98 / 262
20代の頃
98
しおりを挟む
パン工場ではみんなとあまり喋ってない。でもそれが気楽で良かったんだけど。
今日、たまに顔を合わせるおばちゃんに、ここを辞めるかも、って話した。そしたら「それじゃ辞める前に、カノウさんに謝った方がいいよ」って言われた。なんで?って言ったら、「カノウさん、あなたがよく数間違えるから、あなたが帰った後、もう一回数を数えてやり直したりしてるよ。それでいつも帰るの遅くなるみたいだよ。謝っておいた方がいいよ」って。
カノウさんって男の人は、多分30才くらいで、すごく大人しい。みんなと喋ってるところ見たことない。だから、私もカノウさんとあまり喋ったことはなかった。
おばちゃんにカノウさんの事聞いた時、ヤバいなって思ったのと同時に、なんで黙ってたんだろうって思った。
私は昼休みにカノウさんに謝りに行った。
カノウさんは一人で外のベンチでパンを食べてた。
「あの…」って話しかけたら、カノウさんはびっくりして私を見た。
私が箱詰めの数を間違えてたことを謝ったら、カノウさんは私が全部言い終わらないうちに
「いいよ、いいよ、失敗は誰にでもあるもんね!気にしないで」
って顔を真っ赤にしながら早口で喋って、引きつった顔で笑った。
ああ、気を遣わせちゃった。
カノウさんは大人しくておどおどしてる。
きっと私にもはっきり言えなかったんだと思う。
私は何度もカノウさんに謝った。
すごい罪悪感があった。
リーダーが私を操作係にしたくない、って言ってたのってこれが原因だったのかもしれない。
私、なんでずっと気付かなかったんだろう。
終業時間になったら、早く家に帰ってビデオ見たい、ゲームしたい、ってそれしか考えてなかった。
私って本当にバカだな。
カノウさんが真っ赤になって、いいよいいよ、って手を振った仕草を思い出して、すごく落ち込んだ。
カノウさん、ごめんなさい…。
今日、たまに顔を合わせるおばちゃんに、ここを辞めるかも、って話した。そしたら「それじゃ辞める前に、カノウさんに謝った方がいいよ」って言われた。なんで?って言ったら、「カノウさん、あなたがよく数間違えるから、あなたが帰った後、もう一回数を数えてやり直したりしてるよ。それでいつも帰るの遅くなるみたいだよ。謝っておいた方がいいよ」って。
カノウさんって男の人は、多分30才くらいで、すごく大人しい。みんなと喋ってるところ見たことない。だから、私もカノウさんとあまり喋ったことはなかった。
おばちゃんにカノウさんの事聞いた時、ヤバいなって思ったのと同時に、なんで黙ってたんだろうって思った。
私は昼休みにカノウさんに謝りに行った。
カノウさんは一人で外のベンチでパンを食べてた。
「あの…」って話しかけたら、カノウさんはびっくりして私を見た。
私が箱詰めの数を間違えてたことを謝ったら、カノウさんは私が全部言い終わらないうちに
「いいよ、いいよ、失敗は誰にでもあるもんね!気にしないで」
って顔を真っ赤にしながら早口で喋って、引きつった顔で笑った。
ああ、気を遣わせちゃった。
カノウさんは大人しくておどおどしてる。
きっと私にもはっきり言えなかったんだと思う。
私は何度もカノウさんに謝った。
すごい罪悪感があった。
リーダーが私を操作係にしたくない、って言ってたのってこれが原因だったのかもしれない。
私、なんでずっと気付かなかったんだろう。
終業時間になったら、早く家に帰ってビデオ見たい、ゲームしたい、ってそれしか考えてなかった。
私って本当にバカだな。
カノウさんが真っ赤になって、いいよいいよ、って手を振った仕草を思い出して、すごく落ち込んだ。
カノウさん、ごめんなさい…。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
[完結]ナナシズswitch
深山ナオ
ライト文芸
「奈々、作品紹介するわよ」
「作品紹介⁉ ナナ、そんなのしたことないんだ!」
「大丈夫。メインは私がやるから、奈々は適当に相槌を打ってればいいわ」
「それならできそうなんだ。うん、やってみる」
♢
「この作品は、女子校に通う猫宮奈々(ねこみやなな)と、私、織戸静流(おりとしずる)の人格が入れ替わってしまった時のお話です」
「どうして入れ替わっちゃったんだ?」
「私が階段で立ち眩みして、奈々がそれを支えようとしてくれて。でも支えきれなくて、一緒に落ちちゃったのね。その拍子に入れ替わっちゃったの」
「静流が重たかったんだ」
「重っ……体格差があるんだから仕方ないじゃない」
「おまっ、ナナのことチビって言いたいのか⁉」
「言ってないわよ! だいたい、私は奈々くらいちっちゃくて可愛いのがいいと思ってたんだから」
「ナナだって静流みたいにスタイル良くなりたかったんだ……って、話が逸れてるんだ」
「あら、いけない。軌道修正するわ。こほんっ、入れ替わって元に戻ろうとして、もう一度、一緒に階段から落ちるのよね」
「でも元に戻らなかったんだ。無駄に痛い思いをしただけだったぞ……」
「それで、元に戻れなかった私たちが戻るために悪戦苦闘するっていう……そんな作品ね」
「別に悪戦苦闘はしてないんだ。誇張なんだ」
「……そうね。思い返してみればそんなに大変じゃなかったわね。でも、元に戻るまでに少しずつ心が変化する。貴重な時間だったわ」
「うん。つまりこの作品は、ナナたちのちょっと不思議な青春の一ページって感じなんだぞ」
