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第56話:どうだ調子は、うーん、よくないっすね
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俺と相棒、二人組の冒険者パーティー。
普段はスライム退治専門のしょぼいパーティーだ。
相棒が右腕と右足を捻挫して、うまく動けない状態だ。
「どうだ、調子は」
「うーん、よくないっすね」
「冒険者ギルドに行ってくるが、仕事が取れるかわからん」
「この前は、取れたじゃないすか」
「あれは、たまたま他の二人と臨時にパーティーを組めたからだ。今日はどうなるかわからん」
「清掃か警備の仕事なら、出来そうっすけど」
「うむ、とにかく、ギルドに行ってくる」
あいつには、足を捻挫した時に世話になったし、今回のケガも俺に責任がある。
しかし、俺一人で行っても、あの性格の悪いギルドの主人が相手にしてくれるかどうかだな。
前回のように、他のパーティーと組めればいいのだが。
そして、冒険者ギルドに行くが、あっさりと仕事は無いと言われてしまう。
「スライム退治すらないのかよ」
「今日は無いなあ」
「おい、他のモンスター退治はないのか」
「あるけど、相棒はケガして休んでんだろ。だから、あんたに頼める仕事はないなあ」
くそー、すっかり俺のことをダメ冒険者と認定してやがる。
しかし、食費分くらいは稼ぎたい。
「なんか細かい仕事でもいいからないのかよ」
「そうだな。清掃の仕事ならあるぞ」
「ああ、もう、それでいいよ」
そんなわけで、俺は清掃の仕事を貰った。
全く、おもろーない。
しかし、背に腹は代えられない。
食費を稼がねばならん。
場所は例のドラゴンテーマパークのダンジョンの迷路だ。
今日は、イベントは休止して、中の清掃。
これくらいなら、俺一人で出来るので、相棒はそのまま宿屋で休んでもらうことにした。
そぼそぼと疑似ダンジョンの中に入って、ゴミを拾ったりする。
観光客がやたらゴミを捨てていったりしたからなあ。
全く、けしからん。
しかし、これは冒険者の仕事じゃないよなあ。
すっかり落ち込んでしまう。
このままゴミ拾いで俺の一生は終わりなのか。
やる気が出ない。
しかし、やる気はないが、それなりに完璧主義者の俺。
丹念にゴミを拾いながら迷路をウロウロする。
さて、行き止まりに来た。
本来のゴールに到着すると、宝箱が置いてあり金メダルが貰える。
鉄製で表面に金メッキしただけのメダルだけどな。
但し、なかなか表面のデザインがいいので評判がいいらしい。
しかし、俺が今いる場所は、ニセのゴール。
宝箱はモンスターだ。
もちろん作り物だがな。
宝箱の蓋を開けると牙が生えていて、迷路遊びの観光客を食べようとする。
もちろん、閉まったりはしない。
作り物とはいえ、ケガしたら危ないもんなあ。
ちなみに宝箱の中には紙製の金メダルがあって、それを貰えたりするようだが、迷路の中にけっこう捨ててあった。紙製のメダルを貰っても嬉しくないってことか。
そして、俺はその宝箱の前に立つ。
この前、宿屋の地下室でスライム退治をしていたら、この作り物宝箱モンスターに出腹が引っかかって恥をかいたことを思い出した。
思わず、剣を掴む。
本来なら、本当のダンジョンを冒険して、宝箱を見つけたりなどしているはずだったのだが。
今や、ゴミ拾いのバイトだ。
イライラしてくるぞ。
俺は宝箱の前で剣を振り回す。
「かかって来い! 宝箱モンスター!」
うむ、まだ剣の腕は鈍ってないようだ。
ブンブンと剣を振り回す俺。
すると、突然、宝箱が開いた。
そして、小柄なモンスターが現れた。
俺に襲いかかってきた。
俺は勢いあまって、モンスターを斬り倒してしまう。
「ギャア!」
モンスターを倒してしまったが、俺は焦った。
前に、宝箱に泥棒が隠れていたことがあったなあ。
そして、観光客にはモンスターのコスプレも流行っている。
おいおい、コスプレーヤーを殺してしまったのか。
これはまずいことになった。
刑務所行きだぞ。
「おい、大丈夫か」
俺は、モンスターの着ぐるみに近づいた。
しかし、着ぐるみを着た人間ではない。
これは明らかに人間ではないぞ。
緑色の鱗のなんだか気持ちの悪いモンスターだ。
しかし、こんなモンスターは見たことがない。
俺は、そのモンスターの死骸を冒険者ギルドに持って行った。
主人に聞いてみる。
「清掃していたら、こんなモンスターが宝箱に隠れていたんだが、あんたは知っているか」
主人も首を捻っている。
「俺も見たことがない。最近、変なモンスターが出現することが多くなったんだ。宝箱にいたのは、たまたまかもしれない。これも新種かもなあ。とにかく冒険者ギルド本部に報告しておくよ」
……………………………………………………
俺は宿屋に戻った。
「何だか変なモンスターが宝箱にいたんだよ」
「いったい、なんすかねえ。この前も透明なスライムとか変なのを見つけましたよねえ」
「うむ、まあ、スライム退治ばかりやっているから、他のモンスターを見ることが俺たちはあまりないからなあ。後は、ギルドにまかせたよ」
「それで、報酬は貰ったんすか」
「清掃よりは、はるかに高額の報酬を貰ったぞ」
「よかったすね。この前みたいに作り物の宝箱に出腹を挟まれて死んだら情けないっすよね」
「うるさいぞ」
まあ、俺としては久々にスライム以外のモンスターと戦ったので満足するはずなのだが。
どうも、あのモンスターは気味が悪い感じがした。
何かの天変地異の前触れであろうか。
普段はスライム退治専門のしょぼいパーティーだ。
相棒が右腕と右足を捻挫して、うまく動けない状態だ。
「どうだ、調子は」
「うーん、よくないっすね」
「冒険者ギルドに行ってくるが、仕事が取れるかわからん」
「この前は、取れたじゃないすか」
「あれは、たまたま他の二人と臨時にパーティーを組めたからだ。今日はどうなるかわからん」
「清掃か警備の仕事なら、出来そうっすけど」
「うむ、とにかく、ギルドに行ってくる」
あいつには、足を捻挫した時に世話になったし、今回のケガも俺に責任がある。
しかし、俺一人で行っても、あの性格の悪いギルドの主人が相手にしてくれるかどうかだな。
前回のように、他のパーティーと組めればいいのだが。
そして、冒険者ギルドに行くが、あっさりと仕事は無いと言われてしまう。
「スライム退治すらないのかよ」
「今日は無いなあ」
「おい、他のモンスター退治はないのか」
「あるけど、相棒はケガして休んでんだろ。だから、あんたに頼める仕事はないなあ」
くそー、すっかり俺のことをダメ冒険者と認定してやがる。
しかし、食費分くらいは稼ぎたい。
「なんか細かい仕事でもいいからないのかよ」
「そうだな。清掃の仕事ならあるぞ」
「ああ、もう、それでいいよ」
そんなわけで、俺は清掃の仕事を貰った。
全く、おもろーない。
しかし、背に腹は代えられない。
食費を稼がねばならん。
場所は例のドラゴンテーマパークのダンジョンの迷路だ。
今日は、イベントは休止して、中の清掃。
これくらいなら、俺一人で出来るので、相棒はそのまま宿屋で休んでもらうことにした。
そぼそぼと疑似ダンジョンの中に入って、ゴミを拾ったりする。
観光客がやたらゴミを捨てていったりしたからなあ。
全く、けしからん。
しかし、これは冒険者の仕事じゃないよなあ。
すっかり落ち込んでしまう。
このままゴミ拾いで俺の一生は終わりなのか。
やる気が出ない。
しかし、やる気はないが、それなりに完璧主義者の俺。
丹念にゴミを拾いながら迷路をウロウロする。
さて、行き止まりに来た。
本来のゴールに到着すると、宝箱が置いてあり金メダルが貰える。
鉄製で表面に金メッキしただけのメダルだけどな。
但し、なかなか表面のデザインがいいので評判がいいらしい。
しかし、俺が今いる場所は、ニセのゴール。
宝箱はモンスターだ。
もちろん作り物だがな。
宝箱の蓋を開けると牙が生えていて、迷路遊びの観光客を食べようとする。
もちろん、閉まったりはしない。
作り物とはいえ、ケガしたら危ないもんなあ。
ちなみに宝箱の中には紙製の金メダルがあって、それを貰えたりするようだが、迷路の中にけっこう捨ててあった。紙製のメダルを貰っても嬉しくないってことか。
そして、俺はその宝箱の前に立つ。
この前、宿屋の地下室でスライム退治をしていたら、この作り物宝箱モンスターに出腹が引っかかって恥をかいたことを思い出した。
思わず、剣を掴む。
本来なら、本当のダンジョンを冒険して、宝箱を見つけたりなどしているはずだったのだが。
今や、ゴミ拾いのバイトだ。
イライラしてくるぞ。
俺は宝箱の前で剣を振り回す。
「かかって来い! 宝箱モンスター!」
うむ、まだ剣の腕は鈍ってないようだ。
ブンブンと剣を振り回す俺。
すると、突然、宝箱が開いた。
そして、小柄なモンスターが現れた。
俺に襲いかかってきた。
俺は勢いあまって、モンスターを斬り倒してしまう。
「ギャア!」
モンスターを倒してしまったが、俺は焦った。
前に、宝箱に泥棒が隠れていたことがあったなあ。
そして、観光客にはモンスターのコスプレも流行っている。
おいおい、コスプレーヤーを殺してしまったのか。
これはまずいことになった。
刑務所行きだぞ。
「おい、大丈夫か」
俺は、モンスターの着ぐるみに近づいた。
しかし、着ぐるみを着た人間ではない。
これは明らかに人間ではないぞ。
緑色の鱗のなんだか気持ちの悪いモンスターだ。
しかし、こんなモンスターは見たことがない。
俺は、そのモンスターの死骸を冒険者ギルドに持って行った。
主人に聞いてみる。
「清掃していたら、こんなモンスターが宝箱に隠れていたんだが、あんたは知っているか」
主人も首を捻っている。
「俺も見たことがない。最近、変なモンスターが出現することが多くなったんだ。宝箱にいたのは、たまたまかもしれない。これも新種かもなあ。とにかく冒険者ギルド本部に報告しておくよ」
……………………………………………………
俺は宿屋に戻った。
「何だか変なモンスターが宝箱にいたんだよ」
「いったい、なんすかねえ。この前も透明なスライムとか変なのを見つけましたよねえ」
「うむ、まあ、スライム退治ばかりやっているから、他のモンスターを見ることが俺たちはあまりないからなあ。後は、ギルドにまかせたよ」
「それで、報酬は貰ったんすか」
「清掃よりは、はるかに高額の報酬を貰ったぞ」
「よかったすね。この前みたいに作り物の宝箱に出腹を挟まれて死んだら情けないっすよね」
「うるさいぞ」
まあ、俺としては久々にスライム以外のモンスターと戦ったので満足するはずなのだが。
どうも、あのモンスターは気味が悪い感じがした。
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