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第35話:こんなドラゴン岩があるなんて知らなかったなあ、単なる岩ですからねえ
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俺と相棒、二人組の冒険者パーティー。
普段はスライム退治専門のしょぼいパーティーだ。
そして、今日もスライム退治。
つまらん。
さて、場所は村のすぐ近くの岩石がいくつか立っている場所だ。
「おい、こんな場所、村の近くにあったっけ」
「俺っちも知らなかったっす」
大きな岩があったのだが、その岩が見ようによっては、ドラゴンのようなモンスターの顔のようにも見える。
「何だか、この岩がドラゴンに似ているので、村が観光スポットにしようとしているって聞いたっす」
「ふーん、今、ドラゴンテーマパークを準備中なんで、都合がいいな。これは貴重な物なんだろうな。今まで、こんなドラゴン岩があるなんて知らなかったなあ」
「まあ、単なる岩ですからねえ。自然に出来たんすかねえ」
さて、その岩周辺のスライム退治。
そぼそぼとスライムを退治して回る。
お、見つけた。
バシッ!
何匹かのスライムを倒す。
「おっと」
スライムがドラゴン岩の方に隠れようとする。
危うく、岩に傷つけるとこだった。
「おい、お前もこの貴重な遺跡か何か知らんが、ドラゴン岩にキズをつけないよう気をつけろよ」
「うぃっす」
さて、あっさりと仕事は終わった。
しかし、スライムはあまりいなかった。
これでは、大して報酬はもらえないだろう。
「今日はせっかく腰の調子もいいのに。つまらん。他にモンスターはいないのか」
「もともとスライムくらいしかいなかったみたいっすよ、この辺りは」
うーん、どうも面白くない。
そして、俺の目の前にはドラゴンみたいな岩。
「よし、かかって来い、ドラゴン!」
俺はカッコよく剣を振り回す。
「ちょっと、また妄想すか。相手は岩っすよ」
「わかってるよ。たまには剣を振り回さないと腕が鈍る」
「どうせ、リーダーの相手は、もう死ぬまでスライムだけなんだから、鈍ってもかまわないんじゃないすか」
「うるさいぞ。いついかなる時でも、どんなモンスターが現れるかもしれない。その時のために常に鍛錬が必要だ」
「常に鍛錬が必要って言ってるわりには、その出腹、何とかならんすかね」
「うるさいぞ」
その後も、俺はカッコよく剣を振り回す。
相棒はすっかり呆れている。
「ちょっと、いい加減にしてくださいっすよ。その岩をキズつけたら大変すよ」
「大丈夫だって」
しばらく剣を振り回すと、俺は満足した。
うむ、まだ剣も使える。
腕はちゃんと動くぞ。
いつかは岩のドラゴンではなく、本物のドラゴンを相手にしてやる。
そして、俺はカッコよく剣を鞘に戻す。
すると、腰に衝撃が走った。
「ウォ!」
「どうしたんすか」
「腰が痛い!」
「またぎっくり腰すかねえ。おっさんが張り切るとこれですよ」
「うるさいぞ」
俺は思わず、目の前のドラゴン岩に手を付いた。
すると、そのドラゴン岩の頭の部分が崩れた。
「やばい、壊しちゃったよ」
「うーん、これは弁償しないといかんすねえ」
「おいおい、これ貴重なものなんだろう。一生かかっても弁償出来ないんじゃないか」
「これは困りましたね。誰も見てないから自然に落ちたことにしますか」
俺は悩む。
いや、たとえ、スライムばっかり相手にしていると言えども、俺にだって冒険者としての矜持があるんだ。
「いや、村役場の役人に言って、正直に報告しよう」
「えらいっすね。さすがリーダー。でも、その正直さが、今のスライム退治ばっかりすることになったんじゃないすか。冒険者なんてヤクザな商売っすよ」
「まあ、こすっからい奴もいるがな。しかし、俺はそう言うのは嫌なんだな。多額の借金を背負うかもしれんが、堂々と本物のドラゴンを倒し、姫を救出すれば、その報酬で弁償出来るではないか」
「なんだ、また妄想すか。付き合いきれないっすね」
「うるさいぞ」
俺と相棒がいつものように下らん会話をしていると、村役場の人たちがやって来た。
「スライム退治、ご苦労様」
「いや、それがこのドラゴン岩にうっかり手をついたら、崩れちゃったんですよ。どうしましょうか」
俺が恐縮気味に言うと、村役場の人たちは全然気にしてないようだ。
ドラゴン岩の頭の部分を何人かで持ち上げるとなんだか糊みたいなものでくっ付けている。
「え、そんなんでいいんすか」
相棒がびっくりしている。
すると、村役場の人が小声で教えてくれた。
「実はこの岩、最近、作ったんですよ。ドラゴンテーマパークに合わせて、ドラゴンみたいに適当に削った岩を置いただけなんで。貴重な物でもないし、いずれは撤去する予定です」
何だよ、びっくりさせやがって。
道理で手を付いただけで壊れたわけだ。
「まあ、そんなわけで、このことはドラゴンテーマパークが終わるまでは内緒にしておいてください」
「わかりました」
俺と相棒は宿屋に向かって帰ることにした。
「しかし、村おこしのためとは言え、でっち上げまでして、観光客を呼ぼうなんてせこいな」
「世の中、そんなもんすよ。せこいすよ」
世の中、そんなものか。
けど、俺の目標である、ドラゴン退治。そして、お姫様救出。
それはせこくもないぞ、いつかは実現してやるぞ。
そう思いながら、冒険者ギルドでせこい報酬をもらう俺であった。
普段はスライム退治専門のしょぼいパーティーだ。
そして、今日もスライム退治。
つまらん。
さて、場所は村のすぐ近くの岩石がいくつか立っている場所だ。
「おい、こんな場所、村の近くにあったっけ」
「俺っちも知らなかったっす」
大きな岩があったのだが、その岩が見ようによっては、ドラゴンのようなモンスターの顔のようにも見える。
「何だか、この岩がドラゴンに似ているので、村が観光スポットにしようとしているって聞いたっす」
「ふーん、今、ドラゴンテーマパークを準備中なんで、都合がいいな。これは貴重な物なんだろうな。今まで、こんなドラゴン岩があるなんて知らなかったなあ」
「まあ、単なる岩ですからねえ。自然に出来たんすかねえ」
さて、その岩周辺のスライム退治。
そぼそぼとスライムを退治して回る。
お、見つけた。
バシッ!