「そろそろ字数が無くなってきたわね。ナナが記録した私たちの大切な思い出、読んでくれた方にも追体験してもらえると嬉しいわ」
「わー! ナナが書いたって言うのは内緒なんだぞっ」
「どうせ文体でバレるんだからいいじゃない」
「うぅ……静流の鬼ぃ……」
(ノベルアップ+にも掲載中です。https://novelup.plus/story/718720018)
あの頃のぼくら〜ある日系アメリカ人の物語〜
white love it
ライト文芸
1962年。東京オリンピックまであと2年となった、ある日の夏。日系アメリカ人のジャック・ニシカワは、アメリカはユタ州の自身が代表を務める弁護士事務所にて、一本の電話を受け取る。かつて同じ日系アメリカ人収容所に入れられていたクレア・ヤマモトが、重病で病院に運び込まれたというのだ。ジャックは、かつて収容所にいたころのことを思い出しながら、飛行機に乗ったー
登場人物
ジャック・ニシカワ 日系アメリカ人の弁護士
クレア・ヤマモト かつてジャック・ニシカワと同じ収容所に居た日系の美女
社会人漂流記「転生かと思ったら…マジの現実でした」
ちゃぼ茶
ファンタジー
社会人のナガノは乗っていた飛行機が墜落。目を覚ましたのはとある島…?最近よく聞く転生かと思ったがどうやら現実でした。この無人島かも有人島かもわからない場所で生き抜くナガノが記した日記と共に…
光速のジャングラー ~eスポ部作ったからLoLやろうよ~
マサタロウ
ライト文芸
『リーグ・オブ・レジェンド』総プレイヤー数は全世界で1億人以上。北米、ヨーロッパ、中国、韓国などを中心に世界中で最も人気があるオンラインゲームである。圧倒的なプライヤーの多さと基本無料であり、課金による優位さを排除した公平なシステムのため、eスポーツを代表するものとなった。世界各国にプロリーグが存在しており、トッププレイヤーはプロスポーツ選手同等の人気がある。
日本においても、ここ数年注目度が高まっており、プロリーグができただけでなく、高校生の全国大会も開催されている。
この物語は、『リーグ・オブ・レジェンド』で出会った仲間が、全国大会出場目指している中、それぞれの運命と向き合い立ち向かっている姿を記したものである。
イシャータの受難
ペイザンヌ
ライト文芸
猫を愛する全ての方に捧げる猫目線からの物語です──1話が平均2500文字、5~6分で読了できるくらいの長さとなっております。
【あらすじ】人間と同じように猫にだって派閥がある。それは“野良猫”と“飼い猫”だ。【 シャム猫のイシャータ(♀)】は突然飼い主から捨てられ、何の不自由もない“飼い猫”生活から今まで蔑視していた“野良猫”の世界へと転落してしまう。ろくに自分の身さえ守れないイシャータだったが今度は捨て猫だった【 子猫の“佐藤 ”】の面倒までみることになってしまい、共に飢えや偏見、孤独を乗り越えていく。そんなある日、以前淡い恋心を抱いていた【風来坊の野良猫、 ヴァン=ブラン 】が町に帰ってきた。それを皮切りにイシャータとその仲間たちは【隣町のボス猫、ザンパノ 】との大きな縄張り争いにまで巻き込まれていくのだったが…………
3部構成、全41話。それぞれ1話1話にテーマを置いて書いております。シリアス、コメディ、せつなさ、成長、孤独、仲間、バトル、恋愛、ハードボイルド、歌、ヒーロー、陰謀、救済、推理、死、ナンセンス、転生、じれじれからもふもふ、まで、私的に出来うる限りのものを詰め込んだつもりです。個人、集団、つらい時やどうしようもない時、そんな時に生きる希望や勇気の沸く、そして読み終わった後にできうる限り元気になれる、そんな物語にしようという指針のもとに書きました。よろしくお願いいたします。(小説家になろうさん、カクヨムさんとの重複投稿です)
落ち込み少女
淡女
ライト文芸
「ここから飛び降りて」
僕はたった今、学校の屋上で、 一人の少女から命を絶つよう命じられていた。
悩き多き少女たちは
自らの悩みを具現化した悩み部屋を作ってしまう!?
僕はどこまで踏み込める?
どこまで彼女たちの痛みに関われる?
分からない、だからこそ僕は人と交わるんだ。
ハニートリップ
Maybetrue Books
ライト文芸
"物語は短命でほんのり甘い。"
"名前も場所もわからないのに感じる「あの頃」の心情風景。
全てのインターネット依存患者を更生させるための物語。"
名前のないさまざまな個性の人々が少し勇気を出して前に進む、青春ショートショートストーリーです。短いのですぐに読めますが、なんらかの余韻は少しだけ残ってしまいます。
その少しだけを大切にしてください。
(配信サービスなどのフリー朗読台本などいろいろなものにご自由にお使いください。
廃盤になった自費出版本から内容を引っ張り出しています。感想などももらえるととても嬉しいです。)
ヒコビッチ(hicobith)より
風月庵にきてください 開店ガラガラ編
矢野 零時
ライト文芸
正夫のお父さんはお母さんと別れてソバ屋をやりだした。お父さんの方についていった正夫は、学校も変わり、ソバ屋の商売のことまで悩むことになった。
あ~、正夫とお父さんは一体どうなるのだろうか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる