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第47話:フランチェスコさんと監禁されるが脱出する
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そのまま馬車で連れて行かれて、多分、地下室に監禁されたようだ。
目隠しに、縄で猿ぐつわ、手首、手足を縛られ、フランチェスコさんと背中合わせにぐるぐる巻き。
こりゃ、やばいな。
イケメンと背中がくっ付いてうれしいけど。
「しばらく、ここで大人しくしてろ」
怪しげな連中は部屋から出て行ったようだ。
様子を見て、シーフ技で簡単に縄を解いた。
あたしの袖に隠してあるナイフもそのままで、連中は気づいていない。
素人だな、こいつら。
こういう事に慣れてないぞ。
目隠しを外すと、小さい倉庫のような部屋だ。
出入口は一つだけで窓は無し。
フランチェスコさんの縛めも解いてやる。
「すごいですね、プルムさん」
フランチェスコが驚いている。
「えーと、警備隊の訓練の成果です」
あたしは誤魔化した。
泥棒やってた結果、覚えたとはとても言えん。
「あの連中は、教皇を殺した次期候補者の仲間でしょうか」
「多分、そう思います。実は、あの古書が見つかって、僕が警備隊に調査しに行ったその日から、誰かに狙われているような気配がしていたんです。プルムさんを巻き込んでしまって、申し訳ありません」
申し訳ないなんて、全然、無いですよー!
二人きりで嬉しいなあー!
って逃げなきゃ。
「いえ、とにかく逃げましょう」
入口の鉄扉に鍵がかかっているが、これも簡単にはずす。
「これは大隊長昇任試験で覚えました」
また誤魔化す。
そんな試験あるわけないっす。
これも泥棒で覚えたとはとても言えん。
さて、そっと扉を開けるが見張りはいない。
薄暗い地下道が見える。
「これは教皇庁の建物の地下ですね、子供の頃遊んだことがあります」
フランチェスコさんが教えてくれた。
廊下は薄暗い。
だいぶ昔に作られたような感じだ。
ランプが所々にあるだけ。
フランチェスコさんに先導されて、静かに歩いていく。
おっと、後方から騒ぎ声が聞こえてきた。
「あいつら、逃げやがった」
大声が聞こえてきた。
後ろからドタバタと追って来る。
やばい、逃げたのばれた。
「こっちです」
フランチェスコさんがあたしの手を掴んで引っ張る。
やったー、手をしっかりと握ってくれたぞ!
今、逃げてるんだろ、お前はアホだって? アホです。
途中に階段があった。
数階下に降りる。
途中の階段の下に狭い目立たないスペースがあった。
そこに、無理矢理二人で隠れて、じっとしている。
もう、体が思いっきりくっ付いているぞ。
嬉しー!
お前は本当にアホだ、殺されるかもしれないってのに? ううむ、そうだな、さすがに真面目になるか。
追ってきた連中は、階段をもっと下に降りていった。
隠れてた場所から出る。
「このままだと、いずれ見つかってしまうと思いますけど」
「僕は子供の頃、ここら辺でよく遊んだんですが、確か、教皇様の部屋に行くことができる梯子があるのを知ってます。そこまで逃げましょう」
「え、教皇の部屋って、かなり上のほうじゃないですか」
「教皇の部屋は最上階です。多分、あの人たちは地下の方を探すんじゃないでしょうか。だから、上に行ったほうがいいと思います。確か、教皇の部屋から、いざという時に逃げることが出来るよう脱出口があって、そこから梯子で下に降りることが出来たんです。かなり大昔に作られたものみたいですが。今、教皇は空位なので部屋は閉めています。梯子を上って、そこまで行って、電話で外に助けを呼びましょう」
そう言うと、フランチェスコさんが足元の壁を外した。
「前は穴が開いていたんです。今は、ベニア板でふさいだようです」
そこから、中に入ると、かなり深い空間が下の方まである。
とこどろころから、かすかに光が入っているが、暗くてよく見えない。
まるで断崖絶壁みたいだ。
「教皇庁の建物は、大昔からあって、建て増しを続けて行ったら、こういう変な空間がたくさん出来たみたいです」
また、フランチェスコさんが説明してくれた。
何にも掴むものがない、単なる出っ張りのような幅の狭い通路がある。
だいぶ古そうだけど大丈夫かな。
フランチェスコさんとゆっくりと進む。
ドキドキする。
下に落ちたら、ヘタしたら死んじゃうじゃないかな。
けど、フランチェスコさんと一緒に死ねるならいいかなあとか思う、やっぱり不真面目なあたし。
「この場所は、かなり深そうですね」
「昔、罪人をここから下に突き落として殺したって伝説があります」
ひえー! 本当に死んじゃうのか。
ドキドキしながら歩く。
さっきから、ずうっとフランチェスコさんがあたしの手をぎゅうっと握りっぱなし。
ドキドキしているけど、追われているためか、高い場所にいるためか、それともフランチェスコさんに手を握られているのか分からなくなる。
って、真面目にやれよって? すんませんでした。
途中で通路が崩れて途切れている場所があった。
しかし、跳んで、渡れなくもなさそうだ。
「僕が先に行って見ます」
意外と身軽にひょいっと、フランチェスコさんが渡った。
次はあたし。
跳ぶと、通路が崩れた。
「あわわ」
思わず、フランチェスコさんに引っ張り上げられ、ぎゅうっと抱き合う。
「あ、ありがとうございます」
「い、いえ」
もう、一生ずっと抱きしめてもらってもいいな。
だから、お前、もっと真剣になれよって? そうですね。
お、薄暗い中で、ちょっとよく見えないが、フランチェスコさんも赤い顔して、ドキドキしているぞ。もしかして、あたしを意識してくれてんのか。
ふざけんな! 当たり前だろ! 落ちて死にそうだったし、悪人に追われているんだぞって? うーん、そうでしたね。
それにしても、広い建物だなあ。
まるで迷路のように続いている。
上がったり下ったり。
やや広い場所に出た。
「少し休みましょうか」
二人で座り込む。
広いといっても、二人で座り込むと、もうお互いで抱き合うような感じで、体を支え合うしかない。
嬉しいぞー!
お前は本当のアホだ。呆れた、もう知らんって? すんません。
「本当に申し訳ありません。こんな事に巻き込んでしまって」
「いえ、犯罪を取り締まるのは警備隊の義務ですので」
あたしはそう答えたが、実際のところ、義務感は一割程度、後の九割はフランチェスコさんのために働いているようなもんだな。
って怒らないでよ。
真面目にやりますよ。
「それにしても、先代の教皇様はどうやって殺されたんでしょう。確か、去年、心臓麻痺って通知があったのを覚えてます」
確か、あの時、教皇様の葬儀でうちの大隊も警備の応援に行ったはず。あたしの小隊は留守番してたけど。
「多分、毒を盛られたんだと思います。僕の目の前で倒られたんです。ちょうど、教皇様はコップで水を飲んでました。あわてて、病院に運んだんですが、すでに亡くなられていました」
「そうだったんですか……」
「実は、僕は汚職の件を打ち明けられていたんです。もっと注意すればよかった。亡くなった教皇様は、僕の子供の頃から可愛がってくれた方なんです」
あれ、フランチェスコさん、ちょっと涙目になっているような。
かわいそう。
ああ、何かきつく抱きして、慰めたくなってきた。
おっと、真面目にならんと。
「毒って、どんなものでしょう」
「多分、ヒ素じゃないかって思っています。直前にネズミ駆除用に置いてあったヒ素が無くなっていたんです」
「あれ、ヒ素ってすぐに検出されるって話ですが。警備隊の検視とかなかったんですか」
「それが、南地区の大隊長が来て、必要ないと言ったんです。心臓麻痺と言う事で片付けられてしまいました。おかしいと思って、教皇庁に戻って、教皇様が使っていたコップを探したんですが、全て無くなっていました」
落ち込んでいるような感じのフランチェスコさん。
うーむ、イケメンを落ち込ませるとは。
許さんぞ、南地区大隊長め。
再び、歩き始めると、途中で、梯子があった。
「これが教皇の部屋までつながっている梯子です。僕の記憶では教皇の部屋の天井裏につながっているはず。昔はこれを使って、掃除とかもしていたらしいんですけど」
とりあえず、登るしかないな。
梯子を登っていく。
かなり時間がかかったが、やっと、教皇の部屋の天井裏につながった。
狭くて、暗い天井裏を二人で移動。
「確か、天井から降りられる階段のようなものがあったんですが」
フランチェスコさんが探している。
天井の点検口から部屋の中を見ると、電灯がついている。
閉じているはずの部屋に誰かいるぞ。
フランチェスコさんにささやかれた。
「あの人が、教皇を殺したんじゃないかと疑われている人です」
偉そうなローブを着た容疑者と誰かが、豪華なソファに座って喋っている。
おっさん、もう教皇になったつもりかよ。
あれ、向い側のソファに座っているのは、南地区警備隊大隊長だ。
なんでこんなとこにいるんだよ。
「フランチェスコと東地区の大隊長が逃げ出したってことですが」
南地区警備隊長が聞いている。
「今、私の配下全員で探している。地下に逃げたようだ。捕まえたら、もう殺すしかないな」
偉そうな恰好をしている教皇庁のおっさん。
おいおい、随分物騒な事、話してんじゃん。
あたしはともかく、フランチェスコさんを殺させるわけにはいかんぞ。
成敗してやる。
「手下が地下に居る間に、この二人を逮捕しましょう」
あたしはフランチェスコさんに言って、ちょっと高いが、点検口からサッと飛び降りる。
「痛!」
足首をくじいて、よろける。
「お前はドラゴンキラー!」
びっくりして拳銃を向ける南地区大隊長。
「させるか!」
あたしはナイフを投げる。
南地区大隊長の腕にささって、拳銃を落とした。
すかさず、近寄り股間を思いっきり蹴飛ばす。
悶絶したところを、本人が持っていた手錠をかけて、逮捕。
かっこいいあたし。
ナイフが久々に役に立った。
もうあきらめたのか、呆然と教皇庁の容疑者評議員はただソファに座っている。
越権行為だが仕方が無い。
電話で東地区のあたしの大隊を臨時招集。
フランチェスコさんが別の場所から降りてきた。
「大丈夫ですか、プルムさん」
「え?」
「足首を痛めたようですが」
「あ、大丈夫です」
気にかけてくれるだけでも、痛みが消えていくわー!
東地区の大隊員が全員到着。
あたしとフランチェスコさんを誘拐した連中を全員逮捕。
一件落着。
と思ったら、サビーナちゃんから報告があった。
「昨日、情報省のクラウディア参事官が教皇庁に行った後、行方不明みたいですよ」
大変だ、クラウディアさんもどっかに監禁されてんのか、それとも、まさか殺されたのか。
「フランチェスコさん、知りませんか?」
「いえ、全く知りませんが……」
フランチェスコさんも戸惑っている。
大隊全員で教皇庁の中を探す。
特に地下を重点的に探すが、見つからない。
逮捕した連中に聞くが、居場所を全く知らないようだ。
「昨日来たが、情報省参事官なので殺すわけにもいかないし、どう対応しようかと相談しているうちに、本人が勝手にいなくなった」
連中がそう証言した。
いったい、クラウディアさん、どうしたんだろうと思っていたら、バルドの大声が聞こえてきた。
「見つけたぞ!」
バルドが、一階にあるバカでかい応接室の隅に置いてあるソファの後ろに倒れているクラウディアさんを発見。
あたしも駆けつける。
クラウディアさん、フレアスカートの黒いロングワンピースを着ている。ウエストにリボンが付いていて、首はVネック。手首に犬のブレスレット。この犬はダルメシアンって犬種だな。フォーマルドレスって感じ。
って、ファッションの説明している場合ではない。
「クラウディア様、クラウディア様、大丈夫ですか」
体を揺すると、クラウディアさん、目を覚ます。
「……あ、申し訳ありません。うたた寝してました」
は? うたた寝って?
クラウディアさん、応接室で待たされていたんだけど、いつまで経っても誰も来ないので、ちょっとソファの後ろで、例のヨガの練習をしていたようだ。瞑想してたら、うっかり、うたた寝して、そのままヨガの影響かしらんが熟睡。
ソファの陰で見えないので、誰も気づかないまま、ほったらかしにされていた。
って、本当かよ!
この人、マジに天然じゃね。
もう天然姫から天然女王に昇進!
