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第43話:やはり夏はこういう洞窟での仕事を受けるのがいいなあ、涼しいぞ、リーダーの出腹は暑苦しいすけどね
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もう夏も終わりか。
しかし、まだ暑いな。
そして、俺と相棒はいつものようにスライム退治だ。
今日は村の近くの山奥の洞窟。
そこまで登るのに、けっこう汗をかいた。
水筒の水をゴクゴクと飲む。
「熱中症には気をつけてくださいっすよ」
「分かってるよ。前に倒れたからな」
そして、ようやく洞窟の入口が見えてきた。
中に入ると、少し涼しい。
「うむ、やはり夏はこういう洞窟での仕事を受けるのがいいなあ。涼しいぞ」
「リーダーの出腹は暑苦しいすけどね。水の飲みすぎでタップンタップンじゃないすか」
「うるさいぞ」
さて、さっそくスライムが襲って来たが、難なく退治。
俺と相棒は洞窟の中に入って行く。
「それにしても、久々じゃないか。こういうダンジョンみたいな場所は」
「まあ、ダンジョンと言っても、一本道で仕事はスライム退治っすけどね」
「いや、スライムではなく、狂暴なモンスターは突然現れるものなのだ」
「何度かそんなこと言ってましたけど、今まで、現れたことないっすね。リーダーを嫌っているんじゃないすか」
「モンスターに嫌われる冒険者って何だよ」
さて、俺と相棒が下らない会話をしていると水が落ちる大きい音がする。
「おお、どうやら、洞窟の中に滝があるようだな。これは珍しいんじゃないか」
「そうすっね。どこにあるんでしょう」
すると洞窟の奥まで行くと小さい穴があった。
「おい、ここから滝の音がするぞ」
「ちょっと俺っちが中に入ってみますか」
小さい穴だが、痩せている相棒はすんなりと入る。
「リーダー、小さい空間があって、滝の裏側が見れますよ」
「モンスターとかはいないのか」
「いや、何もいないすね」
「よし、俺もそっちへ行くぞ」
俺も穴を通って、小さい空間に入った。
小さい穴だが、体を捻るとすんなり入れた。
周りは岩の壁だが、正面は開けていて滝が落ちているのが見える。
「うむ、これは『しばらくは滝にこもるや夏の初め』だな」
「何すか、それ。また俳句って奴すか。それ、若い人には全然受けませんよ」
「そんなことはどうでもいい。いいか、夏の初めにこの滝の洞窟にこもって、清廉な気を浴びていると、まるで修行をしているかのように身も心も引き締まるのを感じるという俳句だ。どうだ、風流だろ」
「つーか、もう夏の終わりじゃないすか」
「うるさいぞ」
そして、俺は相棒が退屈そうにしている間、滝の裏側に向かって、両腕を広げる。
「何をやってんすか」
「大自然のパワーを貰っているんだ。自然からのパワーで癒される」
「前もそんなことやってましたね。結局、滝に打たれに来た半裸の女性を見るのに一生懸命になってましたっすね、リーダーは」
「うるさいぞ、あの時の俺ではない。その証拠に何の妄想もしていないではないか」
「囚われの姫救出妄想っすね。また、この空間に姫が捕まっているとか言い出さないとは少しはリーダーも成長したんすか」
「まあ、もう飽きてきたってところもあるな」
「あれ、うざかったんで、俺っちとしては助かりますけどね。でも、また変な妄想を始めるんじゃないすか。リーダーの人生は最初から最後まで妄想で終わるんじゃないすか」
「うるさいぞ。とにかく、今、俺はすごく清新な気分なのだ。邪念が消えていく」
「リーダーから邪念を取ったら何も残らないんじゃないすか」
「うるさいぞ」
しかし、目を瞑って、ただ滝が落ちる音を聞いていると本当に癒されるなあ。
「俺の下らない人生の汚れを落としてくれているようだ」
「リーダーの人生は下らないことばかりだったようすけど」
「うるさいぞ」
まあ、確かにしょぼい人生だった。
いや、まだ諦めないぞ、俺は。
「もう、いいでしょう。スライム退治も終わったし帰りましょうか」
「うむ、帰るとするか」
相棒はさっと小さい穴を通り抜ける。
そして、俺も穴に入ったのだが。
「ウォ!」
「どうしたんすか」
「腹がはさまった。ううむ、身動きが取れない」
「入る時はすんなり入って来れたじゃないすか」
「そうなんだが、なぜか出られないぞ」
「ちょっと、一旦、戻れませんか」
俺はどうにか体をひねって、元の空間に戻る。
相棒が小さい穴の側面を調べている。
「うーん、壁が斜めになってますね。入る時は簡単すけど、出るのは大変。かご漁にかかった魚みたいすね、リーダーは」
「おい、魚と一緒にするなよ」
「とにかく、その出腹を引っ込めたらどうすか」
俺はなんとか腹を引っ込めて再度挑戦するが、やはり引っかかってしまう。
再び、元に戻った。
「おい、どうすればいいんだ」
「腹筋を千回すれば痩せるんじゃないすか」
「千回も出来るかよ」
「だいたい、さっき身も心も引き締まるとか言ってたじゃないすか。全然、引き締まってないじゃないすか」
「そんなに一瞬にして引き締まるわけないだろ」
「いっそのこと、ここで、一週間ほど修行したらどうすか。幸い、滝があるので水には困らないし。絶食すれば出られますよ。じゃあ、俺っちは宿で待ってますので」
「おい、見捨てるのかよ」
「冗談すよ。いや、いっそ滝に飛び込んだらどうすか。一気に山の麓まで下りられるんじゃないすか」
「アホか。滝つぼにはまって死ぬだろが」
「だから、冗談すよ。ちょっと待っててください」
相棒がどっかへ行ってしまう。
見捨てられたのか。
いや、あいつはけっこういい奴だからそんなことはないだろう。
しばらくすると、相棒がスライムの死骸を持ってきた。
「それで何をする気なんだ」
「いや、スライムってヌメヌメしてるんで、うまく滑って出られるんじゃないかと思ったんす」
どうだろう。
まあ、試してみるか。
相棒がスライムの死骸を小さい穴に置いた。
俺は再び、脱出を試みる。
「ウォ!」
「どうしたんすか」
「だめだ、やはり引っかかってしまう」
「うーん、だめですか。また戻ってくれませんか。こうなったら壁を削るしかないすね」
しかし、今度は前にも後ろにも行けなくなった。
「おーい、助けてくれ」
「もう、だらしがないすねえ」
相棒が俺の手を引っ張る。
しかし、やはり出られない。
穴にはまったまま、俺は頭と腕だけを穴から出してへばってしまう。
「やれやれ。こんな穴にはまって俺の人生は終わるのか」
「ちょっと元気を出して下さいよ。お! あっちに裸の若い女性がいまっすよ」
「なに! どこだ、どこだ!」
思わず、そっちのほうへ振り向くと、引っかかっていた出腹がうまく穴をすり抜けた。
「ああ、出られた」
「よかったすね」
「で、裸の若い女性はどこだ」
「こんな洞窟に裸の若い女性がいるわけないでしょ! 以前にもそんなことがあったじゃないすか。で、ちょっと試してみたんすよ。さっき入る時のリーダーは少し体を捻ったんで、出る時も体を捻れば出られるんじゃないかと思ったんす」
「お前、頭がいいな」
「つーか、全然、邪念が抜けてないじゃないすか」
「うーん、面目ない」
「冒険者としての気構えが無いすね」
「うむ、そうかもしれん」
すっかり、相棒に説教を受けてしまう俺であった。
しかし、まだ暑いな。
そして、俺と相棒はいつものようにスライム退治だ。
今日は村の近くの山奥の洞窟。
そこまで登るのに、けっこう汗をかいた。
水筒の水をゴクゴクと飲む。
「熱中症には気をつけてくださいっすよ」
「分かってるよ。前に倒れたからな」
そして、ようやく洞窟の入口が見えてきた。
中に入ると、少し涼しい。
「うむ、やはり夏はこういう洞窟での仕事を受けるのがいいなあ。涼しいぞ」
「リーダーの出腹は暑苦しいすけどね。水の飲みすぎでタップンタップンじゃないすか」
「うるさいぞ」
さて、さっそくスライムが襲って来たが、難なく退治。
俺と相棒は洞窟の中に入って行く。
「それにしても、久々じゃないか。こういうダンジョンみたいな場所は」
「まあ、ダンジョンと言っても、一本道で仕事はスライム退治っすけどね」
「いや、スライムではなく、狂暴なモンスターは突然現れるものなのだ」
「何度かそんなこと言ってましたけど、今まで、現れたことないっすね。リーダーを嫌っているんじゃないすか」
「モンスターに嫌われる冒険者って何だよ」
さて、俺と相棒が下らない会話をしていると水が落ちる大きい音がする。
「おお、どうやら、洞窟の中に滝があるようだな。これは珍しいんじゃないか」
「そうすっね。どこにあるんでしょう」
すると洞窟の奥まで行くと小さい穴があった。
「おい、ここから滝の音がするぞ」
「ちょっと俺っちが中に入ってみますか」
小さい穴だが、痩せている相棒はすんなりと入る。
「リーダー、小さい空間があって、滝の裏側が見れますよ」
「モンスターとかはいないのか」
「いや、何もいないすね」
「よし、俺もそっちへ行くぞ」
俺も穴を通って、小さい空間に入った。
小さい穴だが、体を捻るとすんなり入れた。
周りは岩の壁だが、正面は開けていて滝が落ちているのが見える。
「うむ、これは『しばらくは滝にこもるや夏の初め』だな」
「何すか、それ。また俳句って奴すか。それ、若い人には全然受けませんよ」
「そんなことはどうでもいい。いいか、夏の初めにこの滝の洞窟にこもって、清廉な気を浴びていると、まるで修行をしているかのように身も心も引き締まるのを感じるという俳句だ。どうだ、風流だろ」
