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30 裏切りの魔道士(ルーツ視点)
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俺は魔力を解放した。身体を黒い闇の力が覆い始める。今の俺はこういう存在だ。強い力で魔力を込めるとこうなってしまう。それが、魔道士としての自分を隠してきた本当の理由だった。
俺は右手から闇魔法で王を攻撃した。王は信じられない胆力でそれを耐えた。しかし、俺の元に辿り着く直前に力尽き、膝から崩れ落ちた。
「ぬぐぅ……!?」
「そこまで俺の攻撃に耐えた者は今までいなかった。やはりあなたは凄い人だ」
「バカな!? この私がここまで一瞬でやられるなどと……」
「相手が悪かった……。それだけだ」
俺はうずくまる王の隣を通り、コロシアムの聖火が輝く階段に向けて歩き始めた。そこにあるからだ。暗黒竜ラグナロクの封印石が。
「待て、オーデルグ! あれは渡せないのだ」
「既に雌雄は決した。決まり事は守ってもらおう」
「そうは、いかぬのだよ!」
王が合図をすると、多数の兵士がコロシアムに入ってきた。長槍を持って俺を威嚇する。
「すまぬな。私が負けたとしても、こうする事になっておったのだ」
「いや、それで良い。こんな重大な守りをあなた一人で背負う事の方がおかしいのだから」
兵士に囲まれても全く負ける気はしない。残念だが、今の俺はそういう存在だ。
「ルーツ!!」
「!?」
サナ王女の声が聞こえ、俺は観客席を見る。そこにはサナ王女、バスティアン、ジャック、リリィがいた。バレたのか。やるじゃないか、皆。
「戦いを前によそ見など!」
「喰らえ!」
槍を持った兵士が数人で突きかかってきた。後衛からは魔法攻撃も飛んでくる。
「は!」
俺は気合を込めて右手を振り抜いた。魔力による物理攻撃。突きかかってきた兵士たちだけでなく、後ろにいた前衛の兵士を巻き込んで吹き飛ばした。さらに闇魔法を使い、後衛の魔道士たちや、未だ闘志を見せていた王も戦闘不能に追い込んだ。
「ぐふっ!」
「つ、強い……」
「バカな!」
まだ意識のある兵士たちが口々に言う。気絶しなかっただけでも大したものだ。この国の兵士の練度もまた一級品ということだ。
「止まれ、ルーツ!」
「ルーツ!!」
いつの間にか武舞台まで降りてきたサナ王女、バスティアン、ジャック、リリィに囲まれていた。
「おい、ルーツ!」
「ルーツ!」
ジャックとリリィが叫ぶ。
「すまなかったな。俺は最初から魔道士オーデルグ。ルーツという名前は3年前のあの日に捨てた」
「ニーベ村で、何があったの!?」
サナ王女が怒鳴った。そうか、そこまで辿り着いていたか。ジャックとリリィがやっていた調査の結果だろうな。
だがサナ王女。もし君がもう少し俺に関心を寄せていたら、もっと早く気づかれていたかもしれない。そうならなくて良かった。
「調査したんだろ? ニーベ村は3年前に全滅した」
「そ、そんな……!?」
「ほ、本当なのね!?」
「な、何でそんなことに!?」
「戦争だったんだ。そういうこともあるだろうさ」
俺は嘘をついた。本当のことをいちいち説明する気も無かった。あの虐殺にミストロア王が絡んでいることも。創造神サカズエのお墨付きであったことも。
「それで、どうして世界の破壊なんか!」
「動機までは説明しないと言ったはずだぞ」
そう、サナ王女がバスティアンとの関係を俺に暴露し、槍の魔物と戦った日。俺は槍の魔物をさっさと倒し、事前に潜入していたブラストと転移魔法で合流した。その時に言ったはずだ。
「ダメよ……。ルーツ! あなたの境遇がどうあれ、あなたにそんな罪を負わせない!」
「君には関係ない!」
「ルーツ、貴様!」
バスティアンが斬りかかってきた。俺は右手を地面に向けて闇魔法を唱える。
「滅びよ!」
その言葉と共に、地面から円形に紫色の光が周囲に広がっていく。
「こ、これは……!?」
「う、動けない!?」
サナ王女たちが地面に倒れた。破壊神トコヨニとその配下の力を使って合成した魔法だ。コロシアム内だけではなく、この街全体を包む程度には範囲が広い。範囲内にいる者は身体の自由を奪われて倒れる。もう誰も俺がラグナロクの封印石を取りに行くのを止められないだろう。
「世界が滅ぶといっても、君たちを苦しめたりしない。穏やかに人生を終えられるようにする。だから、もう静かに見ていろ」
俺は歩き始めた。サナ王女たちはなおも言葉を叫んでいたが、聞く耳は持たない。
「ルーツ! ルーツ!」
サナ王女が叫んだ。その剣幕に、俺はふと振り返ると、サナ王女は俺の魔法陣の中で立ち上がっていた。
「サ、サナ……?」
バスティアンが驚きの声を上げる。ジャックとリリィも驚いており、それは俺も同じだった。
「呪縛を破った? 君が?」
「忘れたの? 私だってニーベ村で魔法を学んだんだよ?」
「そうか。そういえばそうだったな。長老が君に魔法を教えたことだってあったな」
「そうよ」
「だが、立ち上がってどうする? 俺を止めたければ、俺を殺すしかない」
「そんなこと、しない!」
サナ王女は右手を前に突き出した。召喚魔法が来る!