全く、レッドドラゴン事件の時は、クラウディアさんがうたた寝してたおかげで、世界が滅びそうになったんだよな。
あれ、そうするとあたしは世界を救ったヒーローなのか。
全然、そんな気しないけどな。
気分はいまだに万引き女だ。
とは言え、一応、アトノベル騎士団の呪い事件は一件落着と。
さて、あたしの方はどうなるかだな。
目隠しに、縄で猿ぐつわ、手首、手足を縛られ、フランチェスコさんと背中合わせにぐるぐる巻き。
こりゃ、やばいな。
イケメンと背中がくっ付いてうれしいけど。
「しばらく、ここで大人しくしてろ」
怪しげな連中は部屋から出て行ったようだ。
様子を見て、シーフ技で簡単に縄を解いた。
あたしの袖に隠してあるナイフもそのままで、連中は気づいていない。
素人だな、こいつら。
こういう事に慣れてないぞ。
目隠しを外すと、小さい倉庫のような部屋だ。
出入口は一つだけで窓は無し。
フランチェスコさんの縛めも解いてやる。
「すごいですね、プルムさん」
フランチェスコが驚いている。
「えーと、警備隊の訓練の成果です」
あたしは誤魔化した。
泥棒やってた結果、覚えたとはとても言えん。
「あの連中は、教皇を殺した次期候補者の仲間でしょうか」
「多分、そう思います。実は、あの古書が見つかって、僕が警備隊に調査しに行ったその日から、誰かに狙われているような気配がしていたんです。プルムさんを巻き込んでしまって、申し訳ありません」
申し訳ないなんて、全然、無いですよー!
二人きりで嬉しいなあー!
って逃げなきゃ。
「いえ、とにかく逃げましょう」
入口の鉄扉に鍵がかかっているが、これも簡単にはずす。
「これは大隊長昇任試験で覚えました」
また誤魔化す。
そんな試験あるわけないっす。
これも泥棒で覚えたとはとても言えん。
さて、そっと扉を開けるが見張りはいない。
薄暗い地下道が見える。
「これは教皇庁の建物の地下ですね、子供の頃遊んだことがあります」
フランチェスコさんが教えてくれた。
廊下は薄暗い。
だいぶ昔に作られたような感じだ。
ランプが所々にあるだけ。
フランチェスコさんに先導されて、静かに歩いていく。
おっと、後方から騒ぎ声が聞こえてきた。
「あいつら、逃げやがった」
大声が聞こえてきた。
後ろからドタバタと追って来る。
やばい、逃げたのばれた。
「こっちです」
フランチェスコさんがあたしの手を掴んで引っ張る。
やったー、手をしっかりと握ってくれたぞ!
今、逃げてるんだろ、お前はアホだって? アホです。
途中に階段があった。
数階下に降りる。
途中の階段の下に狭い目立たないスペースがあった。
そこに、無理矢理二人で隠れて、じっとしている。
もう、体が思いっきりくっ付いているぞ。
嬉しー!
お前は本当にアホだ、殺されるかもしれないってのに? ううむ、そうだな、さすがに真面目になるか。
追ってきた連中は、階段をもっと下に降りていった。
隠れてた場所から出る。
「このままだと、いずれ見つかってしまうと思いますけど」
「僕は子供の頃、ここら辺でよく遊んだんですが、確か、教皇様の部屋に行くことができる梯子があるのを知ってます。そこまで逃げましょう」
「え、教皇の部屋って、かなり上のほうじゃないですか」
「教皇の部屋は最上階です。多分、あの人たちは地下の方を探すんじゃないでしょうか。だから、上に行ったほうがいいと思います。確か、教皇の部屋から、いざという時に逃げることが出来るよう脱出口があって、そこから梯子で下に降りることが出来たんです。かなり大昔に作られたものみたいですが。今、教皇は空位なので部屋は閉めています。梯子を上って、そこまで行って、電話で外に助けを呼びましょう」
そう言うと、フランチェスコさんが足元の壁を外した。
「前は穴が開いていたんです。今は、ベニア板でふさいだようです」
そこから、中に入ると、かなり深い空間が下の方まである。
とこどろころから、かすかに光が入っているが、暗くてよく見えない。
まるで断崖絶壁みたいだ。
「教皇庁の建物は、大昔からあって、建て増しを続けて行ったら、こういう変な空間がたくさん出来たみたいです」
また、フランチェスコさんが説明してくれた。
何にも掴むものがない、単なる出っ張りのような幅の狭い通路がある。
だいぶ古そうだけど大丈夫かな。
フランチェスコさんとゆっくりと進む。
ドキドキする。
下に落ちたら、ヘタしたら死んじゃうじゃないかな。
けど、フランチェスコさんと一緒に死ねるならいいかなあとか思う、やっぱり不真面目なあたし。
「この場所は、かなり深そうですね」
「昔、罪人をここから下に突き落として殺したって伝説があります」
ひえー! 本当に死んじゃうのか。
ドキドキしながら歩く。
さっきから、ずうっとフランチェスコさんがあたしの手をぎゅうっと握りっぱなし。
ドキドキしているけど、追われているためか、高い場所にいるためか、それともフランチェスコさんに手を握られているのか分からなくなる。
って、真面目にやれよって? すんませんでした。
途中で通路が崩れて途切れている場所があった。
しかし、跳んで、渡れなくもなさそうだ。
「僕が先に行って見ます」
意外と身軽にひょいっと、フランチェスコさんが渡った。
次はあたし。
跳ぶと、通路が崩れた。
「あわわ」
思わず、フランチェスコさんに引っ張り上げられ、ぎゅうっと抱き合う。
「あ、ありがとうございます」
「い、いえ」
もう、一生ずっと抱きしめてもらってもいいな。
だから、お前、もっと真剣になれよって? そうですね。
お、薄暗い中で、ちょっとよく見えないが、フランチェスコさんも赤い顔して、ドキドキしているぞ。もしかして、あたしを意識してくれてんのか。
ふざけんな! 当たり前だろ! 落ちて死にそうだったし、悪人に追われているんだぞって? うーん、そうでしたね。
それにしても、広い建物だなあ。
まるで迷路のように続いている。
上がったり下ったり。
やや広い場所に出た。
「少し休みましょうか」
二人で座り込む。
広いといっても、二人で座り込むと、もうお互いで抱き合うような感じで、体を支え合うしかない。
嬉しいぞー!
お前は本当のアホだ。呆れた、もう知らんって? すんません。
「本当に申し訳ありません。こんな事に巻き込んでしまって」
「いえ、犯罪を取り締まるのは警備隊の義務ですので」
あたしはそう答えたが、実際のところ、義務感は一割程度、後の九割はフランチェスコさんのために働いているようなもんだな。
って怒らないでよ。
真面目にやりますよ。
「それにしても、先代の教皇様はどうやって殺されたんでしょう。確か、去年、心臓麻痺って通知があったのを覚えてます」
確か、あの時、教皇様の葬儀でうちの大隊も警備の応援に行ったはず。あたしの小隊は留守番してたけど。
「多分、毒を盛られたんだと思います。僕の目の前で倒られたんです。ちょうど、教皇様はコップで水を飲んでました。あわてて、病院に運んだんですが、すでに亡くなられていました」
「そうだったんですか……」
「実は、僕は汚職の件を打ち明けられていたんです。もっと注意すればよかった。亡くなった教皇様は、僕の子供の頃から可愛がってくれた方なんです」
あれ、フランチェスコさん、ちょっと涙目になっているような。
かわいそう。
ああ、何かきつく抱きして、慰めたくなってきた。
おっと、真面目にならんと。
「毒って、どんなものでしょう」
「多分、ヒ素じゃないかって思っています。直前にネズミ駆除用に置いてあったヒ素が無くなっていたんです」
「あれ、ヒ素ってすぐに検出されるって話ですが。警備隊の検視とかなかったんですか」
「それが、南地区の大隊長が来て、必要ないと言ったんです。心臓麻痺と言う事で片付けられてしまいました。おかしいと思って、教皇庁に戻って、教皇様が使っていたコップを探したんですが、全て無くなっていました」
落ち込んでいるような感じのフランチェスコさん。
うーむ、イケメンを落ち込ませるとは。
許さんぞ、南地区大隊長め。
再び、歩き始めると、途中で、梯子があった。
「これが教皇の部屋までつながっている梯子です。僕の記憶では教皇の部屋の天井裏につながっているはず。昔はこれを使って、掃除とかもしていたらしいんですけど」
とりあえず、登るしかないな。
梯子を登っていく。
かなり時間がかかったが、やっと、教皇の部屋の天井裏につながった。
狭くて、暗い天井裏を二人で移動。
「確か、天井から降りられる階段のようなものがあったんですが」
フランチェスコさんが探している。
天井の点検口から部屋の中を見ると、電灯がついている。
閉じているはずの部屋に誰かいるぞ。
フランチェスコさんにささやかれた。
「あの人が、教皇を殺したんじゃないかと疑われている人です」
偉そうなローブを着た容疑者と誰かが、豪華なソファに座って喋っている。
おっさん、もう教皇になったつもりかよ。
あれ、向い側のソファに座っているのは、南地区警備隊大隊長だ。
なんでこんなとこにいるんだよ。
「フランチェスコと東地区の大隊長が逃げ出したってことですが」
南地区警備隊長が聞いている。
「今、私の配下全員で探している。地下に逃げたようだ。捕まえたら、もう殺すしかないな」
偉そうな恰好をしている教皇庁のおっさん。
おいおい、随分物騒な事、話してんじゃん。
あたしはともかく、フランチェスコさんを殺させるわけにはいかんぞ。
成敗してやる。
「手下が地下に居る間に、この二人を逮捕しましょう」
あたしはフランチェスコさんに言って、ちょっと高いが、点検口からサッと飛び降りる。
「痛!」
足首をくじいて、よろける。
「お前はドラゴンキラー!」
びっくりして拳銃を向ける南地区大隊長。
「させるか!」
あたしはナイフを投げる。
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すかさず、近寄り股間を思いっきり蹴飛ばす。
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かっこいいあたし。
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もうあきらめたのか、呆然と教皇庁の容疑者評議員はただソファに座っている。
越権行為だが仕方が無い。
電話で東地区のあたしの大隊を臨時招集。
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「大丈夫ですか、プルムさん」
「え?」
「足首を痛めたようですが」
「あ、大丈夫です」
気にかけてくれるだけでも、痛みが消えていくわー!
東地区の大隊員が全員到着。
あたしとフランチェスコさんを誘拐した連中を全員逮捕。
一件落着。
と思ったら、サビーナちゃんから報告があった。
「昨日、情報省のクラウディア参事官が教皇庁に行った後、行方不明みたいですよ」
大変だ、クラウディアさんもどっかに監禁されてんのか、それとも、まさか殺されたのか。
「フランチェスコさん、知りませんか?」
「いえ、全く知りませんが……」
フランチェスコさんも戸惑っている。
大隊全員で教皇庁の中を探す。
特に地下を重点的に探すが、見つからない。
逮捕した連中に聞くが、居場所を全く知らないようだ。
「昨日来たが、情報省参事官なので殺すわけにもいかないし、どう対応しようかと相談しているうちに、本人が勝手にいなくなった」
連中がそう証言した。
いったい、クラウディアさん、どうしたんだろうと思っていたら、バルドの大声が聞こえてきた。
「見つけたぞ!」
バルドが、一階にあるバカでかい応接室の隅に置いてあるソファの後ろに倒れているクラウディアさんを発見。
あたしも駆けつける。
クラウディアさん、フレアスカートの黒いロングワンピースを着ている。ウエストにリボンが付いていて、首はVネック。手首に犬のブレスレット。この犬はダルメシアンって犬種だな。フォーマルドレスって感じ。
って、ファッションの説明している場合ではない。
「クラウディア様、クラウディア様、大丈夫ですか」
体を揺すると、クラウディアさん、目を覚ます。
「……あ、申し訳ありません。うたた寝してました」
は? うたた寝って?
クラウディアさん、応接室で待たされていたんだけど、いつまで経っても誰も来ないので、ちょっとソファの後ろで、例のヨガの練習をしていたようだ。瞑想してたら、うっかり、うたた寝して、そのままヨガの影響かしらんが熟睡。
ソファの陰で見えないので、誰も気づかないまま、ほったらかしにされていた。
って、本当かよ!
この人、マジに天然じゃね。
もう天然姫から天然女王に昇進!
全く、レッドドラゴン事件の時は、クラウディアさんがうたた寝してたおかげで、世界が滅びそうになったんだよな。
あれ、そうするとあたしは世界を救ったヒーローなのか。
全然、そんな気しないけどな。
気分はいまだに万引き女だ。
とは言え、一応、アトノベル騎士団の呪い事件は一件落着と。
さて、あたしの方はどうなるかだな。
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