21 / 54
ACT.3
6.実力テスト
しおりを挟む朝っぱらから、妙に疲れてしまった。
しかもそれはきっと、これからも続くはず。
授業と授業の合間、10分休憩の時にも、周りを囲まれるのはわかりきってた。
今日はまだ3時間授業だから、休憩は2回。あたしはサクッと、トイレに避難した。
わざわざ1階下の、学年が違う所に行ったのはもちろん、騒がれるのを避けるためだった。
今日は学校終わったら、即、教室出られるように準備しとこ。
「明日のテスト、ちゃんと勉強してますか?」
3時間目の授業は、数学だった。勉強が苦手なあたしが、中でもほんっきで苦手な教科。
メガネをかけた、優しそうな先生だった。ひょろっと背が高くて、話し方も穏やかで、好感も持てる。
担任の、松藤先生だった。
そんな優しそうな先生の、いきなりの不意打ちめいた発言に、クラス中がざわっとなった。
葛城の爆弾発言でつい忘れそうになってたけど、明日から実力テストだっけ。
2日間の予定で、数学は1日目――要するに、明日だ。
おぅふ、全然勉強してない……。
や、勉強しても、点数取れる気もしないけど。
でも最近、苦手な話題になると、勉強してきまーすって言ってお母さんから逃げるもんなぁ……やっぱりいつもよりはよくないと、マズいよねぇ……
「今からプリント配るから。それをちゃんとやってれば、6割は点数取れますよ」
がんばって。
先生がにこやかに言いながら、前列にプリントを渡してる。
おぉ、やっぱり優しい! じゃあ今日は、これをがんばろう。
……と思う気持ちは本当だけど――ちらっと見たプリントの問題は、正直わかりそうにない。
まぁ、あとから、ね。
前から回ってきたプリントを、机の引き出しになおす。
――カサリ。
紙がすれる音に、なんとなく目をやる。
隣の席――葛城の方からだ。
葛城の列だってプリント配られてるし、不思議じゃない。
――と思ったけど、葛城が逆の隣の席の子から、なにやら紙を渡されてるとこだった。
ああ、あるある。授業中に回ってくるお手紙。
たたまれた紙を広げて中を読み――あたしに回してくるかな、と思ってると、視線に気づいたらしい葛城が、ハッと顔を上げる。
そっちを見てたあたしと、もちろん目が合った。
――珍しく、気まずそうな表情だった。
手の中の紙を、くしゃっと丸めてポケットにつっこむ仕草も、慌ててたように見える。
「?」
どうしたのかと思わないわけじゃないけど、あえて訊く程でもないし、まぁいっか。
問題は、葛城よりも明日のテストだし。
でも、ヤだなぁ。
あたしはひっそり、ため息を吐いた。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
小児科医、姪を引き取ることになりました。
sao miyui
キャラ文芸
おひさまこどもクリニックで働く小児科医の深沢太陽はある日事故死してしまった妹夫婦の小学1年生の娘日菜を引き取る事になった。
慣れない子育てだけど必死に向き合う太陽となかなか心を開こうとしない日菜の毎日の奮闘を描いたハートフルストーリー。
【R18】もう一度セックスに溺れて
ちゅー
恋愛
--------------------------------------
「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」
過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。
--------------------------------------
結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました
宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。
ーーそれではお幸せに。
以前書いていたお話です。
投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと…
十話完結で既に書き終えてます。
エロゲソムリエの女子高生~私がエロゲ批評宇宙だ~
新浜 星路
キャラ文芸
エロゲ大好き少女佐倉かなたの学園生活と日常。
佐倉 かなた
長女の影響でエロゲを始める。
エロゲ好き、欝げー、ナキゲーが好き。エロゲ通。年間60本を超えるエロゲーをプレイする。
口癖は三次元は惨事。エロゲスレにもいる、ドM
美少女大好き、メガネは地雷といつも口にする、緑髪もやばい、マブラヴ、天いな
橋本 紗耶香
ツンデレ。サヤボウという相性がつく、すぐ手がでてくる。
橋本 遥
ど天然。シャイ
ピュアピュア
高円寺希望
お嬢様
クール
桑畑 英梨
好奇心旺盛、快活、すっとんきょう。口癖は「それ興味あるなぁー」フランク
高校生の小説家、素っ頓狂でたまにかなたからエロゲを借りてそれをもとに作品をかいてしまう、天才
佐倉 ひより
かなたの妹。しっかりもの。彼氏ができそうになるもお姉ちゃんが心配だからできないと断る。
【完結】復讐は計画的に~不貞の子を身籠った彼女と殿下の子を身籠った私
紅位碧子 kurenaiaoko
恋愛
公爵令嬢であるミリアは、スイッチ国王太子であるウィリアムズ殿下と婚約していた。
10年に及ぶ王太子妃教育も終え、学園卒業と同時に結婚予定であったが、卒業パーティーで婚約破棄を言い渡されてしまう。
婚約者の彼の隣にいたのは、同じ公爵令嬢であるマーガレット様。
その場で、マーガレット様との婚約と、マーガレット様が懐妊したことが公表される。
それだけでも驚くミリアだったが、追い討ちをかけるように不貞の疑いまでかけられてしまいーーーー?
【作者よりみなさまへ】
*誤字脱字多数あるかと思います。
*初心者につき表現稚拙ですので温かく見守ってくださいませ
*ゆるふわ設定です
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる