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勝ち組βと負け組α、バディを組む
平井連(β)
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とっぷり日の暮れた公園は、遊ぶ子供や子供を見守る親の姿も無く、いちゃつくカップルも居ない。
昼間は遊ぶ子供たちで賑やかであろう公園のベンチに一人座り、連は缶ビールを呷った。
真っ直ぐ帰宅する気になれず、かと言ってどこかの店に入る気にもなれなかった。
飲み終えたビールの空き缶を両手に持ち、俯いて溜息をついていると頭上から柔らかな感じの声が聞こえた。
「すみません、隣良いですか?」
顔を上げると、そこには若い男が立っている。垂れ気味の目に、声音同様柔らかそうな髪が夜風に揺れている。Tシャツにパンツという恰好で、大学生の様に見えた。
公園のベンチは他にも空いている。にもかかわらず、わざわざ他人の隣に座りたがる。普通に考えれば結構怪しいのだが、その青年が非常に柔和で清潔感のある、感じの良さを醸し出していたため、連は警戒心を解くどころか彼に好感を抱いた。
「…どうぞ。」と、連は右へ寄り彼の座るスペースを作り、片手で座るよう促した。
青年はにこやかに礼を言い、隣に座った。
「今日、ちょっと嫌な事があって…一人でいたくなかったんです。」
青年はぽつりと話し出した。
「かと言って、どこか店に入る気にもなれないし、知り合いとも顔を合わせたくなかったんですよね…」
連はこの青年に親近感を抱いた。
「俺も同じ。」
「そうなんですか、奇遇ですね。」
青年は連の内面を察したのか、内容については聞かないでくれた。
――――――――――――――――――――――――――――――――————————
「君はΩだったのか。」
ホテルで事を終えた後、浴室へ入ろうとする青年に連は言った。
青年の肛門は女の陰部の様に濡れた。しかしそこは確かに肛門であり、青年の身体的特徴は男であった。連は男のΩとセックスした事が無いため、正確な事は分からないが「これはひょっとして…」と思ったのだ。
「ええ、そうです。…Ωは嫌いでした?」
青年が不安そうに聞くので、連は慌てて首を振り否定した。
「いや、違うんだ!俺にはそんな偏見は無いから!ただちょっと思っただけ。」
「良かった。じゃ、連絡先交換しません?」
青年はぱっと笑顔になり言った。これまで見た事も無いような邪気の無い笑顔である。
「ああ、もちろん。」
青年のLINEアカウントには「ゲンカ」とあった。
昼間は遊ぶ子供たちで賑やかであろう公園のベンチに一人座り、連は缶ビールを呷った。
真っ直ぐ帰宅する気になれず、かと言ってどこかの店に入る気にもなれなかった。
飲み終えたビールの空き缶を両手に持ち、俯いて溜息をついていると頭上から柔らかな感じの声が聞こえた。
「すみません、隣良いですか?」
顔を上げると、そこには若い男が立っている。垂れ気味の目に、声音同様柔らかそうな髪が夜風に揺れている。Tシャツにパンツという恰好で、大学生の様に見えた。
公園のベンチは他にも空いている。にもかかわらず、わざわざ他人の隣に座りたがる。普通に考えれば結構怪しいのだが、その青年が非常に柔和で清潔感のある、感じの良さを醸し出していたため、連は警戒心を解くどころか彼に好感を抱いた。
「…どうぞ。」と、連は右へ寄り彼の座るスペースを作り、片手で座るよう促した。
青年はにこやかに礼を言い、隣に座った。
「今日、ちょっと嫌な事があって…一人でいたくなかったんです。」
青年はぽつりと話し出した。
「かと言って、どこか店に入る気にもなれないし、知り合いとも顔を合わせたくなかったんですよね…」
連はこの青年に親近感を抱いた。
「俺も同じ。」
「そうなんですか、奇遇ですね。」
青年は連の内面を察したのか、内容については聞かないでくれた。
――――――――――――――――――――――――――――――――————————
「君はΩだったのか。」
ホテルで事を終えた後、浴室へ入ろうとする青年に連は言った。
青年の肛門は女の陰部の様に濡れた。しかしそこは確かに肛門であり、青年の身体的特徴は男であった。連は男のΩとセックスした事が無いため、正確な事は分からないが「これはひょっとして…」と思ったのだ。
「ええ、そうです。…Ωは嫌いでした?」
青年が不安そうに聞くので、連は慌てて首を振り否定した。
「いや、違うんだ!俺にはそんな偏見は無いから!ただちょっと思っただけ。」
「良かった。じゃ、連絡先交換しません?」
青年はぱっと笑顔になり言った。これまで見た事も無いような邪気の無い笑顔である。
「ああ、もちろん。」
青年のLINEアカウントには「ゲンカ」とあった。
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