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20代の頃
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勇気を出してソウタくんに電話してみた。
胸がドキドキした。
カオリちゃんみたいに知らないふりされたらどうしよう。
呼び出し音の後
「もしもし」
って声。
ソウタくん?そうだよね。
「あの・・ソウタくん?私・・覚えてる?」
私が名前を言ったら
「もちろん、覚えてるよ!」
ってすぐに言ってくれた。
ああ、やっぱりソウタくんだ。
嬉しい。
ソウタくんは私にも誰にでもそうやって分け隔てなく接してくれたよね。
「久しぶりだね、どうしたの?」
ってソウタくんは言った。
「あのね、卒アル見てて、懐かしいなって思って。電話番号載ってたからかけてみたんだ」
「そうなんだ。ほんと久しぶりだね。今、何してるの?」
「今、OLしてるんだ」
私は嘘をついた。
OLどころか仕事辞めたばかりなのに。
「ソウタくんは何してるの?」
「俺は県庁で働いてるよ。公務員になったんだよ」
「そうなんだ、すごーい。ソウタくん、昔から頭良かったもんね」
「そんなことないよ。公務員なんか誰でもなれるよ」
そう言ってソウタくんは笑った。
すごく懐かしかった。
ゆっくりとした優しい喋り方。
昔と変わってなかった。
ソウタくんは勉強で分からない所があると、いつも教えてくれた。面倒臭そうな顔もせずに、優しく説明してくれた。ソウタくんの説明はとても分かりやすくて、ソウタくんの頭の良さを物語ってるみたいだった。
「ヒヨリなんかと会ってる?」
ってソウタくんにきかれた。
「ほとんど会ってない。ヒヨリちゃんね、もう結婚して子供いるから」
「え、そうなんだ。知らなかった」
「ソウタくんは中学の時の同級生と連絡取ってる?」
「ほとんど取ってないなあ。マツモトくらいかな」
中学の同級生と話すと、必ずキョウヘイの話になった。それくらいキョウヘイは目立つ存在だった。
でもソウタくんはキョウヘイの話をしなかった。
中学の頃からそうだった。
みんながキョウヘイに群がり媚びていたけど、ソウタくんは絶対そんな事しなかった。
ソウタくんはキョウヘイだけじゃなくて、みんなに平等に接してたから。
「ソウタくんは、結婚は?」
気になっていた。
きくのやめようかなって思ったけど、きいてみた。
「うん・・これからする予定」
「彼女いるの?」
「うん、多分来年結婚する」
「そっか、婚約中なんだね」
「まあ、うん、そうだね」
そう言ってソウタくんは照れ臭そうに笑った。
そうだよね、ソウタくんはいい人だもん。
ちゃんと相手いるよね。
きっと彼女もいい人なんだろうな。
しばらく喋った後
「また電話してよ。たまにはみんなで会おうよ」
ってソウタくんは言ってくれた。
うん、そうだね
って言ったけど
もうこれで最後にするよ。
私、ソウタくんに会っても、何も自慢できるものもない。ただ惨めな自分を見せるだけ。
でも多分、ソウタくんは私を責めたりせずに、また優しく接してくれるんだろうね。
ソウタくんの幸せを壊したくない。
ソウタくんには幸せになって欲しい。
だからもう連絡しないよ。
「ソウタくん、あのね」
「うん、なに?」
「勉強教えてくれてありがとう。すごく嬉しかったよ」
「そうだっけ。忘れちゃったよ」
ソウタくんは変わってなかった。
前みたいに普通に私と話してくれた。
やっぱりソウタくんのこと、とても好きだなって思った。
バイバイ、ソウタくん。
本当にありがとう。
ソウタくんが幸せになりますように。
胸がドキドキした。
カオリちゃんみたいに知らないふりされたらどうしよう。
呼び出し音の後
「もしもし」
って声。
ソウタくん?そうだよね。
「あの・・ソウタくん?私・・覚えてる?」
私が名前を言ったら
「もちろん、覚えてるよ!」
ってすぐに言ってくれた。
ああ、やっぱりソウタくんだ。
嬉しい。
ソウタくんは私にも誰にでもそうやって分け隔てなく接してくれたよね。
「久しぶりだね、どうしたの?」
ってソウタくんは言った。
「あのね、卒アル見てて、懐かしいなって思って。電話番号載ってたからかけてみたんだ」
「そうなんだ。ほんと久しぶりだね。今、何してるの?」
「今、OLしてるんだ」
私は嘘をついた。
OLどころか仕事辞めたばかりなのに。
「ソウタくんは何してるの?」
「俺は県庁で働いてるよ。公務員になったんだよ」
「そうなんだ、すごーい。ソウタくん、昔から頭良かったもんね」
「そんなことないよ。公務員なんか誰でもなれるよ」
そう言ってソウタくんは笑った。
すごく懐かしかった。
ゆっくりとした優しい喋り方。
昔と変わってなかった。
ソウタくんは勉強で分からない所があると、いつも教えてくれた。面倒臭そうな顔もせずに、優しく説明してくれた。ソウタくんの説明はとても分かりやすくて、ソウタくんの頭の良さを物語ってるみたいだった。
「ヒヨリなんかと会ってる?」
ってソウタくんにきかれた。
「ほとんど会ってない。ヒヨリちゃんね、もう結婚して子供いるから」
「え、そうなんだ。知らなかった」
「ソウタくんは中学の時の同級生と連絡取ってる?」
「ほとんど取ってないなあ。マツモトくらいかな」
中学の同級生と話すと、必ずキョウヘイの話になった。それくらいキョウヘイは目立つ存在だった。
でもソウタくんはキョウヘイの話をしなかった。
中学の頃からそうだった。
みんながキョウヘイに群がり媚びていたけど、ソウタくんは絶対そんな事しなかった。
ソウタくんはキョウヘイだけじゃなくて、みんなに平等に接してたから。
「ソウタくんは、結婚は?」
気になっていた。
きくのやめようかなって思ったけど、きいてみた。
「うん・・これからする予定」
「彼女いるの?」
「うん、多分来年結婚する」
「そっか、婚約中なんだね」
「まあ、うん、そうだね」
そう言ってソウタくんは照れ臭そうに笑った。
そうだよね、ソウタくんはいい人だもん。
ちゃんと相手いるよね。
きっと彼女もいい人なんだろうな。
しばらく喋った後
「また電話してよ。たまにはみんなで会おうよ」
ってソウタくんは言ってくれた。
うん、そうだね
って言ったけど
もうこれで最後にするよ。
私、ソウタくんに会っても、何も自慢できるものもない。ただ惨めな自分を見せるだけ。
でも多分、ソウタくんは私を責めたりせずに、また優しく接してくれるんだろうね。
ソウタくんの幸せを壊したくない。
ソウタくんには幸せになって欲しい。
だからもう連絡しないよ。
「ソウタくん、あのね」
「うん、なに?」
「勉強教えてくれてありがとう。すごく嬉しかったよ」
「そうだっけ。忘れちゃったよ」
ソウタくんは変わってなかった。
前みたいに普通に私と話してくれた。
やっぱりソウタくんのこと、とても好きだなって思った。
バイバイ、ソウタくん。
本当にありがとう。
ソウタくんが幸せになりますように。
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