スライム退治専門のさえないおっさんの冒険

守 秀斗

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第32話:女性たちが服を脱ぎ始めましたっすよ、何だと!

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 俺と相棒、二人組の冒険者パーティー。
 普段はスライム退治専門のしょぼいパーティーだ。

 さて、いつもの通り、仕事はスライム退治。
 場所は村から少し離れた山の中。
 徒歩で行ける距離だ。

 とは言え、山の坂道を登っていると疲れてくる。

「おい、少し休まないか。脚が疲れたし、腰も痛い」
「だらしがないっすね。まだ登り出してから三分しか経ってませんよ。冒険者としての気構えが無いっすね、リーダーは」
「うるさいぞ」

「とにかく、もたもたしていると日が暮れちゃいますよ。がんばって下さいよ、リーダー」
「そうだな、出腹も多少、引っ込むかもしれないしな」

 俺は何とか目的地へ到着。
 ああ、疲れた。

 もう年だな。
 若い頃なんて、こんな山の坂道、あっという間に駆け登ったものなんだがなあ。

 さて、今日のスライム退治の場所は川の周辺と事前に聞いていたが、なかなか風光明媚な場所だ。
 目の前に大きな滝があるぞ。
 なかなか壮大な光景だ。
 
 その滝の水が落ちている光景を見ていると、きれいで日頃のストレスが消えていくようだ。
 なんだか体の調子も良くなっていく気分になる。

 俺は思わず、目を瞑って両手を広げる。
 
「何やってんすか、リーダー」
「いや、滝からパワーを貰っているんだ。自然からのパワーで癒される」

「ハゲデブ腰痛持ちのおっさんには似合わない光景っすね」
「うるさいぞ。今、俺は非常に清新な気分につつまれているのだ。邪念が消えていくようだ」

 そんなことをしていたら、なにやら五、六人の人々がやって来たようだ。
 登山者かな。

 しかし、俺は目を瞑ったままだ。
 今、俺は明鏡止水とも言える心境だ。

 そう、いつもの下らない考えなんぞ全く頭に浮かんでこない。
 自然の癒し効果は素晴らしいものだな。
 
「リーダー、若い女性たちがやってきましたよ」
「あっそう」

「あれ、いつもは美少女だ、囚われの姫が逃れてきたんだとか妄想にふけるくせに」
「そんなことはどうでもいい。もう、俺は大人なのだ。それに女にも興味はない」

 再び滝からのパワーを全身に受ける俺。
 うーん、気分がいい。
 いやあ、まじ腰やら肩の痛み、脚の疲れが消えていく。

「おい、邪念が消えると体の痛みも消えていくぞ。お前も滝のパワーを受けてみたらどうだ」
「俺っちはいいっすよ、まだおっさんじゃないし。そんなことより、あの女性たちが服を脱ぎ始めましたっすよ」
「何だと!」

 滝のパワーも吹き飛んで、そっちを見てしまう。
 おお、若い美人ばかりだ。

 その女性たちが白い薄衣一枚だけになって滝の方へ向かう。

「あの女性たちは何をするのだろう」
「滝にでも打たれるつもりじゃないすか」

「なんでそんなことするんだ」
「さあ、何かの宗教団体じゃないすか。修行ですかね」

 女性たちが滝に打たれているのだが、着ているのは白くて薄い一枚の衣だけだ。
 びしょ濡れになって、下の肌が丸見え。
 うーん、全裸より色っぽいぞ。

「ちょっと、リーダー、じろじろ見たら失礼っすよ」
「そんなこと言ったって見ちゃうよ、男だったら」

「清新な気分につつまれているんじゃなかったんすか。邪念が消えて行ったんじゃなかったんすか」
「うるさいぞ。お前こそ、見てるじゃないかって、あれ、お前、全然見てないな」
「興味ないっすね」

 そう言えば、相棒は女に興味はなかったな。

「とにかく、スライム退治を始めましょうよ」
「うむ、わかった」

 相棒に促されて、そこらのスライム退治を始めるが、どうもあの薄衣の女性たちが気になってしまう。ちっともはかどらないなあ。でも、見ちゃうよね。

 つい、チラ見してしまう。
 すると、腰に痛みが走った。

「ウォ!」
「どうしたんすか」

「いや、腰が痛くて」
「どうやら邪念が戻ってきたようっすね。だいたい、邪念の固まりのようなリーダーには滝のパワーも効果無しっすね」
「うるさいぞ」

 俺と相棒が下らない会話をしていると、滝に打たれていた一人の女性がこちらにやってくる。
 目の前にはびしょ濡れで薄着の美女。
 乳房が透けて見えてるぞ。

 思わず、ドキドキしてしまう俺。

「あの、冒険者の方ですか。腰が痛いとか、今、言ってませんでしたか」
「はあ、そうですが。腰痛持ちなんで」
「どうですか、私たちの団体に入りませんか。修行をすれば、腰痛その他、どんな病気もすぐに治りますよ」

 にこやかに笑う美女。
 しかし、どうも不自然な笑いだなあ。

 そして、相棒が俺にささやく。

「これ宗教の勧誘っすよ。下手に入ったら身ぐるみはがされちゃいますよ」
「はがされるほどの金はないがな」

 ああ、こんな美女と一緒に滝に打たれたり、修行するのもいいのかもしれない。
 いや、違うぞ。
 俺は腐っても冒険者だ。

「いや、すみません。私はドラゴンに親友を殺されました。そのドラゴンへの復讐が終えるまで、冒険者をやめる気はありません」
「そうですか、残念ですね」

 その女性はまた魅惑の微笑みとそのきれいな体を俺に見せつけながら、他の女性とともに去って行った。

「いやあ、よく我慢しましたね、リーダー。てっきりあの女性陣の後に付いて行くと思ったすけど」
「馬鹿にするな。俺にも冒険者としての意地があるんだ。妙な団体には惑わされん」

「その割には若い美人たちの半裸姿をチラチラ見てましたっすね」
「うるさいぞ。見るだけならいいだろ」

「見るだけでも犯罪っすよ。それからドラゴンに親友を殺されたって本当すか」
「ウソに決まってるだろ。だいたい、ドラゴンと戦ったこともないのに。断るために理由をつけただけだ」

「けど、ドラゴンへの復讐なんて、女性の前ではいい格好をしたいんすね。やっぱり邪念に取り付かれてますね、リーダーは。つーか、囚われの姫やらの妄想にまたひとつアイデアが加わりましたっすね」
「うるさいぞ」

 とは言え、つまらないスライム退治にやって来たのに、妙齢の女性の色っぽい姿を見れて何だか得した気分にもなってしまう俺であった。
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