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第五十四話 斜め上の解決法(なのか?)
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沈痛な面持ちで続けられても、意味がわからなかった。
オレスティアの環境を考えれば、至極当然の願い。か弱い侯爵令嬢が自力での解決など思いもよらず、誰かに救いを求める思考になって何が悪いというのか。
そんな悲愴な顔をする必要は――ない、と考えかけて、ふと気づく。
いや、そんなバカな。
思いはするも、そう考えればオレスティアがこれほど申し訳なさそうな顔をするのも頷ける気がした。
こくりと喉を鳴らして、口を開く。
「まさか――強いお前がおれってことか……?」
誰か助けてほしい、強い自分に変わりたい。
その二つを一気に叶えたのが今のこの状況ということか?
あまりにも非現実的で突拍子もない解決法。
なにバカなこと言ってんのと一蹴してくれることを期待していたルシアはしかし、ハッと息を飲む。
さすがにそれは、と否定してほしかったのに、オレスティアは軽く俯きながら、気まずそうな上目づかいで見つめてくる。
二人の反応は、オレステスの推測を受け入れているに他ならなかった。
たしかにオレステスとオレスティアは、髪や瞳の色、名前は同じだった。それでなんとなく親近感を覚えたのも事実ではある。
だが性別も年齢も環境も性格も、なにもかもが違っていた。
なのに「もう一人の自分」だなどと認識するのは、あまりにもガバガバ判定ではないか。
なにより、オレスティアはただ漠然と救いを求め、願っただけだ。依然として、なにがどう作用してこうなったのかはわからない。
可哀想なオレスティアを哀れに思ったどこぞの神が、願いを叶えてやろうとしたのか。
ありえない。神だ悪魔だのを全面的に否定する気はないが、そんなものがひょいひょいと人間の世界に関与してくるはずがなかった。
ならばおそらくは、別の要因が働いたのだろうとは思うが、それがなんなのか、オレステスの想像の範疇にはなかった。
だがそんなオレステスでも、ひとつだけわかることがある。
「なぁ……いくらなんでも、解決方法が斜め上過ぎねぇか?」
「――ですよね」
頬に伝わる一筋の冷や汗を感じながら、思わず真顔になって口走る。
答えたオレスティアも、頭を抱えていた。
その反応を見る限りやはり、彼女が意図的にこのようなことを望んでいたわけではないとわかる。
「けどまぁ、とりあえずお前が願った結果、なにかが作用してこうなった――かもしれないってことか」
建設的に話を纏めようとして、口に出して言ってみる。
もっとも、結局はなにひとつわかっていないような気がしないでもないが――
「魔力でしょ?」
落としかけたため息を遮ったのは、首を傾げたルシアだった。
「本人に自覚がなかったことを考えると、暴発の類いかもしれないけど」
「――どういうことだ?」
「だから、オレスティアさんの望みに応じて、魔力が発動したんでしょ。彼女自身が具体案を考えてなかったからよくわからない頓珍漢な作用をしたんでしょうね」
「待ってくれ」
うーんと悩むように腕を組むルシアに、オレステスは眉根を寄せた。
「オレスティアの望みに応じて――誰の魔力が発動したって?」
ルシアの口ぶりを聞いていれば、まるでオレスティア自身の魔力とでも言いたげだった。
けれどそれはありえない。もしオレスティアに魔力があれば、そもそもこのような虐待めいた扱いをされることはなかったのだから。
ルシアは完全に呆れきった半眼をオレステスに向ける。
「オレスティアさんの魔力に決まってるでしょ」
「そんなはずはない。オレスティアに魔力はないはずだ」
自分の思い違いではなかったことを確認したうえで言う。同意を求めるためにオレスティアを見ると、彼女も驚きの表情のまま、微かに頷いた。
「は? なに言ってるの。溢れてるけど?」
オレステスとオレスティアを交互に見つめたルシアは、衝撃的なことをあっさりと言って捨てた。
オレスティアの環境を考えれば、至極当然の願い。か弱い侯爵令嬢が自力での解決など思いもよらず、誰かに救いを求める思考になって何が悪いというのか。
そんな悲愴な顔をする必要は――ない、と考えかけて、ふと気づく。
いや、そんなバカな。
思いはするも、そう考えればオレスティアがこれほど申し訳なさそうな顔をするのも頷ける気がした。
こくりと喉を鳴らして、口を開く。
「まさか――強いお前がおれってことか……?」
誰か助けてほしい、強い自分に変わりたい。
その二つを一気に叶えたのが今のこの状況ということか?
あまりにも非現実的で突拍子もない解決法。
なにバカなこと言ってんのと一蹴してくれることを期待していたルシアはしかし、ハッと息を飲む。
さすがにそれは、と否定してほしかったのに、オレスティアは軽く俯きながら、気まずそうな上目づかいで見つめてくる。
二人の反応は、オレステスの推測を受け入れているに他ならなかった。
たしかにオレステスとオレスティアは、髪や瞳の色、名前は同じだった。それでなんとなく親近感を覚えたのも事実ではある。
だが性別も年齢も環境も性格も、なにもかもが違っていた。
なのに「もう一人の自分」だなどと認識するのは、あまりにもガバガバ判定ではないか。
なにより、オレスティアはただ漠然と救いを求め、願っただけだ。依然として、なにがどう作用してこうなったのかはわからない。
可哀想なオレスティアを哀れに思ったどこぞの神が、願いを叶えてやろうとしたのか。
ありえない。神だ悪魔だのを全面的に否定する気はないが、そんなものがひょいひょいと人間の世界に関与してくるはずがなかった。
ならばおそらくは、別の要因が働いたのだろうとは思うが、それがなんなのか、オレステスの想像の範疇にはなかった。
だがそんなオレステスでも、ひとつだけわかることがある。
「なぁ……いくらなんでも、解決方法が斜め上過ぎねぇか?」
「――ですよね」
頬に伝わる一筋の冷や汗を感じながら、思わず真顔になって口走る。
答えたオレスティアも、頭を抱えていた。
その反応を見る限りやはり、彼女が意図的にこのようなことを望んでいたわけではないとわかる。
「けどまぁ、とりあえずお前が願った結果、なにかが作用してこうなった――かもしれないってことか」
建設的に話を纏めようとして、口に出して言ってみる。
もっとも、結局はなにひとつわかっていないような気がしないでもないが――
「魔力でしょ?」
落としかけたため息を遮ったのは、首を傾げたルシアだった。
「本人に自覚がなかったことを考えると、暴発の類いかもしれないけど」
「――どういうことだ?」
「だから、オレスティアさんの望みに応じて、魔力が発動したんでしょ。彼女自身が具体案を考えてなかったからよくわからない頓珍漢な作用をしたんでしょうね」
「待ってくれ」
うーんと悩むように腕を組むルシアに、オレステスは眉根を寄せた。
「オレスティアの望みに応じて――誰の魔力が発動したって?」
ルシアの口ぶりを聞いていれば、まるでオレスティア自身の魔力とでも言いたげだった。
けれどそれはありえない。もしオレスティアに魔力があれば、そもそもこのような虐待めいた扱いをされることはなかったのだから。
ルシアは完全に呆れきった半眼をオレステスに向ける。
「オレスティアさんの魔力に決まってるでしょ」
「そんなはずはない。オレスティアに魔力はないはずだ」
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「は? なに言ってるの。溢れてるけど?」
オレステスとオレスティアを交互に見つめたルシアは、衝撃的なことをあっさりと言って捨てた。
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