「つーか、もう夏の終わりじゃないすか」
「うるさいぞ」
そして、俺は相棒が退屈そうにしている間、滝の裏側に向かって、両腕を広げる。
「何をやってんすか」
「大自然のパワーを貰っているんだ。自然からのパワーで癒される」
「前もそんなことやってましたね。結局、滝に打たれに来た半裸の女性を見るのに一生懸命になってましたっすね、リーダーは」
「うるさいぞ、あの時の俺ではない。その証拠に何の妄想もしていないではないか」
「囚われの姫救出妄想っすね。また、この空間に姫が捕まっているとか言い出さないとは少しはリーダーも成長したんすか」
「まあ、もう飽きてきたってところもあるな」
「あれ、うざかったんで、俺っちとしては助かりますけどね。でも、また変な妄想を始めるんじゃないすか。リーダーの人生は最初から最後まで妄想で終わるんじゃないすか」
「うるさいぞ。とにかく、今、俺はすごく清新な気分なのだ。邪念が消えていく」
「リーダーから邪念を取ったら何も残らないんじゃないすか」
「うるさいぞ」
しかし、目を瞑って、ただ滝が落ちる音を聞いていると本当に癒されるなあ。
「俺の下らない人生の汚れを落としてくれているようだ」
「リーダーの人生は下らないことばかりだったようすけど」
「うるさいぞ」
まあ、確かにしょぼい人生だった。
いや、まだ諦めないぞ、俺は。
「もう、いいでしょう。スライム退治も終わったし帰りましょうか」
「うむ、帰るとするか」
相棒はさっと小さい穴を通り抜ける。
そして、俺も穴に入ったのだが。
「ウォ!」
「どうしたんすか」
「腹がはさまった。ううむ、身動きが取れない」
「入る時はすんなり入って来れたじゃないすか」
「そうなんだが、なぜか出られないぞ」
「ちょっと、一旦、戻れませんか」
俺はどうにか体をひねって、元の空間に戻る。
相棒が小さい穴の側面を調べている。
「うーん、壁が斜めになってますね。入る時は簡単すけど、出るのは大変。かご漁にかかった魚みたいすね、リーダーは」
「おい、魚と一緒にするなよ」
「とにかく、その出腹を引っ込めたらどうすか」
俺はなんとか腹を引っ込めて再度挑戦するが、やはり引っかかってしまう。
再び、元に戻った。
「おい、どうすればいいんだ」
「腹筋を千回すれば痩せるんじゃないすか」
「千回も出来るかよ」
「だいたい、さっき身も心も引き締まるとか言ってたじゃないすか。全然、引き締まってないじゃないすか」
「そんなに一瞬にして引き締まるわけないだろ」
「いっそのこと、ここで、一週間ほど修行したらどうすか。幸い、滝があるので水には困らないし。絶食すれば出られますよ。じゃあ、俺っちは宿で待ってますので」
「おい、見捨てるのかよ」
「冗談すよ。いや、いっそ滝に飛び込んだらどうすか。一気に山の麓まで下りられるんじゃないすか」
「アホか。滝つぼにはまって死ぬだろが」
「だから、冗談すよ。ちょっと待っててください」
相棒がどっかへ行ってしまう。
見捨てられたのか。
いや、あいつはけっこういい奴だからそんなことはないだろう。
しばらくすると、相棒がスライムの死骸を持ってきた。
「それで何をする気なんだ」
「いや、スライムってヌメヌメしてるんで、うまく滑って出られるんじゃないかと思ったんす」
どうだろう。
まあ、試してみるか。
相棒がスライムの死骸を小さい穴に置いた。
俺は再び、脱出を試みる。
「ウォ!」
「どうしたんすか」
「だめだ、やはり引っかかってしまう」
「うーん、だめですか。また戻ってくれませんか。こうなったら壁を削るしかないすね」
しかし、今度は前にも後ろにも行けなくなった。
「おーい、助けてくれ」
「もう、だらしがないすねえ」
相棒が俺の手を引っ張る。
しかし、やはり出られない。
穴にはまったまま、俺は頭と腕だけを穴から出してへばってしまう。
「やれやれ。こんな穴にはまって俺の人生は終わるのか」
「ちょっと元気を出して下さいよ。お! あっちに裸の若い女性がいまっすよ」
「なに! どこだ、どこだ!」
思わず、そっちのほうへ振り向くと、引っかかっていた出腹がうまく穴をすり抜けた。
「ああ、出られた」
「よかったすね」
「で、裸の若い女性はどこだ」
「こんな洞窟に裸の若い女性がいるわけないでしょ! 以前にもそんなことがあったじゃないすか。で、ちょっと試してみたんすよ。さっき入る時のリーダーは少し体を捻ったんで、出る時も体を捻れば出られるんじゃないかと思ったんす」
「お前、頭がいいな」
「つーか、全然、邪念が抜けてないじゃないすか」
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