「いでよ、ニーズヘッグ!」
巨大なドラゴンが召喚された。ヒュドラやコカトリスよりも大きい。恐らくサナ王女が現在仲間にしている召喚獣で最強。
「行かせないわ、ルーツ!」
「いいだろう、来い!」
俺は右手を掲げ、ニーズヘッグを撃退する準備に入った。
俺は右手から闇魔法で王を攻撃した。王は信じられない胆力でそれを耐えた。しかし、俺の元に辿り着く直前に力尽き、膝から崩れ落ちた。
「ぬぐぅ……!?」
「そこまで俺の攻撃に耐えた者は今までいなかった。やはりあなたは凄い人だ」
「バカな!? この私がここまで一瞬でやられるなどと……」
「相手が悪かった……。それだけだ」
俺はうずくまる王の隣を通り、コロシアムの聖火が輝く階段に向けて歩き始めた。そこにあるからだ。暗黒竜ラグナロクの封印石が。
「待て、オーデルグ! あれは渡せないのだ」
「既に雌雄は決した。決まり事は守ってもらおう」
「そうは、いかぬのだよ!」
王が合図をすると、多数の兵士がコロシアムに入ってきた。長槍を持って俺を威嚇する。
「すまぬな。私が負けたとしても、こうする事になっておったのだ」
「いや、それで良い。こんな重大な守りをあなた一人で背負う事の方がおかしいのだから」
兵士に囲まれても全く負ける気はしない。残念だが、今の俺はそういう存在だ。
「ルーツ!!」
「!?」
サナ王女の声が聞こえ、俺は観客席を見る。そこにはサナ王女、バスティアン、ジャック、リリィがいた。バレたのか。やるじゃないか、皆。
「戦いを前によそ見など!」
「喰らえ!」
槍を持った兵士が数人で突きかかってきた。後衛からは魔法攻撃も飛んでくる。
「は!」
俺は気合を込めて右手を振り抜いた。魔力による物理攻撃。突きかかってきた兵士たちだけでなく、後ろにいた前衛の兵士を巻き込んで吹き飛ばした。さらに闇魔法を使い、後衛の魔道士たちや、未だ闘志を見せていた王も戦闘不能に追い込んだ。
「ぐふっ!」
「つ、強い……」
「バカな!」
まだ意識のある兵士たちが口々に言う。気絶しなかっただけでも大したものだ。この国の兵士の練度もまた一級品ということだ。
「止まれ、ルーツ!」
「ルーツ!!」
いつの間にか武舞台まで降りてきたサナ王女、バスティアン、ジャック、リリィに囲まれていた。
「おい、ルーツ!」
「ルーツ!」
ジャックとリリィが叫ぶ。
「すまなかったな。俺は最初から魔道士オーデルグ。ルーツという名前は3年前のあの日に捨てた」
「ニーベ村で、何があったの!?」
サナ王女が怒鳴った。そうか、そこまで辿り着いていたか。ジャックとリリィがやっていた調査の結果だろうな。
だがサナ王女。もし君がもう少し俺に関心を寄せていたら、もっと早く気づかれていたかもしれない。そうならなくて良かった。
「調査したんだろ? ニーベ村は3年前に全滅した」
「そ、そんな……!?」
「ほ、本当なのね!?」
「な、何でそんなことに!?」
「戦争だったんだ。そういうこともあるだろうさ」
俺は嘘をついた。本当のことをいちいち説明する気も無かった。あの虐殺にミストロア王が絡んでいることも。創造神サカズエのお墨付きであったことも。
「それで、どうして世界の破壊なんか!」
「動機までは説明しないと言ったはずだぞ」
そう、サナ王女がバスティアンとの関係を俺に暴露し、槍の魔物と戦った日。俺は槍の魔物をさっさと倒し、事前に潜入していたブラストと転移魔法で合流した。その時に言ったはずだ。
「ダメよ……。ルーツ! あなたの境遇がどうあれ、あなたにそんな罪を負わせない!」
「君には関係ない!」
「ルーツ、貴様!」
バスティアンが斬りかかってきた。俺は右手を地面に向けて闇魔法を唱える。
「滅びよ!」
その言葉と共に、地面から円形に紫色の光が周囲に広がっていく。
「こ、これは……!?」
「う、動けない!?」
サナ王女たちが地面に倒れた。破壊神トコヨニとその配下の力を使って合成した魔法だ。コロシアム内だけではなく、この街全体を包む程度には範囲が広い。範囲内にいる者は身体の自由を奪われて倒れる。もう誰も俺がラグナロクの封印石を取りに行くのを止められないだろう。
「世界が滅ぶといっても、君たちを苦しめたりしない。穏やかに人生を終えられるようにする。だから、もう静かに見ていろ」
俺は歩き始めた。サナ王女たちはなおも言葉を叫んでいたが、聞く耳は持たない。
「ルーツ! ルーツ!」
サナ王女が叫んだ。その剣幕に、俺はふと振り返ると、サナ王女は俺の魔法陣の中で立ち上がっていた。
「サ、サナ……?」
バスティアンが驚きの声を上げる。ジャックとリリィも驚いており、それは俺も同じだった。
「呪縛を破った? 君が?」
「忘れたの? 私だってニーベ村で魔法を学んだんだよ?」
「そうか。そういえばそうだったな。長老が君に魔法を教えたことだってあったな」
「そうよ」
「だが、立ち上がってどうする? 俺を止めたければ、俺を殺すしかない」
「そんなこと、しない!」
サナ王女は右手を前に突き出した。召喚魔法が来る!
「いでよ、ニーズヘッグ!」
巨大なドラゴンが召喚された。ヒュドラやコカトリスよりも大きい。恐らくサナ王女が現在仲間にしている召喚獣で最強。
「行かせないわ、ルーツ!」
「いいだろう、来い!」
俺は右手を掲げ、ニーズヘッグを撃退する準備に入った。
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