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勝ち組βと負け組α、バディを組む
松崎健之助(α)
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中里はたまに、目的地から離れた場所に車を停めさせる。健之助はそこで待つよう指示され、しばらくすると中里はアタッシュケースを持って帰って来るのだ。
ケースの中身は確実に、金だ。つまり中里は金の隠し場所へ行っているのだろう。
健之助が車内で待つ間、連に中里の後をつけさせ金の隠し場所を探り出す、これが計画だった。
少し話したばかりの印象だが、連は性格は最悪だが要領は悪くなさそうである。尾行も上手くやってのけるかもしれない。仮に失敗したとしても、捕まるのは連だけで済む。尾行が失敗した時点で自分は逃げれば良いと健之助は思った。
中里が隠し場所へ行くのは不定期だが、常に夜遅くである。サラリーマンの連には都合がつき易いはずだ。健之助はまっとうに職に就いた事が無いので詳しい事は知らないが、接待や付き合い等で無理な日もあるだろう。そういう日は別に待機しなくて構わないと健之助は言ったのだが、余程切羽詰まっているのか連は明日より常に待機すると言い張った。
「…何とか…10日以内にその中里って奴が隠し場所へ行ってくれると良いのだが…」
連が祈るように言う。10日以内に金が要る、という事は高利貸しから借金でもしたのだろう。理由はギャンブルか女かそれとも男か…どうでも良かった。こんな奴の事だ、ろくな理由じゃないだろう。連に金の要る理由など、どうでも良い。問題は使える道具かどうかだ。
中里が隠し場所へ行く日はなかなかやって来なかった。連は焦っているのか、毎日電話をかけてくるようになり、それはとうとう昼夜問わずの頻度になった。
ある日中里を車に乗せ、運転している時にマナーモードにしているスマホのヴァイブが鳴った。無視しても何度もかかってくる。
「出なくて良いのか?構わないぞ。」
中里のその声には、心なしか非難や疑惑があるような気がして健之助はゾッとした。
「ありがとうございます、どうせ友人がつまらない話でかけてきているだけですから…後で叱っておきます。」
着信歴を見れば、案の定連からの履歴がずらっと並んでおり、健之助は大きくため息をついた。
かけ直すとコール音1回で、連は電話に出た。
「おい!いいかげんにしろよ!電話が何度も鳴るもんだから、中里に怪しまれたじゃないか!計画を台無しにしたいのか?!」
「す、すまない…その、怪しまれたって…大丈夫なのか?」
「何とか今回は誤魔化せたと思う。とにかく、その時が来たらこちらから必ず電話するから、お前の方からはもう連絡しないでくれ。」
「なあ、いつ来るんだ?隠し場所へ行くサイクルなんかは本当に無いのか?頼むよ、利息を払うためにあちこちのサラ金から借りまくってて…今日はとうとう、もう貸せないって言われたんだよ…
なあ、100万で良いから金貸してくれないか?いや50万で良いから。」
舌打ちしたいのを押し殺し、健之助はある電話番号を言った。090金融というやつだ。スマホ一本で金を貸してくれる。
「ここで金を借りて急場をしのげ。中里の金が入れば、借金なんて全て返せる。あいつはそうとうため込んでるからな、何十億は下らない。」
「…分かった!必ず、電話くれよな?!」
何十億、という言葉に気分が高揚したのか切り際の連の声は明るかった。
――馬鹿な奴だ。
元々の連は聡い方だったろうが、今は借金で首が回らなくなり頭がかなり鈍くなっている。現在、どう金を工面するかしか考えられなくなっており目先の金しか視界に無い。これが中里を尾行する際の障害にならなければ良いのだが。健之助は一抹の不安を感じたが、やるしか無いと思いそれに蓋をした。
連に金をやるつもりは無い。手に入れた金は全て、自分のものにするつもりだ。あいつは直接殺しまでやれる奴ではないが、自分はやれる。
金を手に入れたら、連を殺し金だけ持っておさらばだ。
ケースの中身は確実に、金だ。つまり中里は金の隠し場所へ行っているのだろう。
健之助が車内で待つ間、連に中里の後をつけさせ金の隠し場所を探り出す、これが計画だった。
少し話したばかりの印象だが、連は性格は最悪だが要領は悪くなさそうである。尾行も上手くやってのけるかもしれない。仮に失敗したとしても、捕まるのは連だけで済む。尾行が失敗した時点で自分は逃げれば良いと健之助は思った。
中里が隠し場所へ行くのは不定期だが、常に夜遅くである。サラリーマンの連には都合がつき易いはずだ。健之助はまっとうに職に就いた事が無いので詳しい事は知らないが、接待や付き合い等で無理な日もあるだろう。そういう日は別に待機しなくて構わないと健之助は言ったのだが、余程切羽詰まっているのか連は明日より常に待機すると言い張った。
「…何とか…10日以内にその中里って奴が隠し場所へ行ってくれると良いのだが…」
連が祈るように言う。10日以内に金が要る、という事は高利貸しから借金でもしたのだろう。理由はギャンブルか女かそれとも男か…どうでも良かった。こんな奴の事だ、ろくな理由じゃないだろう。連に金の要る理由など、どうでも良い。問題は使える道具かどうかだ。
中里が隠し場所へ行く日はなかなかやって来なかった。連は焦っているのか、毎日電話をかけてくるようになり、それはとうとう昼夜問わずの頻度になった。
ある日中里を車に乗せ、運転している時にマナーモードにしているスマホのヴァイブが鳴った。無視しても何度もかかってくる。
「出なくて良いのか?構わないぞ。」
中里のその声には、心なしか非難や疑惑があるような気がして健之助はゾッとした。
「ありがとうございます、どうせ友人がつまらない話でかけてきているだけですから…後で叱っておきます。」
着信歴を見れば、案の定連からの履歴がずらっと並んでおり、健之助は大きくため息をついた。
かけ直すとコール音1回で、連は電話に出た。
「おい!いいかげんにしろよ!電話が何度も鳴るもんだから、中里に怪しまれたじゃないか!計画を台無しにしたいのか?!」
「す、すまない…その、怪しまれたって…大丈夫なのか?」
「何とか今回は誤魔化せたと思う。とにかく、その時が来たらこちらから必ず電話するから、お前の方からはもう連絡しないでくれ。」
「なあ、いつ来るんだ?隠し場所へ行くサイクルなんかは本当に無いのか?頼むよ、利息を払うためにあちこちのサラ金から借りまくってて…今日はとうとう、もう貸せないって言われたんだよ…
なあ、100万で良いから金貸してくれないか?いや50万で良いから。」
舌打ちしたいのを押し殺し、健之助はある電話番号を言った。090金融というやつだ。スマホ一本で金を貸してくれる。
「ここで金を借りて急場をしのげ。中里の金が入れば、借金なんて全て返せる。あいつはそうとうため込んでるからな、何十億は下らない。」
「…分かった!必ず、電話くれよな?!」
何十億、という言葉に気分が高揚したのか切り際の連の声は明るかった。
――馬鹿な奴だ。
元々の連は聡い方だったろうが、今は借金で首が回らなくなり頭がかなり鈍くなっている。現在、どう金を工面するかしか考えられなくなっており目先の金しか視界に無い。これが中里を尾行する際の障害にならなければ良いのだが。健之助は一抹の不安を感じたが、やるしか無いと思いそれに蓋をした。
連に金をやるつもりは無い。手に入れた金は全て、自分のものにするつもりだ。あいつは直接殺しまでやれる奴ではないが、自分はやれる。
金を手に入れたら、連を殺し金だけ持っておさらばだ。
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