8 / 69
第8話:この遺跡薄っぺらいなあ、薄っぺらいっすね
しおりを挟む
「この遺跡薄っぺらいなあ」
「薄っぺらいっすね」
俺と相棒、二人組の冒険者パーティー。
普段はスライム退治専門のしょぼいパーティーだ。
そして、今回、冒険者ギルドに依頼されたのは、またもやしょぼいスライム退治。
しかし、生きていくには仕方がない。
少しでも金を稼がないといかん。
しかし、指定された場所まで、けっこう遠かった。
小さい砂漠を走破し、そして、山に到着。
両側が切り立った峡谷を通り抜けなければいけなかった。
まあ、峡谷と言っても乾いていて、水が通ってない。
簡単に歩ける。
もう、だいぶ前に干上がったようだな。
モンスターも全く現れない。
そして、そのかなり狭い峡谷を通り抜けると、そこにはバカでかい遺跡があった。
何か知らないが巨大人物像が何体かあり、でかい入口が三つほどあるぞ。
「おお、これはすごい遺跡じゃないか。宝物とかがあるんじゃないか」
「そうすかねえ。そもそも、俺っちらが依頼されたのはスライム退治じゃなかったすかねえ」
「いや、これは大冒険の始まりなのだ。こんな立派な遺跡を俺たちは発見したんだ」
「発見も何も冒険者ギルドに指定されてこの場所に来たんすけど」
「お前、ロマンがないなあ。この遺跡を見て何とも思わないのかよ」
「いや、だから冒険者ギルドが知っているんだから、他の冒険者もすでに知っているんじゃないすか」
全く、相棒の奴、しらけきっているな。
「スライム退治ばかりで、お前はすっかり冒険者としての気構えを無くしているぞ。とにかくこの遺跡に入るぞ」
「うぃっす」
俺たちは遺跡の中に入った。
すると、何てことだ、一歩歩いたら、行き止まり。
「おいおい、この遺跡薄っぺらいなあ」
「薄っぺらいっすね」
「何だよ、外見はすごい豪華なのに、奥行が全然ないじゃないか。幅は広いけど」
「山の壁に彫っただけじゃないすか」
こりゃ、つまらん。
いや、そんなことはないぞ、こんなに正面が豪華な遺跡で。
どこかに隠し扉があるに違いない。
「おい、隠し扉を探すぞ。そして、そこから俺たちの大冒険が始まるんだ」
「いや、そんなものないんじゃないすか」
「お前、しらけてるなあ。それでも冒険者かよ」
「そんなものがあったら、とっくの昔に他の冒険者が見つけてますよ。まあ、こんな薄っぺらい遺跡で張り切ったって、仕方がないじゃないすか。それにしても、この薄っぺらい感じは、リーダーの人生みたいっすね」
「うるさいぞ」
元々、夢とロマンに満ち溢れた冒険をするために、今の職業についた俺。
気が付けばスライム退治ばっかり。
そして、今や、おっさんだ。
やれやれ。
遺跡の奥で、いや、奥と言っても入口から一歩しか歩いていないが、なにか隠し扉がないか探す。
しかし、何もない。
土の壁があるだけだ。
「リーダー、あきらめましょう。冒険者ギルドの依頼はスライム退治なんだから」
「いや、何かあるかもしれないぞ」
幅が広いので横に歩いていくと女性がいた。
「おい、女がいるぞ。もしかして、この女性はどこかの国から逃げてきた美人のお姫様とかじゃないのか。そして、彼女を助けた俺たちは英雄になるんだ」
「何か以前もそんなアホな妄想してなかったすか、リーダーは。こんな薄っぺらい遺跡になんでお姫様がいるんすか」
俺たちがごちゃごちゃ話していると、その女が近づいてきた。
美人のお姫様ではなく、ただのおばさんだった。
がっかりする俺。
「お待ちしてたよ。あんたたち、スライム退治に来たんだろ」
「うむ、そうだが」
「あたしが冒険者ギルドに依頼したんだよ。あたしでも倒せそうだったんだけど、腰が痛いんでね」
腰痛のおばさんの代わりにスライム退治。
何か情けなくなってくるなあ。
「じゃあ、さっそく、頼むよ」
そう言って、端っこの梯子を上るよう俺たちは腰痛おばさんに指示された。
仕方なく、俺たちは梯子を上る。
一応、二階もあるんだな。
薄っぺらいけど。
そして、スライムが三匹いた。
俺と相棒はあっさりとスライムを退治した。
つまらん。
しかし、この二階も狭いな。
人が一人しか通れないぞ。
「まあ、仕事は終わった。戻るか」
俺が梯子の方へ歩いていくと、突然岩が落ちてきた。
「うわ!」
驚いて、立ち止まる俺。
「危なかったすね、リーダー」
「うむ、この岩に当たっていたら死んでいたな」
「いや、そうとは限らないんじゃないすか」
「なんでそう思うんだよ」
「かなり薄っぺらいっすよ、この岩」
「うーむ、確かにそうだ」
「奥行きが深かったら、真四角の立方体の岩が落ちてきて潰されて、あの世逝きだったかもしれないすけど」
「薄っぺらいから当たっても大した事なかったかもしれんなあ」
「薄っぺらい人生を歩んできたリーダーに相応しい危機でしたね」
「うるさいぞ」
一階に戻り腰痛おばさんにスライム退治完了の報告をした。
ついでに岩が落ちてきたことも言ってやった。
「そうかい、ちょっと修復が必要かねえ。ここは観光地にするつもりなんだから」
「へ? 観光地」
「そうだよ、見栄えはいいからねえ。まあ、中身は何もないけど」
ううむ、やはり大冒険とは全く関係ない場所だったのか。
中身は何も無しか。
俺の人生と一緒だな。
いや、外見が立派なだけましかもしれん。
俺はただのおっさんだからな。
「まあ、帰るか。ちゃんと仕事は終了させたしな」
すると、相棒が聞いてきた。
「ところで、リーダーの人生一発大逆転計画はどうなってんすか」
「まだ考えているんだ」
「やめたほうがいいっすよ、リーダーは薄っぺらい仕事ばかりやってたんすから。ろくなことにならないすよ」
「うるさいぞ」
しかし、いまだになんのいいアイデアも浮かばない。
いや、俺はまだ生きているぞ。
死ぬまでに何とかしてやる。
こんな薄っぺらい人生で終わりとかは無しだ。
そう、俺は思うのであった。
「薄っぺらいっすね」
俺と相棒、二人組の冒険者パーティー。
普段はスライム退治専門のしょぼいパーティーだ。
そして、今回、冒険者ギルドに依頼されたのは、またもやしょぼいスライム退治。
しかし、生きていくには仕方がない。
少しでも金を稼がないといかん。
しかし、指定された場所まで、けっこう遠かった。
小さい砂漠を走破し、そして、山に到着。
両側が切り立った峡谷を通り抜けなければいけなかった。
まあ、峡谷と言っても乾いていて、水が通ってない。
簡単に歩ける。
もう、だいぶ前に干上がったようだな。
モンスターも全く現れない。
そして、そのかなり狭い峡谷を通り抜けると、そこにはバカでかい遺跡があった。
何か知らないが巨大人物像が何体かあり、でかい入口が三つほどあるぞ。
「おお、これはすごい遺跡じゃないか。宝物とかがあるんじゃないか」
「そうすかねえ。そもそも、俺っちらが依頼されたのはスライム退治じゃなかったすかねえ」
「いや、これは大冒険の始まりなのだ。こんな立派な遺跡を俺たちは発見したんだ」
「発見も何も冒険者ギルドに指定されてこの場所に来たんすけど」
「お前、ロマンがないなあ。この遺跡を見て何とも思わないのかよ」
「いや、だから冒険者ギルドが知っているんだから、他の冒険者もすでに知っているんじゃないすか」
全く、相棒の奴、しらけきっているな。
「スライム退治ばかりで、お前はすっかり冒険者としての気構えを無くしているぞ。とにかくこの遺跡に入るぞ」
「うぃっす」
俺たちは遺跡の中に入った。
すると、何てことだ、一歩歩いたら、行き止まり。
「おいおい、この遺跡薄っぺらいなあ」
「薄っぺらいっすね」
「何だよ、外見はすごい豪華なのに、奥行が全然ないじゃないか。幅は広いけど」
「山の壁に彫っただけじゃないすか」
こりゃ、つまらん。
いや、そんなことはないぞ、こんなに正面が豪華な遺跡で。
どこかに隠し扉があるに違いない。
「おい、隠し扉を探すぞ。そして、そこから俺たちの大冒険が始まるんだ」
「いや、そんなものないんじゃないすか」
「お前、しらけてるなあ。それでも冒険者かよ」
「そんなものがあったら、とっくの昔に他の冒険者が見つけてますよ。まあ、こんな薄っぺらい遺跡で張り切ったって、仕方がないじゃないすか。それにしても、この薄っぺらい感じは、リーダーの人生みたいっすね」
「うるさいぞ」
元々、夢とロマンに満ち溢れた冒険をするために、今の職業についた俺。
気が付けばスライム退治ばっかり。
そして、今や、おっさんだ。
やれやれ。
遺跡の奥で、いや、奥と言っても入口から一歩しか歩いていないが、なにか隠し扉がないか探す。
しかし、何もない。
土の壁があるだけだ。
「リーダー、あきらめましょう。冒険者ギルドの依頼はスライム退治なんだから」
「いや、何かあるかもしれないぞ」
幅が広いので横に歩いていくと女性がいた。
「おい、女がいるぞ。もしかして、この女性はどこかの国から逃げてきた美人のお姫様とかじゃないのか。そして、彼女を助けた俺たちは英雄になるんだ」
「何か以前もそんなアホな妄想してなかったすか、リーダーは。こんな薄っぺらい遺跡になんでお姫様がいるんすか」
俺たちがごちゃごちゃ話していると、その女が近づいてきた。
美人のお姫様ではなく、ただのおばさんだった。
がっかりする俺。
「お待ちしてたよ。あんたたち、スライム退治に来たんだろ」
「うむ、そうだが」
「あたしが冒険者ギルドに依頼したんだよ。あたしでも倒せそうだったんだけど、腰が痛いんでね」
腰痛のおばさんの代わりにスライム退治。
何か情けなくなってくるなあ。
「じゃあ、さっそく、頼むよ」
そう言って、端っこの梯子を上るよう俺たちは腰痛おばさんに指示された。
仕方なく、俺たちは梯子を上る。
一応、二階もあるんだな。
薄っぺらいけど。
そして、スライムが三匹いた。
俺と相棒はあっさりとスライムを退治した。
つまらん。
しかし、この二階も狭いな。
人が一人しか通れないぞ。
「まあ、仕事は終わった。戻るか」
俺が梯子の方へ歩いていくと、突然岩が落ちてきた。
「うわ!」
驚いて、立ち止まる俺。
「危なかったすね、リーダー」
「うむ、この岩に当たっていたら死んでいたな」
「いや、そうとは限らないんじゃないすか」
「なんでそう思うんだよ」
「かなり薄っぺらいっすよ、この岩」
「うーむ、確かにそうだ」
「奥行きが深かったら、真四角の立方体の岩が落ちてきて潰されて、あの世逝きだったかもしれないすけど」
「薄っぺらいから当たっても大した事なかったかもしれんなあ」
「薄っぺらい人生を歩んできたリーダーに相応しい危機でしたね」
「うるさいぞ」
一階に戻り腰痛おばさんにスライム退治完了の報告をした。
ついでに岩が落ちてきたことも言ってやった。
「そうかい、ちょっと修復が必要かねえ。ここは観光地にするつもりなんだから」
「へ? 観光地」
「そうだよ、見栄えはいいからねえ。まあ、中身は何もないけど」
ううむ、やはり大冒険とは全く関係ない場所だったのか。
中身は何も無しか。
俺の人生と一緒だな。
いや、外見が立派なだけましかもしれん。
俺はただのおっさんだからな。
「まあ、帰るか。ちゃんと仕事は終了させたしな」
すると、相棒が聞いてきた。
「ところで、リーダーの人生一発大逆転計画はどうなってんすか」
「まだ考えているんだ」
「やめたほうがいいっすよ、リーダーは薄っぺらい仕事ばかりやってたんすから。ろくなことにならないすよ」
「うるさいぞ」
しかし、いまだになんのいいアイデアも浮かばない。
いや、俺はまだ生きているぞ。
死ぬまでに何とかしてやる。
こんな薄っぺらい人生で終わりとかは無しだ。
そう、俺は思うのであった。
20
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説


クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる