非モテ最底辺Ω VS 特権階級α

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勝ち組βと負け組α、バディを組む

松崎健之助(α)

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料亭の駐車場に車を待機させ、健之助は運転席で缶コーヒーを飲みながら中里からの連絡を待っている。

中里があの料亭で誰と会い、何の話をしているのか健之助には皆目見当もつかないが、胡散臭い内容であろうと予想はしている。



中里の仕事内容について、健之助は一切何も知らされていない。中里は彼に運転手という労働のみを求めている。ヒートになった時、処理道具になる事はあるがそれ以上の関係は無い。



理由は健之助がαだからだ。中里はおそらく、いや確実に反社会的な内容で金を稼いでいる。その仕事の片棒を担がせたりした場合、Ωやβであれば自らも罪に問われるリスクから口外したり、警察にタレ込む心配は少ない。

しかしαは何をしても罪に問われないため、平気で警察にタレ込むリスクが高いのだ。なのでαというものは黒社会において信用が得難く、性奴隷に改造されるかΩ相手に売春するか、健之助の様に運転手をするしか無い。



Ωは運転免許の取得を許可されていない。なので多くのΩは無免許運転をしているのだが、金のあるΩはこうしてαを雇い運転手にする。



αが特権階級なんてのは、実家に力のあるαだけの話だ。そうでないαにとって、αである事は呪いでしかない。



Ωの母親がどこかで引っかけたαとの間に産まれた私生児として、健之助は生を受けた。

母親はヒートが来る度、健之助を犯し息子で処理した。息子との間にできた子供がどうなったのか、詳しい事は知らないが母親は産まれてすぐ赤ん坊をどこかへ連れて行き、手ぶらで帰ってきたので売られたのだろう。

やがて母親は他のΩに健之助を犯させ金を稼ぐようになる。

母親に褒められたくて、健之助は文句も言わず励んだ。しかし母親は健之助が16歳の時、愛人と行方をくらました。



その後もΩ相手の売春を続けていたのだが、ある日ヤクザの情夫に買われた時の事、そのヤクザが運悪く最中に帰宅してきたのだ。

健之助はボコボコに殴られ蹴られた跡、性奴隷に改造され売られそうになったところ、たまたまそこに居た中里が運転手を欲しがっておりこうして雇われたのである。



腰が痛くなるが、運転手の仕事は好きでも嫌いでもない。収入も豊かとまではいかずとも、十分ではある。

しかし時たま焦燥感に駆られる。このままダラダラと運転手だけをして生きていたくない、自分の力を試し、自由に生きたい、そんな思いを抱えこうして中里を待っている時などは、このまま中里を放り出しどこか遠くへ車を走らせ去っていきたくなる。



しかし逃げ切れる自信が健之助には無かった。中里の情報収集能力がどれ程のものか見た事は無いが、不明なだけに恐ろしかった。



――結局自分はこのまま、死んだ様にダラダラと生き続けるのだろうか。そんな人生を生きるぐらいなら、いっその事死んだ方がマシかもしれない…



健之助は溜息をついた。彼は突破口を求めていた。この状況から、閉塞感から抜け出す突破口を。それがどれだけ胡散臭い、リスキーなものであっても今の彼なら腹をくくって飛びつくだろう。



電話が鳴った。ディスプレイを見ると、予想通り中里である。

健之助はエンジンをかけると、料亭へ向けてハンドルを切った。


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