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第13話:スライムが一匹も現れない、困ったなあ、困ったすね
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俺と相棒、二人組の冒険者パーティー。
普段はスライム退治専門のしょぼいパーティーだ。
そして、今日も相変わらずスライム退治。
場所は宿屋のある村から少し離れた森。
ちっとも冒険って感じではない。
害虫駆除業者みたいだ。
しかし、困ったことになった。
全く、スライムが出現しない。
「スライムが一匹も現れない、困ったなあ」
「困ったすね」
「一匹でも退治しないと、報酬無しで夕食抜きだぞ」
「それはいやっすねえ」
俺と相棒はウロウロと森の中を探索する。
お、やっと見つけた。
と思ったら、スライムの死骸だった。
何匹もいる。
すると、何人かの冒険服を着た連中がいた。
どうやら、俺たちと同業の冒険者の連中らしい。
四人組でみな若い。
「こんにちは」
リーダーらしき青年が挨拶してきた。
「もしかして、あんたらがこの森のスライムを退治したのか」
「そうですね。朝早くに来て、あらかたやっつけました」
何ともうここにいるスライムは全部退治されてしまったのか。
俺は相棒に文句を言った。
「だいたい、お前が寝坊するから先に仕事を取られてしまったじゃないか」
「いやあ、すんませんっす。でも、俺っちが走っていきましょうって言ったのに、リーダーがのそのそと歩いているから遅れちゃったんすよ。だいたい、その出腹何とかなりませんかね。出腹が重くて走れなかったんじゃないんすか」
「うるさいぞ」
ううむ、俺たち以外にスライム退治なんぞ頼まれないだろうと油断したのが間違いだった。
若い冒険者の連中はもう帰るらしい。
「じゃあ、僕たちはこれで帰ります」
「そうか、ご苦労さん」
意気揚々と帰って行く若者たち。
俺もあの位の年の頃は何事にも気合をいれていたものだ。
いつかはドラゴンを退治してやろうと。
しかし、結局、スライム退治で人生が終わりそうだ。
悔しいなあ。
いったいどこで間違ったのか。
「俺っちらも帰りますか」
相棒に言われたが、どうもモヤモヤした気分になる。
「いや、スライムがまだ残っているかもしれん」
「あの若い連中が全部倒したんじゃないすか」
「冒険者は最後の最後まで諦めるもんじゃないぞ」
「人生、諦め時が肝心だって言葉もあるっすよ」
「そんな事言ってるからダメなんだ。それに、残り物には福があるというじゃないか」
「リーダーの人生は残り物ばかりじゃないすか。おまけに不幸続きじゃないすか」
「うるさいぞ」
気の乗らない相棒を説得して、しばらく森の中を再び探索する。
しかし、全く、スライムの影も形も無い。
日も落ちてきた。
気が付くと、相棒の奴、立ったまま寝てやがる。
「おい、さぼるなよ」
「……休むも仕事っすよ」
「おいおい、ふざけんなよ」
「そんなこと言ったって、もうモンスターはいませんよ。眠くて仕方がないっす」
「だから、お前のそういうところがダメなんだ。冒険者としての気構えが足りないぞ」
「また気構えっすか。でも、リーダーには本当に冒険者としての気構えがあったんすか」
「うるさいぞ」
確かに全然無かったなあ。
そのあげくスライム退治で糊口をしのぐ始末だ。
ああ、もうほとんど真っ暗だ。
「帰りましょうよ」
「そうするか」
やれやれ。
すっかり機嫌が悪くなる俺。
けど、仕方が無い。
剣を鞘におさめる。
でも、やっぱりイライラするなあ。
鞘に入った剣を振り上げてそこらの草を払った。
すると悲鳴があがった。
「お、なんだ」
「野ウサギじゃないすか」
しかし、よく見ると変なモンスターが倒れている。
全身が金色で、目てくれは小さいドラゴンだ。
大きさは俺の頭くらいしかないが。
「おい、これは珍しいモンスターではないか」
「うーん、あまり見たことがないっすねえ」
俺はモンスター図鑑を思い出してみる。
そう、幻と言われているモンスターのゴールドドラゴンにそっくりだ。
「おい、やったぞ! ついにドラゴンを倒したぞ! おまけに生け捕りだぞ、すごいぞ!」
興奮している俺をつまんなそうな顔で見る相棒。
「何言ってんすか、こんな小さいドラゴンいませんよ」
「いや、ゴールドドラゴンは生態がよくわかってない。これはまだ小さい頃のゴールドドラゴンではないのか。そう、このドラゴンの首に珍しい宝石が付いていて、そして、そのことがきっかけで大冒険が始まるのだ……って、何も付いてないな」
「リーダー、また妄想してますね。ドラゴンの子供にしても、ちょっと小さ過ぎっすよ。だいたい、なんでそんな珍しいモンスターがこんなド田舎の村からちょっと離れた場所に出現するんすか。もっとどっかものすごい山奥のカッコいい神殿とかに現れませんかね」
「うるさいぞ。とにかく珍しいモンスターを捕まえたぞ。冒険者ギルドに報告だ」
俺と相棒は村に戻った。
そして、意気揚々とモンスターを冒険者ギルドの主人に見せる。
「これは珍しいモンスターじゃないのか。もしかしてドラゴンの一種ではないか?」
すると、主人は、大人しそうにカウンターの上に座っているモンスターを見てしらけた顔をした。
「ああ、これはゴールドドラゴンモドキっていう奴だ。外見はゴールドドラゴンに似ているがスライムより全然弱いモンスターだな。ペットで飼ってる人もいるくらいだ。ここら辺ではそんなに珍しくないぞ。ちなみにゴールドドラゴンってのは山のように大きい奴だ」
主人の言葉にがっくりとする俺。
結局、報酬はスライム一匹分。
「本当の報酬はスライム一匹の半分くらいなんだが、まあ、あんたらも苦労してそうなんで、おまけだ」
すごすごと冒険者ギルドを相棒と出る俺たち。
「だから言ったじゃないすか。ドラゴンを捕まえたとか騒いじゃって。他の冒険者たちがニヤニヤ笑ってましたっすよ」
「うーむ、面目ない」
結局、俺はドラゴンもどきを倒すことしかできない冒険者もどきなのだろうか。
いや、いつかはドラゴンを倒してやる。
そう思いながら、わずかな報酬でしょぼい夕食を相棒と食べに行く俺。
しかし、こんな人生で本当にいいのだろうか。
ああ、一度でいいから大冒険がしたい!
普段はスライム退治専門のしょぼいパーティーだ。
そして、今日も相変わらずスライム退治。
場所は宿屋のある村から少し離れた森。
ちっとも冒険って感じではない。
害虫駆除業者みたいだ。
しかし、困ったことになった。
全く、スライムが出現しない。
「スライムが一匹も現れない、困ったなあ」
「困ったすね」
「一匹でも退治しないと、報酬無しで夕食抜きだぞ」
「それはいやっすねえ」
俺と相棒はウロウロと森の中を探索する。
お、やっと見つけた。
と思ったら、スライムの死骸だった。
何匹もいる。
すると、何人かの冒険服を着た連中がいた。
どうやら、俺たちと同業の冒険者の連中らしい。
四人組でみな若い。
「こんにちは」
リーダーらしき青年が挨拶してきた。
「もしかして、あんたらがこの森のスライムを退治したのか」
「そうですね。朝早くに来て、あらかたやっつけました」
何ともうここにいるスライムは全部退治されてしまったのか。
俺は相棒に文句を言った。
「だいたい、お前が寝坊するから先に仕事を取られてしまったじゃないか」
「いやあ、すんませんっす。でも、俺っちが走っていきましょうって言ったのに、リーダーがのそのそと歩いているから遅れちゃったんすよ。だいたい、その出腹何とかなりませんかね。出腹が重くて走れなかったんじゃないんすか」
「うるさいぞ」
ううむ、俺たち以外にスライム退治なんぞ頼まれないだろうと油断したのが間違いだった。
若い冒険者の連中はもう帰るらしい。
「じゃあ、僕たちはこれで帰ります」
「そうか、ご苦労さん」
意気揚々と帰って行く若者たち。
俺もあの位の年の頃は何事にも気合をいれていたものだ。
いつかはドラゴンを退治してやろうと。
しかし、結局、スライム退治で人生が終わりそうだ。
悔しいなあ。
いったいどこで間違ったのか。
「俺っちらも帰りますか」
相棒に言われたが、どうもモヤモヤした気分になる。
「いや、スライムがまだ残っているかもしれん」
「あの若い連中が全部倒したんじゃないすか」
「冒険者は最後の最後まで諦めるもんじゃないぞ」
「人生、諦め時が肝心だって言葉もあるっすよ」
「そんな事言ってるからダメなんだ。それに、残り物には福があるというじゃないか」
「リーダーの人生は残り物ばかりじゃないすか。おまけに不幸続きじゃないすか」
「うるさいぞ」
気の乗らない相棒を説得して、しばらく森の中を再び探索する。
しかし、全く、スライムの影も形も無い。
日も落ちてきた。
気が付くと、相棒の奴、立ったまま寝てやがる。
「おい、さぼるなよ」
「……休むも仕事っすよ」
「おいおい、ふざけんなよ」
「そんなこと言ったって、もうモンスターはいませんよ。眠くて仕方がないっす」
「だから、お前のそういうところがダメなんだ。冒険者としての気構えが足りないぞ」
「また気構えっすか。でも、リーダーには本当に冒険者としての気構えがあったんすか」
「うるさいぞ」
確かに全然無かったなあ。
そのあげくスライム退治で糊口をしのぐ始末だ。
ああ、もうほとんど真っ暗だ。
「帰りましょうよ」
「そうするか」
やれやれ。
すっかり機嫌が悪くなる俺。
けど、仕方が無い。
剣を鞘におさめる。
でも、やっぱりイライラするなあ。
鞘に入った剣を振り上げてそこらの草を払った。
すると悲鳴があがった。
「お、なんだ」
「野ウサギじゃないすか」
しかし、よく見ると変なモンスターが倒れている。
全身が金色で、目てくれは小さいドラゴンだ。
大きさは俺の頭くらいしかないが。
「おい、これは珍しいモンスターではないか」
「うーん、あまり見たことがないっすねえ」
俺はモンスター図鑑を思い出してみる。
そう、幻と言われているモンスターのゴールドドラゴンにそっくりだ。
「おい、やったぞ! ついにドラゴンを倒したぞ! おまけに生け捕りだぞ、すごいぞ!」
興奮している俺をつまんなそうな顔で見る相棒。
「何言ってんすか、こんな小さいドラゴンいませんよ」
「いや、ゴールドドラゴンは生態がよくわかってない。これはまだ小さい頃のゴールドドラゴンではないのか。そう、このドラゴンの首に珍しい宝石が付いていて、そして、そのことがきっかけで大冒険が始まるのだ……って、何も付いてないな」
「リーダー、また妄想してますね。ドラゴンの子供にしても、ちょっと小さ過ぎっすよ。だいたい、なんでそんな珍しいモンスターがこんなド田舎の村からちょっと離れた場所に出現するんすか。もっとどっかものすごい山奥のカッコいい神殿とかに現れませんかね」
「うるさいぞ。とにかく珍しいモンスターを捕まえたぞ。冒険者ギルドに報告だ」
俺と相棒は村に戻った。
そして、意気揚々とモンスターを冒険者ギルドの主人に見せる。
「これは珍しいモンスターじゃないのか。もしかしてドラゴンの一種ではないか?」
すると、主人は、大人しそうにカウンターの上に座っているモンスターを見てしらけた顔をした。
「ああ、これはゴールドドラゴンモドキっていう奴だ。外見はゴールドドラゴンに似ているがスライムより全然弱いモンスターだな。ペットで飼ってる人もいるくらいだ。ここら辺ではそんなに珍しくないぞ。ちなみにゴールドドラゴンってのは山のように大きい奴だ」
主人の言葉にがっくりとする俺。
結局、報酬はスライム一匹分。
「本当の報酬はスライム一匹の半分くらいなんだが、まあ、あんたらも苦労してそうなんで、おまけだ」
すごすごと冒険者ギルドを相棒と出る俺たち。
「だから言ったじゃないすか。ドラゴンを捕まえたとか騒いじゃって。他の冒険者たちがニヤニヤ笑ってましたっすよ」
「うーむ、面目ない」
結局、俺はドラゴンもどきを倒すことしかできない冒険者もどきなのだろうか。
いや、いつかはドラゴンを倒してやる。
そう思いながら、わずかな報酬でしょぼい夕食を相棒と食べに行く俺。
しかし、こんな人生で本当にいいのだろうか。
ああ、一度でいいから大冒険がしたい!
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