13 / 63
強盗団Ω VS 特権階級α
尾道昇(α)
しおりを挟む
徹が急いで部屋に入った時、丁度強盗団の一人が脱いだ下着やズボンを履いている最中であった。呆然自失した英子が力無く柱にもたれかかり、子供たちはもはや表情を失っている。
徹が英子を犯したΩに掴みかかろうとし、他の強盗団に羽交い絞めにされ再び拘束された。
徹が昇を睨みつけると、昇も今回は目を逸らさず睨み返す。昇は先ほど、徹が自分を売った事を自分の事を棚に上げて根に持っていた。
「ヒートが来る前に済めば何もしねえって言ったろ。早く来なかったあんたが悪いんだよ。」
強盗団の一人が徹の顔を蹴り上げた。徹は仰向けに倒れ、鼻血を出し呻いている。
「ていうか、そんなに嫌なら夫妻共々抑制剤飲んでりゃ良かったじゃん。抑制剤買う金いくらでもあんのに、横着するからだよ。」
「何で…何であんたたちのためにそんな事…」
呆然と転がっていた英子の目に光が戻り、とげとげしい口調で喋り始めた。
「あんたたちみたいな劣等人種のために、何で私たちがそんな事やらなきゃいけないのよ!それはΩの義務でしょう?!
私はね、パパが民事党の小笠原誠なのよ!あんたたちは全然知らないだろうけど、警察も裁判官もパパが動かしてるようなもんなんだから!私にこんな事して、あんたたちただじゃ済まないわよ!」
強盗団の一同は、まくし立てる英子を不思議なものでも見るような目で眺め、顔を見合わせた。
彼女は自分達が生きて帰る事ができると、当たり前のように信じているのだ。
「さて、こいつらどうするかね…」
「始末するでしょ、そりゃ。この女の言う通りで、生かしといたら厄介だ。」
強盗団がそう話すのを聞いて、英子は息を飲んだ。常に自分の思う通りに世の中が進む中で生きてきた彼女は、Ωに生殺与奪を握られている事をこの時ようやく悟ったのだ。
「ま、待って…言わない、パパにも誰にも言わない!だから私たちを無事帰して!」
「か、金をさっきの倍払う…だから助けてくれ!昇、さっきはすまなかった!許してくれ、お前も一緒に頼んでくれ!」
徹の台詞を聞いた強盗団の一人が目を輝かせた。
「さっきの倍、出すってさ!」
「ばーか、そう言って今度は逃げるつもりだよ。」ともう一人が窘める。
「おい!」と声をかけられ、昇が見た先には鉈を差し出す強盗団の一人がいた。
「始末しろ。まずはやりやすい子供からにしてやる。」
「へっ?!ぼ、僕がやるんですか…?」
「当たり前だろうが。」
「なっ…で、できるわけが…」
「何でだよ、鉈で切れば良いだけだろ。一発で駄目なら何発も切りつけりゃ良い。相手は拘束されて身動きとれないんだ、簡単だろうが。」
何でもない事のように言う、目の前の強盗に昇は背筋が凍り付いた。彼らにとって、殺人はそういうものなのだ。
「そういう問題では…」
「じゃ、放すか?困るのはお前の方じゃねえの?こいつらお前より上位のαなんだろ?世間に知れたら、良くて無期懲役かもな。俺たち、素性がこいつらに知られてないから割とどうでも良いんだぜ。」
そんなのはごめんだった。高利貸し屋から、金を取り次第海老ケ瀬一家は殺されるので心配要らないと、そう聞いてやや安心していた。しかしまさか自分で手を下すとまでは考えていなかったのだ。
やむを得ず、昇は徹の元へ歩み寄る。
「おい、ガキの方からだっつったろ!聞いてなかったのか?」
有無を言わさぬ口調に口答えできず、昇はくるりと体の向きを子供たちへ向けた。
二人寄り添い、怯えた目で昇を見る子供たちにゆっくりと歩み寄る。
「やめてくれ!昇、さっきは本当にすまなかった!子供たちだけは逃がしてやってくれ!」
「昇さん、お願い!何でもする、何でも差し上げるわ!だから子供たちに手を出さないで!考えてみてよ、いくらαでも子供の言う事なんて誰も相手にしないわよ!」
徹と英子に哀願され、昇は強盗団の方を窺ったが彼らの表情には何の変化も無く、昇が忠実に手を下すのをじっと見届けようとしている。
「αのガキは惜しいんだな。」
強盗の一人がぽつりとそう呟く。
「お前らの代理母は、こいつらの前にΩを産んだろ。そいつらはどうしたんだ?」
徹と英子は口をつぐみ、表情を凍り付かせた。
β同士の性交ではβしか産まれない。しかしΩを代理母とした、αとΩの交配ではα、Ωの二種が産まれ得る。
しかしαの家はαしか受け付けない。そのため、Ωが産まれた場合その子は児童養護施設にあずけられるか、もしくは闇に葬られるのだ。
そうしたαの家の闇を隠すため、αの家ではαしか産まれないという事になっている。
昇の家でも今いる息子たちが産まれる前、Ωが二人産まれていたが内密に処理してもらった。その子供たちがはたしてどうなったのか、昇は知らないし興味を持った事も無い。
そういう訳だから、Ωの家でαが産まれる事もあるだろう。しかしΩの生活事情に疎い昇はそうしたαがどうなっているのか知らない。
昇だけではなく、世の中を牛耳るαやそれを支える世界人口の多くを占めるβも、Ωの事情について詳しくはないだろう。多くが地下に潜るΩの実態は謎に包まれている。
だから、Ωの家ではΩしか産まれないというのは、そういう事にしておこうという範囲に過ぎないのだ。
不遇な境遇にあるαを救おうなどという考えは、α社会に無い。そんな事をすれば自分達の取り分が減ると思うからである。
昇自身今、徹と英子が消えれば自分の得られる特権が増えると期待している。
観念した昇は鉈を振り上げ、思い切り徹の長男の頭上に落とした。
「ギャッ」という叫び声、そして血しぶきが顔や体に降りかかる。
――くそっ…気に入りのスーツだったのに…
「このクソガキ!」
スーツが汚れた怒りで昇の中で罪悪感が忘れ去られ、何度も鉈を振り下ろした。耳には何の音も入らず、時間の感覚も無い。目の前にある物体への怒りしか見えなかった。
「もう良い。死んでるぞ。」
そう言われ肩を掴まれ、我に帰った昇の目の前に原形をとどめない徹の長男の姿があった。血塗れのそれは所々骨がむき出しになり、頭部らしき辺りが割れて淡いピンク色のものが露わになっている。周囲に指らしきものが数本、散らばり何やら柔らかそうな物体も散らばっている。おそらく眼球であろう。
「ヒイイイッ…ぎやああああああああああああ!!」
目を剥いて暴れ出した昇を、強盗らが押さえつけた。
「全く、何なんだよ…自分でやっといて…」
呆れたように、そう言われる。少し離れた場所から、徹と英子が狂ったように泣き叫び、昇を罵倒する声が聞こえた。
「次は次男の方な。鉈はもう疲れたろ、これ使えや。」
そう言って差し出されたのは電動のこぎりだった。
「これ…どうやって使うんだ?」
「何だ、電ノコの使い方も知らないのかよ。じゃあ、しゃあないからコレ使えや。」
そう言って強盗はバールを手渡した。昇の身長の半分くらいの長さはあり、手に持つとずっしり重い。
昇は徹の次男に向かって、バールを躊躇い無く振り上げた。
一度目でタガが外れたのか、心理的抵抗を感じなくなっている。むしろ、最初の殺人の時に強い快感を感じ癖になりそうな程だった。
支配欲や嗜虐欲の強いαにとって、殺人や暴力行為は親和性の高いものなのかもしれない。
まるで木が折れたような音がした。目の前では次男が悲鳴をあげながらのたうち回っている。急所を外し、足の辺りにでも当たったらしい。
ゾクゾクとした快感を感じながら、昇は次男の体あちこちにバールを振り下ろした。骨の折れる鈍い音、内臓の潰れる感触に昇はいたく興奮した。
やがて白目を剥き、体を細かく痙攣させ始めた次男の脳天を砕いて終了した。脳漿が飛び散り、次男の頭部は顔のパーツが分からぬ程血塗れになっている。
昇は自分の下着が濡れている事に気付いた。どうやら射精したらしい。
次は徹と英子である。二人の方を見ると、徹は涙の滲んだ目で昇を睨みつけ、英子は無表情に涙だけを流している。
昇はにんまり笑い、二人に歩み寄った。
「ちょっと待て、やっぱ無し。こいつら売った方が金になるわ。」
強盗の一人がそう言って昇を制止した。
「ガキの方も生かしとくんだったなー…思いつくのが遅かったぜ。」
「そ、そんな!」
大好物を取り上げられた子供の様に、昇は彼らに残念そうな顔を向けた。
「あー、はいはい。分かった。じゃあ、殺さない様に気を付けてこいつらの舌と手足ちょん切ってくれる?止血はこっちでやるから。」
面倒くさそうにそう言われ、昇はプレゼントを貰った子供の様に顔を輝かせ頷いた。
強盗に二人の口を強引にこじ開けてもらい、ナイフを舌に当てのこぎりの様に引いていく。凄まじい悲鳴が地下にこだまし、被害者は白目を剥いた。アンモニア臭がすると思ったら、失禁していた。
切断した舌をそこらへ投げ捨てた。徹と英子は「あ”あ”あ”あ”あ”あ”」と口から血を流し呻いている。それを見て、先ほど射精したばかりだというのに再び股間が固くなった。
手足を切断するため昇が手にしたのはのこぎりだった。まずは足の第二関節に刃を当て、引いた。耳をつんざくような悲鳴が響き渡り、昇は今にも射精しそうになる。肉の部分を切断したものの、骨の辺りが切り難く手間取っていると
「皮膚の辺りだけ切って、骨はバールで折れ。」とアドバイスされ、バールを思い切り振り落とした。鈍い音と悲鳴が地下に響き、被害者の苦痛に歪む顔を見ると同時に昇は再び絶頂に達した。
こうして言葉にならないうわ言を呟く、舌と手足の無い徹と英子のα夫妻が出来上がった。
「すげえな、お前。」
強盗の一人が昇にそう呟いた。関心しているというより、馬鹿にしているような呆れているような声音だ。
「Ωが私生児として産んだαっていうのを、見る事けっこうあるんだけどさ。皆、今のあんたみたいな感じだよ。殺しや拷問に使うのに丁度良いんだよな。頭の巡りも悪いから、使い勝手も良い。」
目の前にスマホのディスプレイを突き付けられた。その中で流れる映像は、昇が徹の子供たちを惨殺しているところである。
全身血塗れになりながら、目をギラギラ光らせ満面の笑みをたたえる自分の姿を見ても、ドーパミンが大量に分泌されている状態の昇はさして驚かなかった。
「安心しな、俺たちがこれからも、お前に思う存分やりたい事をやらせてやるよ。」
昇はこっくりと頷いた。
徹が英子を犯したΩに掴みかかろうとし、他の強盗団に羽交い絞めにされ再び拘束された。
徹が昇を睨みつけると、昇も今回は目を逸らさず睨み返す。昇は先ほど、徹が自分を売った事を自分の事を棚に上げて根に持っていた。
「ヒートが来る前に済めば何もしねえって言ったろ。早く来なかったあんたが悪いんだよ。」
強盗団の一人が徹の顔を蹴り上げた。徹は仰向けに倒れ、鼻血を出し呻いている。
「ていうか、そんなに嫌なら夫妻共々抑制剤飲んでりゃ良かったじゃん。抑制剤買う金いくらでもあんのに、横着するからだよ。」
「何で…何であんたたちのためにそんな事…」
呆然と転がっていた英子の目に光が戻り、とげとげしい口調で喋り始めた。
「あんたたちみたいな劣等人種のために、何で私たちがそんな事やらなきゃいけないのよ!それはΩの義務でしょう?!
私はね、パパが民事党の小笠原誠なのよ!あんたたちは全然知らないだろうけど、警察も裁判官もパパが動かしてるようなもんなんだから!私にこんな事して、あんたたちただじゃ済まないわよ!」
強盗団の一同は、まくし立てる英子を不思議なものでも見るような目で眺め、顔を見合わせた。
彼女は自分達が生きて帰る事ができると、当たり前のように信じているのだ。
「さて、こいつらどうするかね…」
「始末するでしょ、そりゃ。この女の言う通りで、生かしといたら厄介だ。」
強盗団がそう話すのを聞いて、英子は息を飲んだ。常に自分の思う通りに世の中が進む中で生きてきた彼女は、Ωに生殺与奪を握られている事をこの時ようやく悟ったのだ。
「ま、待って…言わない、パパにも誰にも言わない!だから私たちを無事帰して!」
「か、金をさっきの倍払う…だから助けてくれ!昇、さっきはすまなかった!許してくれ、お前も一緒に頼んでくれ!」
徹の台詞を聞いた強盗団の一人が目を輝かせた。
「さっきの倍、出すってさ!」
「ばーか、そう言って今度は逃げるつもりだよ。」ともう一人が窘める。
「おい!」と声をかけられ、昇が見た先には鉈を差し出す強盗団の一人がいた。
「始末しろ。まずはやりやすい子供からにしてやる。」
「へっ?!ぼ、僕がやるんですか…?」
「当たり前だろうが。」
「なっ…で、できるわけが…」
「何でだよ、鉈で切れば良いだけだろ。一発で駄目なら何発も切りつけりゃ良い。相手は拘束されて身動きとれないんだ、簡単だろうが。」
何でもない事のように言う、目の前の強盗に昇は背筋が凍り付いた。彼らにとって、殺人はそういうものなのだ。
「そういう問題では…」
「じゃ、放すか?困るのはお前の方じゃねえの?こいつらお前より上位のαなんだろ?世間に知れたら、良くて無期懲役かもな。俺たち、素性がこいつらに知られてないから割とどうでも良いんだぜ。」
そんなのはごめんだった。高利貸し屋から、金を取り次第海老ケ瀬一家は殺されるので心配要らないと、そう聞いてやや安心していた。しかしまさか自分で手を下すとまでは考えていなかったのだ。
やむを得ず、昇は徹の元へ歩み寄る。
「おい、ガキの方からだっつったろ!聞いてなかったのか?」
有無を言わさぬ口調に口答えできず、昇はくるりと体の向きを子供たちへ向けた。
二人寄り添い、怯えた目で昇を見る子供たちにゆっくりと歩み寄る。
「やめてくれ!昇、さっきは本当にすまなかった!子供たちだけは逃がしてやってくれ!」
「昇さん、お願い!何でもする、何でも差し上げるわ!だから子供たちに手を出さないで!考えてみてよ、いくらαでも子供の言う事なんて誰も相手にしないわよ!」
徹と英子に哀願され、昇は強盗団の方を窺ったが彼らの表情には何の変化も無く、昇が忠実に手を下すのをじっと見届けようとしている。
「αのガキは惜しいんだな。」
強盗の一人がぽつりとそう呟く。
「お前らの代理母は、こいつらの前にΩを産んだろ。そいつらはどうしたんだ?」
徹と英子は口をつぐみ、表情を凍り付かせた。
β同士の性交ではβしか産まれない。しかしΩを代理母とした、αとΩの交配ではα、Ωの二種が産まれ得る。
しかしαの家はαしか受け付けない。そのため、Ωが産まれた場合その子は児童養護施設にあずけられるか、もしくは闇に葬られるのだ。
そうしたαの家の闇を隠すため、αの家ではαしか産まれないという事になっている。
昇の家でも今いる息子たちが産まれる前、Ωが二人産まれていたが内密に処理してもらった。その子供たちがはたしてどうなったのか、昇は知らないし興味を持った事も無い。
そういう訳だから、Ωの家でαが産まれる事もあるだろう。しかしΩの生活事情に疎い昇はそうしたαがどうなっているのか知らない。
昇だけではなく、世の中を牛耳るαやそれを支える世界人口の多くを占めるβも、Ωの事情について詳しくはないだろう。多くが地下に潜るΩの実態は謎に包まれている。
だから、Ωの家ではΩしか産まれないというのは、そういう事にしておこうという範囲に過ぎないのだ。
不遇な境遇にあるαを救おうなどという考えは、α社会に無い。そんな事をすれば自分達の取り分が減ると思うからである。
昇自身今、徹と英子が消えれば自分の得られる特権が増えると期待している。
観念した昇は鉈を振り上げ、思い切り徹の長男の頭上に落とした。
「ギャッ」という叫び声、そして血しぶきが顔や体に降りかかる。
――くそっ…気に入りのスーツだったのに…
「このクソガキ!」
スーツが汚れた怒りで昇の中で罪悪感が忘れ去られ、何度も鉈を振り下ろした。耳には何の音も入らず、時間の感覚も無い。目の前にある物体への怒りしか見えなかった。
「もう良い。死んでるぞ。」
そう言われ肩を掴まれ、我に帰った昇の目の前に原形をとどめない徹の長男の姿があった。血塗れのそれは所々骨がむき出しになり、頭部らしき辺りが割れて淡いピンク色のものが露わになっている。周囲に指らしきものが数本、散らばり何やら柔らかそうな物体も散らばっている。おそらく眼球であろう。
「ヒイイイッ…ぎやああああああああああああ!!」
目を剥いて暴れ出した昇を、強盗らが押さえつけた。
「全く、何なんだよ…自分でやっといて…」
呆れたように、そう言われる。少し離れた場所から、徹と英子が狂ったように泣き叫び、昇を罵倒する声が聞こえた。
「次は次男の方な。鉈はもう疲れたろ、これ使えや。」
そう言って差し出されたのは電動のこぎりだった。
「これ…どうやって使うんだ?」
「何だ、電ノコの使い方も知らないのかよ。じゃあ、しゃあないからコレ使えや。」
そう言って強盗はバールを手渡した。昇の身長の半分くらいの長さはあり、手に持つとずっしり重い。
昇は徹の次男に向かって、バールを躊躇い無く振り上げた。
一度目でタガが外れたのか、心理的抵抗を感じなくなっている。むしろ、最初の殺人の時に強い快感を感じ癖になりそうな程だった。
支配欲や嗜虐欲の強いαにとって、殺人や暴力行為は親和性の高いものなのかもしれない。
まるで木が折れたような音がした。目の前では次男が悲鳴をあげながらのたうち回っている。急所を外し、足の辺りにでも当たったらしい。
ゾクゾクとした快感を感じながら、昇は次男の体あちこちにバールを振り下ろした。骨の折れる鈍い音、内臓の潰れる感触に昇はいたく興奮した。
やがて白目を剥き、体を細かく痙攣させ始めた次男の脳天を砕いて終了した。脳漿が飛び散り、次男の頭部は顔のパーツが分からぬ程血塗れになっている。
昇は自分の下着が濡れている事に気付いた。どうやら射精したらしい。
次は徹と英子である。二人の方を見ると、徹は涙の滲んだ目で昇を睨みつけ、英子は無表情に涙だけを流している。
昇はにんまり笑い、二人に歩み寄った。
「ちょっと待て、やっぱ無し。こいつら売った方が金になるわ。」
強盗の一人がそう言って昇を制止した。
「ガキの方も生かしとくんだったなー…思いつくのが遅かったぜ。」
「そ、そんな!」
大好物を取り上げられた子供の様に、昇は彼らに残念そうな顔を向けた。
「あー、はいはい。分かった。じゃあ、殺さない様に気を付けてこいつらの舌と手足ちょん切ってくれる?止血はこっちでやるから。」
面倒くさそうにそう言われ、昇はプレゼントを貰った子供の様に顔を輝かせ頷いた。
強盗に二人の口を強引にこじ開けてもらい、ナイフを舌に当てのこぎりの様に引いていく。凄まじい悲鳴が地下にこだまし、被害者は白目を剥いた。アンモニア臭がすると思ったら、失禁していた。
切断した舌をそこらへ投げ捨てた。徹と英子は「あ”あ”あ”あ”あ”あ”」と口から血を流し呻いている。それを見て、先ほど射精したばかりだというのに再び股間が固くなった。
手足を切断するため昇が手にしたのはのこぎりだった。まずは足の第二関節に刃を当て、引いた。耳をつんざくような悲鳴が響き渡り、昇は今にも射精しそうになる。肉の部分を切断したものの、骨の辺りが切り難く手間取っていると
「皮膚の辺りだけ切って、骨はバールで折れ。」とアドバイスされ、バールを思い切り振り落とした。鈍い音と悲鳴が地下に響き、被害者の苦痛に歪む顔を見ると同時に昇は再び絶頂に達した。
こうして言葉にならないうわ言を呟く、舌と手足の無い徹と英子のα夫妻が出来上がった。
「すげえな、お前。」
強盗の一人が昇にそう呟いた。関心しているというより、馬鹿にしているような呆れているような声音だ。
「Ωが私生児として産んだαっていうのを、見る事けっこうあるんだけどさ。皆、今のあんたみたいな感じだよ。殺しや拷問に使うのに丁度良いんだよな。頭の巡りも悪いから、使い勝手も良い。」
目の前にスマホのディスプレイを突き付けられた。その中で流れる映像は、昇が徹の子供たちを惨殺しているところである。
全身血塗れになりながら、目をギラギラ光らせ満面の笑みをたたえる自分の姿を見ても、ドーパミンが大量に分泌されている状態の昇はさして驚かなかった。
「安心しな、俺たちがこれからも、お前に思う存分やりたい事をやらせてやるよ。」
昇はこっくりと頷いた。
0
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。
芽吹く二人の出会いの話
むらくも
BL
「俺に協力しろ」
入学したばかりの春真にそう言ってきたのは、入学式で見かけた生徒会長・通称β様。
とあるトラブルをきっかけに関わりを持った2人に特別な感情が芽吹くまでのお話。
学園オメガバース(独自設定あり)の【αになれないβ×βに近いΩ】のお話です。

両片思いのI LOVE YOU
大波小波
BL
相沢 瑠衣(あいざわ るい)は、18歳のオメガ少年だ。
両親に家を追い出され、バイトを掛け持ちしながら毎日を何とか暮らしている。
そんなある日、大学生のアルファ青年・楠 寿士(くすのき ひさし)と出会う。
洋菓子店でミニスカサンタのコスプレで頑張っていた瑠衣から、売れ残りのクリスマスケーキを全部買ってくれた寿士。
お礼に彼のマンションまでケーキを運ぶ瑠衣だが、そのまま寿士と関係を持ってしまった。
富豪の御曹司である寿士は、一ヶ月100万円で愛人にならないか、と瑠衣に持ち掛ける。
少々性格に難ありの寿士なのだが、金銭に苦労している瑠衣は、ついつい応じてしまった……。

運命なんて知らない[完結]
なかた
BL
Ω同士の双子のお話です。
双子という関係に悩みながら、それでも好きでいることを選んだ2人がどうなるか見届けて頂けると幸いです。
ずっと2人だった。
起きるところから寝るところまで、小学校から大学まで何をするのにも2人だった。好きなものや趣味は流石に同じではなかったけど、ずっと一緒にこれからも過ごしていくんだと当たり前のように思っていた。そう思い続けるほどに君の隣は心地よかったんだ。
それが運命というのなら
藤美りゅう
BL
元不良執着α×元不良プライド高いΩ
元不良同士のオメガバース。
『オメガは弱い』
そんな言葉を覆す為に、天音理月は自分を鍛え上げた。オメガの性は絶対だ、変わる事は決してない。ならば自身が強くなり、番など作らずとも生きていける事を自身で証明してみせる。番を解消され、自ら命を絶った叔父のようにはならない──そう理月は強く決心する。
それを証明するように、理月はオメガでありながら不良の吹き溜まりと言われる「行徳学園」のトップになる。そして理月にはライバル視している男がいた。バイクチーム「ケルベロス」のリーダーであるアルファの宝来将星だ。
昔からの決まりで、行徳学園とケルベロスは決して交わる事はなかったが、それでも理月は将星を意識していた。
そんなある日、相談事があると言う将星が突然自分の前に現れる。そして、将星を前にした理月の体に突然異変が起きる。今までなった事のないヒートが理月を襲ったのだ。理性を失いオメガの本能だけが理月を支配していき、将星に体を求める。
オメガは強くなれる、そう信じて鍛え上げてきた理月だったが、オメガのヒートを目の当たりにし、今まで培ってきたものは結局は何の役にも立たないのだと絶望する。将星に抱かれた理月だったが、将星に二度と関わらないでくれ、と懇願する。理月の左手首には、その時将星に噛まれた歯型がくっきりと残った。それ以来、理月が激しくヒートを起こす事はなかった。
そして三年の月日が流れ、理月と将星は偶然にも再会を果たす。しかし、将星の隣には既に美しい恋人がいた──。
アイコンの二人がモデルです。この二人で想像して読んでみて下さい!
※「仮の番」というオリジナルの設定が有ります。
※運命と書いて『さだめ』と読みます。
※pixivの「ビーボーイ創作BL大賞」応募作品になります。

キンモクセイは夏の記憶とともに
広崎之斗
BL
弟みたいで好きだった年下αに、外堀を埋められてしまい意を決して番になるまでの物語。
小山悠人は大学入学を機に上京し、それから実家には帰っていなかった。
田舎故にΩであることに対する風当たりに我慢できなかったからだ。
そして10年の月日が流れたある日、年下で幼なじみの六條純一が突然悠人の前に現われる。
純一はずっと好きだったと告白し、10年越しの想いを伝える。
しかし純一はαであり、立派に仕事もしていて、なにより見た目だって良い。
「俺になんてもったいない!」
素直になれない年下Ωと、執着系年下αを取り巻く人達との、ハッピーエンドまでの物語。
性描写のある話は【※】をつけていきます。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる