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第57話:かかって来い、魔物め、俺っちのこの正義のナイフを受けてみろ! 落ち着けよ、お前も俺みたいにモンスター退治の妄想に入ったのか?
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俺と相棒、二人組の冒険者パーティー。
普段はスライム退治専門のしょぼいパーティーだ。
そして、今日もスライム退治だ。
宿屋から冒険者ギルドに指定された場所に行く。
村からちょっと離れた山にある立派な邸宅だ。
午後過ぎに到着。
「かなり大きいなあ。豪邸だ」
「金持ちらしいっすね」
デカい門から入ると、長々と石造りの道が邸宅の方まで続いている。
周りにはいろんな植物が植えられている。
あと、庭にもう一軒、小さな家を建てるためか、工事業者がいる。
「うむ、本当の金持ちらしいな」
「そうすね。うらやましいっすね」
「俺もドラゴン退治をして、大金を得て、こんな豪邸に美少女召使いと住みたいものだなあ」
「その出腹でおまけにハゲ、腰痛、肩こり、右膝痛、頻尿じゃあ無理じゃないすか」
「出腹とハゲは関係ないだろ。おっと、ところで捻挫したお前の腕と足は大丈夫なのか」
「まあ、スライム退治なら大丈夫っすね。スライムを倒すときにリーダーの出腹が邪魔になるかもしれないすっけど」
「だから出腹は関係ないだろ」
さて、俺たちがいつものことながら下らん会話をしつつ、邸宅の扉を叩くと中年の女性が出てきた。
この豪邸の女主人らしい。
「こんにちは、冒険者ギルドから派遣されてきました。何やら地下室にスライムが発生したそうで」
「そうなんです。退治してくれますか」
「わかりました」
さて、俺と相棒が案内される。
「ここから地下室へ下りられますわ」
「わかりました」
地下室への階段を下りていく。
しかし、途中で階段が終わっている。
「何じゃ、こりゃ。壁でふさがれているではないか」
「これはどうしたことなんすかね」
仕方が無いので、再度、一階に戻って女主人に聞いた。
「あの、地下室への階段が途中で終わっているんですけど、これはどうなってるんですか」
「ああ、忘れてました。その階段からは地下室へは下りられません。失礼しました。別の階段から下りられますので、ご案内しますね」
女主人に別の階段を案内される。
「こちらから下りてください。途中で扉がありますので、この鍵で開けてください。開けたらすぐに入って、扉を閉じてください。他にも扉がありますが、すべてこの鍵で開けられます」
「わかりました」
俺と相棒が階段を下りていくが、なんだか妙にねじ曲がった階段だ。
螺旋階段かと思ったら、まっすぐになったり。
「なんだか、変だぞ、この階段は」
「そうすね。おまけに段の高さがバラバラっすね」
そして、階段の途中に扉がある。
俺は鍵で扉を開けるが、そうするとまた階段が続いている。
「なんだろう。なんで階段の途中にこんな扉を作ったんだ。いらないだろ」
「そうっすね。おまけにすぐに閉じてくださいって、何か怯えてましたっすね、あの女性は」
「スライムが怖いのかなあ。まあ、モンスターではあるけど」
俺は言われた通り、すぐに扉を閉める。そして、また階段を下りていくとやっと地下室に辿りついた。物品がまばらに置いてある地下室。
「あまり物が置いてないな」
「うーん、そんなに使ってないんすかね」
しかし、よく見ると隅っこにスライムがけっこういるではないか。
バシッ! バシッ! バシッ!
あっさりと何匹か倒した。
「これで終了か」
「いや、他にも部屋がありまっすよ」
他の部屋に行くが扉を開けると、また扉。仕方なく開けると、また扉。もう一回開けると、やっと部屋に入った。その部屋にもスライムが発生している。
バシッ! バシッ! バシッ!
あっさりとスライムを倒す俺たち。
「でも、何だよ、この扉は。なんで三つも付けているんだ。スライムが出てこれないようにしているのか」
「うーん、何だか変っすねえ、この建物」
他にも部屋があったが似たような感じだ。
やたら扉が狭かったり、逆にデカい扉があって開けると、すごく小さい部屋だったり。
地下室なのに窓があったり。窓を開けても土の壁ではないか。
廊下も妙にクネクネと曲がっている。
「おい、工事業者が酔っぱらって建設したんじゃないのか、この邸宅は」
「うーん、前衛芸術家なんすかねえ、あの女主人。わけがわからないすね」
そんなこんなで、けっこう時間がかかってしまった。
夕方には仕事は終了。
「やれやれ。いつものことながらスライム退治はおもろーないな」
「まあ、生きていくためには仕方が無いすよ」
一応、地下室を再度調べたが、スライムがいる気配はない。
「では、一階に戻って、女主人に報告するか」
俺と相棒は、再び、あの変な階段を上り途中の扉を開けて、すぐに鍵を閉めて、一階に戻った。
女主人を探すと、豪華なソファセットで、何やらローブを着た魔法使いらしき女性と歓談している。
「えー、お話中のところすみませんが、業務は終了しました」
「ありがとうございます」
俺は女主人に鍵を渡した。
すると、ソファに座っていた女魔法使いが女主人に聞いている。
「まさか、あの扉を開けたんですか」
「ええ、庭に小さい家を今、建設中なんですけど、その家に持って行くものを探しに地下室へ行ったんですよ。そしたら、スライムがいっぱいて。だから、このお二人に退治を頼んだんです」
「うーん、それはまずいことをしましたね」
「やはり、扉を開けてはまずかったんですか」
女魔法使いと女主人がよくわからない会話をしている。
俺は女主人に言った。
「あのー、スライムが一階に上ってこないように扉を付けたんですか。一応、全部、退治したんですけど」
すると、魔法使いが俺に言った。
「いや、この家は呪われているんですよ」
「え、呪いですか」
「もともとこの土地は呪われていたんですよ。魔物の呪いですね。そのため、ここのご主人も若くして亡くなってしまった。それが地下から入って来ないようにしていたんです。あの扉もそのためのものです。地下室に下りる際に変な形をしていたと思いますが、それも魔物を封じ込めるためのものですね」
俺は相棒に小声で聞いた。
「おい、この家は魔物に呪われているようなんだが、お前はどう思う」
「うーん、そんな感じはしなかったですけどねえ」
しかし、突然、部屋のランプがいくつか消える。
と思ったら、点いたり消えたりを繰り返す。
これは魔物の出現かと剣の柄を握る俺。
そして、変な笑い声や建物がきしむ音が聞こえてきた。
「うむ、なにか知らんが異常事態だぞ」
俺は思わず剣を抜いて構える。
「魔物か何か知らんが、かかって来い!」
しかし、女魔法使いが俺をおさえる。
そして、何やら呪文を唱えた。
すると、ランプは正常に戻り、変な声やら音も消えた。
魔法使いが女主人に言った。
「これで大丈夫です。魔物は全て私が倒しました」
おお、さすが魔法使い。
あっという間に魔物を消し去ったのか。
「本当にありがとうございました」
女主人が魔法使いの女にペコペコしている。
「まあ、階段には、後、二か所くらい扉を付けたほうがいいでしょうね」
そして、その魔法使いが俺を見ながら言った。
「あなたにも魔物が憑りついてますね」
「え、本当ですか」
魔法使いがしばし目をつぶる。
「うーん、あなたの体にまとわりついてますね。あなたは、腰痛、肩こり、右膝痛、頻尿に悩まされていませんか」
初めて会ったのに、俺の病気を全部当てている。
これは本物だな。
「魔物を取り除けば、簡単に治りますよ」
「おお、是非お願いしたいのですが」
しかし、相棒がしらけた顔で言った。
「本当に魔物なんているんすかね」
すると、女魔法使いがニヤリと笑う。
「あなたは捻挫してますね。左腕と左足を」
「え、何でわかるんすか」
相棒も驚いている。
「全て魔物のせいですね」
すると、また部屋の隅っこから笑い声が聞こえてきた。
「どうやら、また魔物がやってきたようですね」
「ひい、どうにかしてください」
女魔法使いにとりすがる女主人。
「わかりました」
女魔法使いが呪文を唱えようとするが、相棒が笑い声の方へ近づいていく。
「かかって来い、魔物め。俺っちのこの正義のナイフを受けてみろ!」
「おいおい、ちょっと待て、落ち着けよ。この人にまかせろ。それともお前も俺みたいにモンスター退治の妄想に入ったのか?」
しかし、相棒はかまわず、部屋の隅っこの上の方にナイフを投げた。
「ひい!」
隅っこの壁が破れて作業服の男が飛び出してくる。
「え、どういうことだ」
相棒がしらけた顔で言った。
「詐欺ですよ、これ」
……………………………………………………
どうやら、あの女魔法使いは詐欺師。
魔物がいると言って、工事業者とつるんで、変な声を出したりランプを消したり点けたりとかいろいろと女主人を怖がらせては、改築を繰り返し、そして高額な工事代を請求して山分けしていたようだ。やたら改築したんで、階段が変な形になったり扉が多くなったりしたようだ。
女主人の旦那さんが死んだのに付け込んだようだな。
けしからん。
詐欺師のニセ女魔法使いと工事業者を村役場に連行してやった。
「しかし、お前はなんで気付いたんだ」
「そりゃ、あの女がリーダーの病気を指摘したじゃないすか」
「うむ。しかし、全部、当たっていたぞ」
「でも、一番悩んでいるリュウマチを言わなかったじゃないすか。確か、この邸宅へ入るまで道を歩いたじゃないすか。俺っちはリーダーをいつものようにからかったんすけど、その際に『その出腹でおまけにハゲ、腰痛、肩こり、右膝痛、頻尿』と言ったけど、リュウマチを言い忘れていたんすよ。それで、これは変だなあと思ったんす。後、あの時、リーダーは『捻挫したお前の腕と足は大丈夫なのか』って俺っちに言ったんすよ。でも、右か左か言わなかったっす。だから、俺っちはわざと左腕や左足をわざと右手で痛そうな感じで擦ってたんす。すると、案の定、あの女詐欺師は『あなたは捻挫してますね、左腕と左足を』って言ったんす。それで、これは詐欺だなって思ったんすよ」
「でも、あの女詐欺師とはあの時、初対面だったぞ」
「多分、家に入るまでに工事業者が俺たちの会話を聞いていたんですよ。それをあの女に教えたんすよ」
「お前、ひょっとして、かなり優秀なんじゃないか」
「大した事ないすよ。でも、あの女詐欺師はリーダーの出腹とハゲは指摘しなかったすね。遠慮したんすかねえ」
「そんなの見れば誰にもわかるだろ!」
とは言え、相棒はなかなか冴えているではないか。
俺の相棒にしておくにはもったいないのではとも思ってしまった。
普段はスライム退治専門のしょぼいパーティーだ。
そして、今日もスライム退治だ。
宿屋から冒険者ギルドに指定された場所に行く。
村からちょっと離れた山にある立派な邸宅だ。
午後過ぎに到着。
「かなり大きいなあ。豪邸だ」
「金持ちらしいっすね」
デカい門から入ると、長々と石造りの道が邸宅の方まで続いている。
周りにはいろんな植物が植えられている。
あと、庭にもう一軒、小さな家を建てるためか、工事業者がいる。
「うむ、本当の金持ちらしいな」
「そうすね。うらやましいっすね」
「俺もドラゴン退治をして、大金を得て、こんな豪邸に美少女召使いと住みたいものだなあ」
「その出腹でおまけにハゲ、腰痛、肩こり、右膝痛、頻尿じゃあ無理じゃないすか」
「出腹とハゲは関係ないだろ。おっと、ところで捻挫したお前の腕と足は大丈夫なのか」
「まあ、スライム退治なら大丈夫っすね。スライムを倒すときにリーダーの出腹が邪魔になるかもしれないすっけど」
「だから出腹は関係ないだろ」
さて、俺たちがいつものことながら下らん会話をしつつ、邸宅の扉を叩くと中年の女性が出てきた。
この豪邸の女主人らしい。
「こんにちは、冒険者ギルドから派遣されてきました。何やら地下室にスライムが発生したそうで」
「そうなんです。退治してくれますか」
「わかりました」
さて、俺と相棒が案内される。
「ここから地下室へ下りられますわ」
「わかりました」
地下室への階段を下りていく。
しかし、途中で階段が終わっている。
「何じゃ、こりゃ。壁でふさがれているではないか」
「これはどうしたことなんすかね」
仕方が無いので、再度、一階に戻って女主人に聞いた。
「あの、地下室への階段が途中で終わっているんですけど、これはどうなってるんですか」
「ああ、忘れてました。その階段からは地下室へは下りられません。失礼しました。別の階段から下りられますので、ご案内しますね」
女主人に別の階段を案内される。
「こちらから下りてください。途中で扉がありますので、この鍵で開けてください。開けたらすぐに入って、扉を閉じてください。他にも扉がありますが、すべてこの鍵で開けられます」
「わかりました」
俺と相棒が階段を下りていくが、なんだか妙にねじ曲がった階段だ。
螺旋階段かと思ったら、まっすぐになったり。
「なんだか、変だぞ、この階段は」
「そうすね。おまけに段の高さがバラバラっすね」
そして、階段の途中に扉がある。
俺は鍵で扉を開けるが、そうするとまた階段が続いている。
「なんだろう。なんで階段の途中にこんな扉を作ったんだ。いらないだろ」
「そうっすね。おまけにすぐに閉じてくださいって、何か怯えてましたっすね、あの女性は」
「スライムが怖いのかなあ。まあ、モンスターではあるけど」
俺は言われた通り、すぐに扉を閉める。そして、また階段を下りていくとやっと地下室に辿りついた。物品がまばらに置いてある地下室。
「あまり物が置いてないな」
「うーん、そんなに使ってないんすかね」
しかし、よく見ると隅っこにスライムがけっこういるではないか。
バシッ! バシッ! バシッ!
あっさりと何匹か倒した。
「これで終了か」
「いや、他にも部屋がありまっすよ」
他の部屋に行くが扉を開けると、また扉。仕方なく開けると、また扉。もう一回開けると、やっと部屋に入った。その部屋にもスライムが発生している。
バシッ! バシッ! バシッ!
あっさりとスライムを倒す俺たち。
「でも、何だよ、この扉は。なんで三つも付けているんだ。スライムが出てこれないようにしているのか」
「うーん、何だか変っすねえ、この建物」
他にも部屋があったが似たような感じだ。
やたら扉が狭かったり、逆にデカい扉があって開けると、すごく小さい部屋だったり。
地下室なのに窓があったり。窓を開けても土の壁ではないか。
廊下も妙にクネクネと曲がっている。
「おい、工事業者が酔っぱらって建設したんじゃないのか、この邸宅は」
「うーん、前衛芸術家なんすかねえ、あの女主人。わけがわからないすね」
そんなこんなで、けっこう時間がかかってしまった。
夕方には仕事は終了。
「やれやれ。いつものことながらスライム退治はおもろーないな」
「まあ、生きていくためには仕方が無いすよ」
一応、地下室を再度調べたが、スライムがいる気配はない。
「では、一階に戻って、女主人に報告するか」
俺と相棒は、再び、あの変な階段を上り途中の扉を開けて、すぐに鍵を閉めて、一階に戻った。
女主人を探すと、豪華なソファセットで、何やらローブを着た魔法使いらしき女性と歓談している。
「えー、お話中のところすみませんが、業務は終了しました」
「ありがとうございます」
俺は女主人に鍵を渡した。
すると、ソファに座っていた女魔法使いが女主人に聞いている。
「まさか、あの扉を開けたんですか」
「ええ、庭に小さい家を今、建設中なんですけど、その家に持って行くものを探しに地下室へ行ったんですよ。そしたら、スライムがいっぱいて。だから、このお二人に退治を頼んだんです」
「うーん、それはまずいことをしましたね」
「やはり、扉を開けてはまずかったんですか」
女魔法使いと女主人がよくわからない会話をしている。
俺は女主人に言った。
「あのー、スライムが一階に上ってこないように扉を付けたんですか。一応、全部、退治したんですけど」
すると、魔法使いが俺に言った。
「いや、この家は呪われているんですよ」
「え、呪いですか」
「もともとこの土地は呪われていたんですよ。魔物の呪いですね。そのため、ここのご主人も若くして亡くなってしまった。それが地下から入って来ないようにしていたんです。あの扉もそのためのものです。地下室に下りる際に変な形をしていたと思いますが、それも魔物を封じ込めるためのものですね」
俺は相棒に小声で聞いた。
「おい、この家は魔物に呪われているようなんだが、お前はどう思う」
「うーん、そんな感じはしなかったですけどねえ」
しかし、突然、部屋のランプがいくつか消える。
と思ったら、点いたり消えたりを繰り返す。
これは魔物の出現かと剣の柄を握る俺。
そして、変な笑い声や建物がきしむ音が聞こえてきた。
「うむ、なにか知らんが異常事態だぞ」
俺は思わず剣を抜いて構える。
「魔物か何か知らんが、かかって来い!」
しかし、女魔法使いが俺をおさえる。
そして、何やら呪文を唱えた。
すると、ランプは正常に戻り、変な声やら音も消えた。
魔法使いが女主人に言った。
「これで大丈夫です。魔物は全て私が倒しました」
おお、さすが魔法使い。
あっという間に魔物を消し去ったのか。
「本当にありがとうございました」
女主人が魔法使いの女にペコペコしている。
「まあ、階段には、後、二か所くらい扉を付けたほうがいいでしょうね」
そして、その魔法使いが俺を見ながら言った。
「あなたにも魔物が憑りついてますね」
「え、本当ですか」
魔法使いがしばし目をつぶる。
「うーん、あなたの体にまとわりついてますね。あなたは、腰痛、肩こり、右膝痛、頻尿に悩まされていませんか」
初めて会ったのに、俺の病気を全部当てている。
これは本物だな。
「魔物を取り除けば、簡単に治りますよ」
「おお、是非お願いしたいのですが」
しかし、相棒がしらけた顔で言った。
「本当に魔物なんているんすかね」
すると、女魔法使いがニヤリと笑う。
「あなたは捻挫してますね。左腕と左足を」
「え、何でわかるんすか」
相棒も驚いている。
「全て魔物のせいですね」
すると、また部屋の隅っこから笑い声が聞こえてきた。
「どうやら、また魔物がやってきたようですね」
「ひい、どうにかしてください」
女魔法使いにとりすがる女主人。
「わかりました」
女魔法使いが呪文を唱えようとするが、相棒が笑い声の方へ近づいていく。
「かかって来い、魔物め。俺っちのこの正義のナイフを受けてみろ!」
「おいおい、ちょっと待て、落ち着けよ。この人にまかせろ。それともお前も俺みたいにモンスター退治の妄想に入ったのか?」
しかし、相棒はかまわず、部屋の隅っこの上の方にナイフを投げた。
「ひい!」
隅っこの壁が破れて作業服の男が飛び出してくる。
「え、どういうことだ」
相棒がしらけた顔で言った。
「詐欺ですよ、これ」
……………………………………………………
どうやら、あの女魔法使いは詐欺師。
魔物がいると言って、工事業者とつるんで、変な声を出したりランプを消したり点けたりとかいろいろと女主人を怖がらせては、改築を繰り返し、そして高額な工事代を請求して山分けしていたようだ。やたら改築したんで、階段が変な形になったり扉が多くなったりしたようだ。
女主人の旦那さんが死んだのに付け込んだようだな。
けしからん。
詐欺師のニセ女魔法使いと工事業者を村役場に連行してやった。
「しかし、お前はなんで気付いたんだ」
「そりゃ、あの女がリーダーの病気を指摘したじゃないすか」
「うむ。しかし、全部、当たっていたぞ」
「でも、一番悩んでいるリュウマチを言わなかったじゃないすか。確か、この邸宅へ入るまで道を歩いたじゃないすか。俺っちはリーダーをいつものようにからかったんすけど、その際に『その出腹でおまけにハゲ、腰痛、肩こり、右膝痛、頻尿』と言ったけど、リュウマチを言い忘れていたんすよ。それで、これは変だなあと思ったんす。後、あの時、リーダーは『捻挫したお前の腕と足は大丈夫なのか』って俺っちに言ったんすよ。でも、右か左か言わなかったっす。だから、俺っちはわざと左腕や左足をわざと右手で痛そうな感じで擦ってたんす。すると、案の定、あの女詐欺師は『あなたは捻挫してますね、左腕と左足を』って言ったんす。それで、これは詐欺だなって思ったんすよ」
「でも、あの女詐欺師とはあの時、初対面だったぞ」
「多分、家に入るまでに工事業者が俺たちの会話を聞いていたんですよ。それをあの女に教えたんすよ」
「お前、ひょっとして、かなり優秀なんじゃないか」
「大した事ないすよ。でも、あの女詐欺師はリーダーの出腹とハゲは指摘しなかったすね。遠慮したんすかねえ」
「そんなの見れば誰にもわかるだろ!」
とは言え、相棒はなかなか冴えているではないか。
俺の相棒にしておくにはもったいないのではとも思ってしまった。
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