68 / 69
第68話:剣を買いに行くぞ、お金あるんすか
しおりを挟む
俺と相棒、二人組の冒険者パーティー。
普段はスライム退治専門のしょぼいパーティーだ。
「おい、剣を買いに行くぞ」
「お金あるんすか」
「ないぞ」
「じゃあ、どうするんすか」
「ほんのわずかならある」
「ろくな剣買えないっすよ」
崖の近くでスライム退治していたら海に転落して、漁師に助けられたが、剣を無くしてしまった。
剣が無くては冒険出来ない。
たまに徒手空拳の人がいるけど俺には無理だな。
さて、相棒と村の武器屋に行く。
銀色に光り輝く剣がずらりと置いてある。
鞘がなかなかカッコいい装飾の剣もある。
「おお、田舎の村なのに、なかなかいい剣が揃っているではないか」
「けど高価で買えないんじゃないすか」
確かに日雇い労働みたいな生活をしていたからなあ。
予算はほんのわずかだ。
武器屋の主人に相談してみた。
「分割払いはやってないのか」
「うちはそういうことはしてませんなあ」
年寄りの武器屋の主人に言われた。
うーむ、全財産をはたいて購入するか。
全財産といっても、ほんの少ししか持っていない。
ああ、貧乏とはつらいものだ。
俺が店の主人に持っている金額を言うと、店の奥から剣を持ってきた。
「こんな剣くらいしかありませんなあ」
何ともしょぼい剣だ。
柄の部分は錆びつている。
鞘から抜こうとするが、なかなか抜けない。
「おい、鞘から抜けないぞ」
「おかしいですなあ」
俺と相棒、二人で引っ張り合ってやっと抜けた。
「おい、刀身がサビだらけじゃないか」
「ああ、これはすみません。でも、この剣くらいですねえ、あなたの予算だと」
やれやれ。
無いよりはマシとこの剣を購入した。
相棒に慰められる。
「まあ、いいんじゃないすか。スライム相手ならその剣でも充分すよ」
「いや、この剣ではドラゴンを倒すことは出来ないぞ」
「また、そんなことを言ってるんすか。ドラゴンなんて、いくらいい剣を持っていても、近づいた途端に踏みつぶされて終わりですよ、リーダーの実力じゃあ」
「うるさいぞ」
通りを歩きながら剣を確かめる。
それにしても、しょぼい剣だ。
鞘の方も冴えない……と思いきや、よく見ると鞘の先の方に小さい宝石が付いているぞ。
「おい、これを見ろ。小さいが宝石が付いている。これはもしかして、伝説の剣じゃないか。そして、これをきっかけに大冒険が……」
「もう、妄想はいいっすよ。それもガラス玉じゃないすか」
そして、相棒は鞘をまじまじと見る。
「うーん、これはガラス玉じゃないすねえ。どうやら本物の宝石みたいっすね。あの武器屋の老人、気づかなかったんすかねえ」
「まあ、目も悪そうだったからなあ」
「返して来たらどうすか。宝石なんて出腹でハゲのおっさんのリーダーに似合わないすよ」
「出腹とハゲは関係ないぞ。それにもうちゃんと代金は支払ったんだからな」
「悪銭身に付かずって言葉もあるっすよ」
「金じゃないぞ。これは剣だぞ」
俺たちが会話をしていると、女の子が走って来る。
おお、すごい美少女だ。
「すみません、私、武器屋の孫娘なんですけど、あの、さきほどの剣ですが、実は大変貴重な剣でした。あの、お詫びに金貨を差し上げますので、大変申し訳ありませんが戻してくれませんでしょうか」
深々と頭を下げる美少女。
うーん、美少女の頼みなら仕方がない。
俺は剣を返す。
「ありがとうございます」
美少女は剣を受け取ると、代わりに金貨を三枚くれた。
おお、久々に見る金貨だ。
「じゃあ、これで。本当にありがとうございます」
そして、何やら焦ってまた武器屋の方へ戻ろうとする美少女。
「どうした。なんで、そんなに急いでいるんだ」
「この剣には重要な秘密があるんです」
走っていく美少女を見ながら俺の頭には壮大な冒険の旅が浮かび上がる。
相棒に言った。
「おい、これはついに大冒険のはじまりじゃないのか」
「は、何でそうなるんすか。剣を返しただけじゃないすか」
「いや、あれは秘密の剣と言ったじゃないか。これであの武器屋の美少女と仲間になり、いずれはドラゴンを倒す大冒険するのだ」
「でも、あの娘、武器屋を通り過ぎて走っていきましたよ」
「え?」
確かに、美少女は剣を持ったまま、いや、重いのか、途中で剣を捨てて、鞘だけ持って遠くへ走って行く。
「ちょっと、リーダー、騙されたんじゃないすか。その金貨見せてくださいよ」
相棒が金貨を調べる。
「なんすか、これ。鉄ですよ。鉄の上に金メッキしただけっすよ」
「じゃあ、詐欺じゃないか」
「あの娘、鞘に付いていた宝石を盗んだんすよ」
ああ、何てことだ。美少女に騙されるとは。
「大冒険がはじまるどころか美少女詐欺師に騙されるとは情けない」
「とりあえず、剣を回収しにいったほうがいいんじゃないすか」
「そうだな」
俺たちは美少女詐欺師が放り投げた剣を拾うために走る。
しかし、その剣はなんと折れていた。
「やれやれ。放り投げただけで折れてるぞ、この剣」
「これはスライム退治にも役に立たないしろものってことっすね。よかったじゃないすか。この剣でスライム退治に行ったら、逆にスライムにやられてましたっすよ」
「けど、じゃあ、俺は一文無しで剣も無いただのおっさんじゃないか」
「そうすね。出腹とハゲ、肩こり、腰痛、膝痛、リュウマチ、夜間頻尿が抜けてますけど」
「うるさいぞ。って、剣が無いぞ、どうすればいいんだよ」
ああ、大冒険がはじまると思ったのに。
急にやる気をなくす俺であった。
普段はスライム退治専門のしょぼいパーティーだ。
「おい、剣を買いに行くぞ」
「お金あるんすか」
「ないぞ」
「じゃあ、どうするんすか」
「ほんのわずかならある」
「ろくな剣買えないっすよ」
崖の近くでスライム退治していたら海に転落して、漁師に助けられたが、剣を無くしてしまった。
剣が無くては冒険出来ない。
たまに徒手空拳の人がいるけど俺には無理だな。
さて、相棒と村の武器屋に行く。
銀色に光り輝く剣がずらりと置いてある。
鞘がなかなかカッコいい装飾の剣もある。
「おお、田舎の村なのに、なかなかいい剣が揃っているではないか」
「けど高価で買えないんじゃないすか」
確かに日雇い労働みたいな生活をしていたからなあ。
予算はほんのわずかだ。
武器屋の主人に相談してみた。
「分割払いはやってないのか」
「うちはそういうことはしてませんなあ」
年寄りの武器屋の主人に言われた。
うーむ、全財産をはたいて購入するか。
全財産といっても、ほんの少ししか持っていない。
ああ、貧乏とはつらいものだ。
俺が店の主人に持っている金額を言うと、店の奥から剣を持ってきた。
「こんな剣くらいしかありませんなあ」
何ともしょぼい剣だ。
柄の部分は錆びつている。
鞘から抜こうとするが、なかなか抜けない。
「おい、鞘から抜けないぞ」
「おかしいですなあ」
俺と相棒、二人で引っ張り合ってやっと抜けた。
「おい、刀身がサビだらけじゃないか」
「ああ、これはすみません。でも、この剣くらいですねえ、あなたの予算だと」
やれやれ。
無いよりはマシとこの剣を購入した。
相棒に慰められる。
「まあ、いいんじゃないすか。スライム相手ならその剣でも充分すよ」
「いや、この剣ではドラゴンを倒すことは出来ないぞ」
「また、そんなことを言ってるんすか。ドラゴンなんて、いくらいい剣を持っていても、近づいた途端に踏みつぶされて終わりですよ、リーダーの実力じゃあ」
「うるさいぞ」
通りを歩きながら剣を確かめる。
それにしても、しょぼい剣だ。
鞘の方も冴えない……と思いきや、よく見ると鞘の先の方に小さい宝石が付いているぞ。
「おい、これを見ろ。小さいが宝石が付いている。これはもしかして、伝説の剣じゃないか。そして、これをきっかけに大冒険が……」
「もう、妄想はいいっすよ。それもガラス玉じゃないすか」
そして、相棒は鞘をまじまじと見る。
「うーん、これはガラス玉じゃないすねえ。どうやら本物の宝石みたいっすね。あの武器屋の老人、気づかなかったんすかねえ」
「まあ、目も悪そうだったからなあ」
「返して来たらどうすか。宝石なんて出腹でハゲのおっさんのリーダーに似合わないすよ」
「出腹とハゲは関係ないぞ。それにもうちゃんと代金は支払ったんだからな」
「悪銭身に付かずって言葉もあるっすよ」
「金じゃないぞ。これは剣だぞ」
俺たちが会話をしていると、女の子が走って来る。
おお、すごい美少女だ。
「すみません、私、武器屋の孫娘なんですけど、あの、さきほどの剣ですが、実は大変貴重な剣でした。あの、お詫びに金貨を差し上げますので、大変申し訳ありませんが戻してくれませんでしょうか」
深々と頭を下げる美少女。
うーん、美少女の頼みなら仕方がない。
俺は剣を返す。
「ありがとうございます」
美少女は剣を受け取ると、代わりに金貨を三枚くれた。
おお、久々に見る金貨だ。
「じゃあ、これで。本当にありがとうございます」
そして、何やら焦ってまた武器屋の方へ戻ろうとする美少女。
「どうした。なんで、そんなに急いでいるんだ」
「この剣には重要な秘密があるんです」
走っていく美少女を見ながら俺の頭には壮大な冒険の旅が浮かび上がる。
相棒に言った。
「おい、これはついに大冒険のはじまりじゃないのか」
「は、何でそうなるんすか。剣を返しただけじゃないすか」
「いや、あれは秘密の剣と言ったじゃないか。これであの武器屋の美少女と仲間になり、いずれはドラゴンを倒す大冒険するのだ」
「でも、あの娘、武器屋を通り過ぎて走っていきましたよ」
「え?」
確かに、美少女は剣を持ったまま、いや、重いのか、途中で剣を捨てて、鞘だけ持って遠くへ走って行く。
「ちょっと、リーダー、騙されたんじゃないすか。その金貨見せてくださいよ」
相棒が金貨を調べる。
「なんすか、これ。鉄ですよ。鉄の上に金メッキしただけっすよ」
「じゃあ、詐欺じゃないか」
「あの娘、鞘に付いていた宝石を盗んだんすよ」
ああ、何てことだ。美少女に騙されるとは。
「大冒険がはじまるどころか美少女詐欺師に騙されるとは情けない」
「とりあえず、剣を回収しにいったほうがいいんじゃないすか」
「そうだな」
俺たちは美少女詐欺師が放り投げた剣を拾うために走る。
しかし、その剣はなんと折れていた。
「やれやれ。放り投げただけで折れてるぞ、この剣」
「これはスライム退治にも役に立たないしろものってことっすね。よかったじゃないすか。この剣でスライム退治に行ったら、逆にスライムにやられてましたっすよ」
「けど、じゃあ、俺は一文無しで剣も無いただのおっさんじゃないか」
「そうすね。出腹とハゲ、肩こり、腰痛、膝痛、リュウマチ、夜間頻尿が抜けてますけど」
「うるさいぞ。って、剣が無いぞ、どうすればいいんだよ」
ああ、大冒険がはじまると思ったのに。
急にやる気をなくす俺であった。
0
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる