破壊神の終末救世記

シマフジ英

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11 破壊神の協力者(ルーツ視点)

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 大悪魔ジャークゼンは咆哮を上げると、別の班の方に飛びかかった。学年2位の剣豪であるブルーニーのいる班だったため、ブルーニーが前に出て剣を使い、大悪魔ジャークゼンが奮った右手の一閃を受け止める。

「うおっ!?」
 しかし、ジャークゼンの攻撃の威力に怯み、ブルーニーはのけぞりそうになってしまう。

「ふはは、死ねぇ、人間!!」
「なめんじゃねえ、この野郎!!」
 ブルーニーはそのパワーで、大悪魔ジャークゼンを押し返す。ブルーニーのパワーも規格外だが、ジャークゼン相手では押しきれないようだった。

 ブルーニーの班の後列の魔道士が魔法でジャークゼンを攻撃し、さらに別の班員が斧で加勢に入る。また、バスティアンが反応して剣で攻撃に加わった。

「リリィ、みんな、俺たちも!」
「いや、ダメだ!」
 ジャックの言葉を俺が遮った。この悪魔は本体だけでなく、小さな分体を創り出すことは過去の記録から分かっている。ジャークゼンを囲んでいるフォーメーションを崩してはいけない。

「みんな、持ち場を離れないで!」
 俺だけでなく、サナ王女が叫んだ。他の班員にも伝わったようで、ブルーニーの班に加勢することはせず、身構え続ける。

 バスティアンの華麗な剣技に怯み、ジャークゼンが後方に飛ぶ。ジャークゼンはニタァと笑い、右手を千切って黒い霧に変えた。黒い霧は翼のある不気味な化け物へ変貌する。これが分体なのだろう。数は10を超える。

「来たな!!」
「迎撃!!」
 各班から気合の声が上がった。俺たちの班の方向にも何体かが襲いかかってきた。俺はサナ王女とリリィを守るように剣を構え、受け止めた。

「うっ!? なんて力だ!」
 俺は体制を崩しそうになった。そこにジャックから槍の援護が入る。その分体は後退したが、他にも襲いかかってくる分体がおり、事態は思ったより深刻のようだった。

「くっ! これは、記録より遥かに強い!?」
 サナ王女が叫ぶ。確かに先ほどジャークゼンは言っていた。自分は遥かにパワーアップしたと。

 他の班も情勢は厳しかった。ブルーニーの班はまだ大丈夫だが、やられてしまいそうな班もあり、本体を相手にしているバスティアンがところどころカバーに入って凌いでいた。

「召喚魔法を使います!」
 サナ王女が右手を前に突き出した。目の前に出現した幻界への道からヒュドラが姿を現す。

「今回もまた召喚魔法か、芸のない!」
 ジャークゼンから発せられる闇の魔力が増した。ヒュドラが現れたことで本気モードに入ったようだ。ヒュドラも巨大だが、ジャークゼンの本体も同じくらい巨大だ。ヒュドラが加わっても、情勢はあまり変わらなかった。

「やるしかないな……!」
 俺はサナ王女との約束通り、魔法剣を使うことにした。それを察したのか、サナ王女が俺の肩に手を当てる。

「お願い」
「バスティアンのカバーに入るよ。ジャックとリリィのこと、頼む」
 左手を剣にかざし、剣に魔力を注ぎ込む。ヒュドラの炎が直撃し、バスティアンが斬りつけた場所に飛び込み、魔力を氷属性に変えて斬りつけた。

「ぐぁぁああ!?」
 ジャークゼンが悲鳴を上げた。剣戟が効いたのだ。初めて攻勢にまわったことで、クラスメイト全員の士気も上がったと感じる。ここから勝ちに行くためには……。

「ブルーニー!! 本体攻撃に加わってくれ!」
 俺はブルーニーを呼んだ。ブルーニーの規格外のパワーを加えて本体を一気に叩く。

「てめえ、何だその剣!? 後でちゃんと説明してもらうぞ!」
 ブルーニーは悪態をつきながらもすぐに攻撃に参加してきた。

「ブルーニー班とサナ王女班のカバー!」
 どこからともなくクラスメイトの声が飛んだ。仲間が分体を撃退する様子を確認する暇はなく、俺は本体攻撃に集中した。俺の魔法剣がジャークゼンを捕らえ、ブルーニーが渾身の一撃を食らわせ、バスティアンがそこを斬り抜いた。

「ぐぅぅ、また、勝てなかった、のか……!?」
 ジャークゼンは膝をつき、分体が次々に消滅していく。

「ははは、パワーアップしたと言っても所詮私はこの程度。トコヨニ様が初期に創った失敗作に過ぎん。だが、他の連中は私などより遥かに強い。それに……」
 ジャークゼンは一瞬俺を見た後、別の方向を見た。そちらにはサナ王女がいた。

「貴様らが創造神サカズエに協力するように、今回はトコヨニ様にも協力者がいる。前回までのようにはいかんぞ。覚悟しておくんだな」
 ジャークゼンはそう言うと、球体に変化した。すかさず、サナ王女が右手を構える。光がほとばしり、球体を包んで大地に消えていった。

「本当は滅するべきなんだろうけど、何百年後かに起こるであろう次の戦いに備えてあの悪魔は封印する。それが創造神サカズエの取り決め」
 サナ王女が自分に言い聞かせるように言った。そして、勝利を確信したクラスメイトから歓声が上がった。ブルーニーは思った以上に興奮したのか、俺の背中をバンバンと叩いてくる。ジャックとリリィは人前にも関わらず抱き合っていた。

 俺は怪我人がいないか見て回った。何人か起き上がれない者がいたが、軽症といえる範囲だ。応急処置をして立ち上がると、ふとサナ王女とバスティアンが目に入った。二人は何やら神妙な様子で顔を合わせている。

「おいルーツ! そろそろあの剣のこと説明してもらうぞ!」
「おわ!」
 ひとしきり興奮し終わったのか、ブルーニーが俺の肩を掴んできた。俺はブルーニーに、あれは魔法剣であり、事情があって今まで見せられなかったことを説明した。すると、近いうちにもう一度模擬戦をやることを申し込まれてしまった。

 戦いが終わって散々な有様のパーティー会場の片付けをした後、サナ王女が改めてクラスメイトに尋ねた。共に破壊神トコヨニと戦ってほしいと。

 クラスメイトからは次々と肯定の声が上がった。あの禍々しい大悪魔ジャークゼンでさえ、トコヨニの配下の中では最弱。誰かが立ち向かわなければ世界は滅びてしまう。なら自分たちが。皆そう思っているようだった。

「なるほどな。だから最初に候補生をジャークゼンと戦わせるのか」
 俺は思わず呟いた。

「そうだ。これは創造神サカズエが作った手順らしいよ」
 バスティアンが話しかけてきた。

「このクラス、最初から仕組まれていたな? メンバーのほとんどは帝国人ではないから、破壊神との戦いで死んでも帝国への影響は少ない」
「否定はしない」
「しかも、どうやら正義感の強い者が多い。帝国らしいやり方だ。サナ王女は、選別に関わっているのか……?」
「まさか。彼女は関係ない。選別したのは帝国上層部だよ」
 バスティアンはサナ王女の名前を聞いて動揺したように感じた。さっき見つめ合っていた様子といい、どうも気になる。

「しかし、協力者、か。破壊神側につくとは、一体どういう者たちなんだ」
 バスティアンが手を顎に当てながら呟く。それはまるで、サナ王女の話題から離れようとしているようだった。

「分からない」
 俺は感情のこもっていない声で返した。
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