何匹かのスライムを倒す。
「おっと」
スライムがドラゴン岩の方に隠れようとする。
危うく、岩に傷つけるとこだった。
「おい、お前もこの貴重な遺跡か何か知らんが、ドラゴン岩にキズをつけないよう気をつけろよ」
「うぃっす」
さて、あっさりと仕事は終わった。
しかし、スライムはあまりいなかった。
これでは、大して報酬はもらえないだろう。
「今日はせっかく腰の調子もいいのに。つまらん。他にモンスターはいないのか」
「もともとスライムくらいしかいなかったみたいっすよ、この辺りは」
うーん、どうも面白くない。
そして、俺の目の前にはドラゴンみたいな岩。
「よし、かかって来い、ドラゴン!」
俺はカッコよく剣を振り回す。
「ちょっと、また妄想すか。相手は岩っすよ」
「わかってるよ。たまには剣を振り回さないと腕が鈍る」
「どうせ、リーダーの相手は、もう死ぬまでスライムだけなんだから、鈍ってもかまわないんじゃないすか」
「うるさいぞ。いついかなる時でも、どんなモンスターが現れるかもしれない。その時のために常に鍛錬が必要だ」
「常に鍛錬が必要って言ってるわりには、その出腹、何とかならんすかね」
「うるさいぞ」
その後も、俺はカッコよく剣を振り回す。
相棒はすっかり呆れている。
「ちょっと、いい加減にしてくださいっすよ。その岩をキズつけたら大変すよ」
「大丈夫だって」
しばらく剣を振り回すと、俺は満足した。
うむ、まだ剣も使える。
腕はちゃんと動くぞ。
いつかは岩のドラゴンではなく、本物のドラゴンを相手にしてやる。
そして、俺はカッコよく剣を鞘に戻す。
すると、腰に衝撃が走った。
「ウォ!」
「どうしたんすか」
「腰が痛い!」
「またぎっくり腰すかねえ。おっさんが張り切るとこれですよ」
「うるさいぞ」
俺は思わず、目の前のドラゴン岩に手を付いた。
すると、そのドラゴン岩の頭の部分が崩れた。
「やばい、壊しちゃったよ」
「うーん、これは弁償しないといかんすねえ」
「おいおい、これ貴重なものなんだろう。一生かかっても弁償出来ないんじゃないか」
「これは困りましたね。誰も見てないから自然に落ちたことにしますか」
俺は悩む。
いや、たとえ、スライムばっかり相手にしていると言えども、俺にだって冒険者としての矜持があるんだ。
「いや、村役場の役人に言って、正直に報告しよう」
「えらいっすね。さすがリーダー。でも、その正直さが、今のスライム退治ばっかりすることになったんじゃないすか。冒険者なんてヤクザな商売っすよ」
「まあ、こすっからい奴もいるがな。しかし、俺はそう言うのは嫌なんだな。多額の借金を背負うかもしれんが、堂々と本物のドラゴンを倒し、姫を救出すれば、その報酬で弁償出来るではないか」
「なんだ、また妄想すか。付き合いきれないっすね」
「うるさいぞ」
俺と相棒がいつものように下らん会話をしていると、村役場の人たちがやって来た。
「スライム退治、ご苦労様」
「いや、それがこのドラゴン岩にうっかり手をついたら、崩れちゃったんですよ。どうしましょうか」
俺が恐縮気味に言うと、村役場の人たちは全然気にしてないようだ。
ドラゴン岩の頭の部分を何人かで持ち上げるとなんだか糊みたいなものでくっ付けている。
「え、そんなんでいいんすか」
相棒がびっくりしている。
すると、村役場の人が小声で教えてくれた。
「実はこの岩、最近、作ったんですよ。ドラゴンテーマパークに合わせて、ドラゴンみたいに適当に削った岩を置いただけなんで。貴重な物でもないし、いずれは撤去する予定です」
何だよ、びっくりさせやがって。
道理で手を付いただけで壊れたわけだ。
「まあ、そんなわけで、このことはドラゴンテーマパークが終わるまでは内緒にしておいてください」
「わかりました」
俺と相棒は宿屋に向かって帰ることにした。
「しかし、村おこしのためとは言え、でっち上げまでして、観光客を呼ぼうなんてせこいな」
「世の中、そんなもんすよ。せこいすよ」
世の中、そんなものか。
けど、俺の目標である、ドラゴン退治。そして、お姫様救出。
それはせこくもないぞ、いつかは実現してやるぞ。
そう思いながら、冒険者ギルドでせこい報酬をもらう俺であった。
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