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本編

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「名ばかりの妻……ね。ならば、既成事実を作りましょうか。私は一向に構いませんよ、順序が逆になるだけですから。勿論きちんと責任は取りますし、子供が出来る前に結婚すれば良い。他に女性がいると疑われないよう出来る限り毎晩抱き潰して、腕の中で朝まで過ごせば、そんな疑いも晴れますよね?仕事でどうしても王宮に泊まらなければならない時は、ジーン殿にお付き合い頂き、私を見張ってもらいましょう」


 にっこりと、色気まで醸し出しながら、笑顔で言い切るエドワルド。リラはその内容に自らの耳を疑った。

(きっ……既成事実?子供?!だだだ、抱き潰すって何!?!毎晩なんて、心臓がいくつあっても足りませんわ!そもそも、何故そんな話になったのですか?!!)

 目を大きく見開き、これでもかと謂わんばかりに全身を真っ赤に染めて、口をパクパクと動かすリラ。

 その姿は氷結の毒華と呼ばれるには似つかわしくない程の愛らしさだ。そんな姿を晒しているとは、リラは少しも気付いていない。


「……リラ、顔」

「ジーン兄様ぁ~~~」


 半泣きでパニくり、家族にしか見せない顔をリラはジーンに向けているが、その顔も、きっちりエドワルドに見られている。


「……驚かれないのですね」

「多少は驚いていますよ。家族が相手なら、そんな顔もするのかと。ジーン殿が羨ましく思います。私にもそういった表情を沢山見せて頂きたいですね」

「みっ……見ないで下さいっ!わたくし、充分に自覚がありますわ!平凡以下の顔立ちな上に、他人ひとに見せられない醜い表情をしている事を!ですから、からかわないで下さい!こんなわたくしを欲しがる人なんて余程の奇特か物好きぐらいです~!どうせ嫌うなら、罵るぐらいなら最初から近付かないで下さいませ!」


 リラがからかわれたと思い込み、怒りのままに言葉を放つ。


「……からかっているつもりはありません。私にとって貴女の表情は魅力的でしかないし、いつでも見たい表情ものです。偽りの無表情よりも、私は貴女のその表情が欲しい。言いたい事は山程ありますが、私は貴女を愛しています。名ばかりの妻で無く、正真正銘私の妻になって下さい。嫌とは言わせませんよ?私は一生、貴女を逃がす気はないですから」

「!?!」


 甘やかに告白されて、リラは言葉を紡ぐ事すら出来なくなる。

 そんなリラを愛でながら、エドワルドはジーンに声を掛ける。


「ジーン殿、二人切りで少しお話を致しましょうか」
[訳=面を貸せ、彼女の自己評価の低さを説明しろ]

「そうですね。一度二人で話し合いをしましょうか」
[訳=そうだな、理由ぐらいは教えてやる。ちょっと来い]


 ジーンはリラに、ここに居るよう言い置いて、エドワルドを連れて執務室へと向かった。
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