない事なのだ。
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