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20代の頃
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朝8時に起きて旅館へ行った。
新しい職場、緊張する。
挨拶して、みんなに紹介してもらった。
少し古いけど、和風の大きい旅館。
作務衣みたいな制服着て、先輩の従業員について各部屋を回った。
ちょうどチェックアウトの時間でフロントには人がたくさんいた。
先輩の従業員はイシイさんっていう男の人。多分60代くらい。
掃除のパートさんはおばさんが多かった。
若い人から年配の人まで、色んな年齢の人が働いてる。
イシイさんに
「それじゃ、まず、みんなと一緒に布団上げてくれる?」
って言われた。
初めてだから必死だった。
しばらく布団上げしてたら、掃除や整備の担当してるハセガワさんって男の人が見に来た。
ハセガワさんは30代くらいで若そう。
そうしたら、そのハセガワさんに
「あっ、君、その布団、そっちじゃないよ。下に入れて」
って言われた。
「さっき教えたでしょ、その模様のは下だって」
イシイさんに言われた。
失敗した。
私は慌てて焦る自分を隠すように
「あ、そうだった、ごめんなさーい」
って笑った。
みんな笑うと思った。
いつもなら
「しょうがないな~」
「ドジだね~」
ってみんな笑ってくれた。
でも
誰も笑ってなかった。
みんな呆れた顔で私から目を逸らした。
ああ、そうだ。
「天然の子好きだよ」「かわいいね」
もうそんなこと言われる年齢じゃないんだ。
その時
この先、今よりもっと厳しい人生になるだろうって直感した。
新しい職場、緊張する。
挨拶して、みんなに紹介してもらった。
少し古いけど、和風の大きい旅館。
作務衣みたいな制服着て、先輩の従業員について各部屋を回った。
ちょうどチェックアウトの時間でフロントには人がたくさんいた。
先輩の従業員はイシイさんっていう男の人。多分60代くらい。
掃除のパートさんはおばさんが多かった。
若い人から年配の人まで、色んな年齢の人が働いてる。
イシイさんに
「それじゃ、まず、みんなと一緒に布団上げてくれる?」
って言われた。
初めてだから必死だった。
しばらく布団上げしてたら、掃除や整備の担当してるハセガワさんって男の人が見に来た。
ハセガワさんは30代くらいで若そう。
そうしたら、そのハセガワさんに
「あっ、君、その布団、そっちじゃないよ。下に入れて」
って言われた。
「さっき教えたでしょ、その模様のは下だって」
イシイさんに言われた。
失敗した。
私は慌てて焦る自分を隠すように
「あ、そうだった、ごめんなさーい」
って笑った。
みんな笑うと思った。
いつもなら
「しょうがないな~」
「ドジだね~」
ってみんな笑ってくれた。
でも
誰も笑ってなかった。
みんな呆れた顔で私から目を逸らした。
ああ、そうだ。
「天然の子好きだよ」「かわいいね」
もうそんなこと言われる年齢じゃないんだ。
その時
この先、今よりもっと厳しい人生になるだろうって直感した。
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