氷結の毒華は王弟公爵に囲われる

カザハナ

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本編

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 翌日、エヴァンス邸に客が訪れる。エドワルド公爵がリラに会いに来たのだ。

(どどど……どうしましょう?!わたくし、心の準備がぁ~~~!!!)


「やあリラ嬢、会いたかったよ。一昨日この前は、大いなる誤解を与えてしまったようなので、その誤解を正そうと思ってね。私は賭け事や罰ゲームと言った遊びでダンスを誘う事も無ければ、遊びで声を掛けたりしないよ。そんな事をする暇があるなら、その時間を仕事や大切な人に使う方が、余程有意義だからね」


 リラににっこりと微笑むエドワルドだが、その瞳は鋭くリラを見詰めている。


「ごっ、ごきげんよう、公爵様。忙しい中、態々わざわざお越し頂き光栄ですわ」


 リラは内心パニックだ。子供の頃の思い出が脳裏をよぎり、いつ罵倒されるかと、身体に震えが走る。


「リラ嬢?どうかしましたか?」

「……何でもありませんわ、どうぞこちらへ」


 リラは何とかそう答え、エドワルドをサロンに連れていく。そこにはリラの兄、ジーンがいた。


「ようこそエドワルド殿。ご存知の通り父は仕事で家にりませんので、私が代わりに同席します。まさか家でエドワルド殿と話をする事になるとは思いませんでしたよ」
[訳=父親不在時を知っていながら良い度胸だな。リラと直ぐに二人切りになれると思うなよ?職場以外の仕事を増やしたからには、きっちり話をしようじゃないか]


 ジーンは笑顔で話し掛けていたが、その内容は貴族特有の嫌味が多分に含まれていた。


「エヴァンス侯爵の許しも貰いたかったのですが、どうしても我慢が出来ず申し訳なく思っています。ですが、私もエヴァンス家に、これ程の宝が隠されていたとは思っていませんでしたので、気付けて良かったと心から思っています」
[訳=侯爵の不在を狙っていた訳ではないけれど、チャンスを逃す気は無いのでね。悪評に隠されてはいたが、宝だよな?違うとは言わせないぞ。危うく見過ごす所だったじゃないか]


 エドワルドの応酬に、ジーンは正しく読み取り溜め息を吐く。


「……いつからですか?」


 嫌味を言い合っていた所で話は進まない。元々ジーンもエドワルドも効率性を好む為、双方が仕事で関わる時は貴族特有の言い回しを省く。

 だからこそ、ジーンは率直に聞く。誤魔化しや偽りは無しだとその眼差しに込め、エドワルドの出方を伺いながら。


「……見惚れたのは二年程前です。それから機会を伺っていたのですが、まさかリラ嬢と会って話すまでに、ここまで時間が掛かるとは思っていませんでしたよ」


 ジーンを見返し、エドワルドは嘘偽り無く言い切った後でリラに微笑みを向けるが、リラは戸惑うばかりだ。

 何故ならリラは、エドワルドと間近で接したのは一昨日が初めてだったからだ。
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