ドラゴンキラーと呼ばれた女/プルムの恋と大冒険

守 秀斗

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第19話:チェーザレ以下バカ三人組とまた出会う

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 今日は非番。
 外は雨。

 寮の部屋で、サビーナちゃんとトランプゲームをしながら、ラブレターの文章を考える。
 なかなか、思いつかん。サビーナちゃんが何だか眠そうだ。

「プルムさん、ちょっと眠くなりました。お昼寝してよろしいでしょうか」
「どうぞ、どうぞ」

 サビーナちゃんが昼寝してる間に、やっとラブレターを書く。

『こんにちは! 突然のお手紙失礼いたします。私の想いをお伝えしたかったため、お手紙を出させていただきました。実は、デルフィーノさんのことが以前から気になっておりました。もしできれば、私とお付き合いしていただけませんでしょうか? プルム』

 散々考えて、こんだけ。う~む、冴えない。地味。平凡。
 やはり、あたしは頭が悪い。けど、これが精一杯。

 仕方がない。
 せめて、封筒だけはかわいいのにしよう。

 お、小雨になったな。
 サビーナちゃんを起こさないように、そっと部屋を出る。

 傘をさして、文房具屋に。
 あんまりかわいいのが無いなあ。薄い桃色の封筒にした。まあ普通だな。

 帰り道。
 雨が強くなっている。

 あ、封筒がちょっと雨で濡れちゃった。
 少し、イライラ。

 ん? 背後から視線を感じる。
 サっと振り向く。
 誰もいない。

 気のせいかと思ったら、突然、呼びかけられた。

「おい、ドラゴンキラー」

 この声は例のバカ三人組だ。
 いつの間にか、目の前にチェーザレとその子分のアベーレとベニートが傘もささずに立っている。

「何か用すか」

 あたしは興味なさそうに返事をする。

「お、何だ、そのピンク色の封筒は。ラブレターでも出すのか」

 チェーザレがヘラヘラ笑いながら言う。

「ち、違うんよ!」

 こいつ、勘の良さだけは一流だ。

「誰に出すんだよ。俺にラブレターを出すんなら、今受け取ってもいいぜ」
「あんたに出すわけない。これは大切な人に渡すんよ!」
「つまり、ラブレターを出すんだろ」

 あわわ! くそう、誘導尋問に引っかかってしまった。
 腹立つー!
 しかし、抵抗するぞ。

「違うって言ってんでしょ!」
「見込みのない奴に渡しても空しいだけだぞ」

「何だと! 見込みがないかどうか、まだ分からないじゃない!」
「やっぱりラブレターを出すんじゃないか。なに、誤魔化してんだよ。お前はアホか!」

 ギャハハ! と笑うバカ三人組。
 ああ、また引っかかってしまった。

「うるさい! あっち行け!」

 イライラするー!

「そう怒るなよ、いいことを教えてやろう。相手が怒った時、その瞬間こそ、相手に隙が出来たときだ」
「はあ?」
「そして、相手の一瞬をつく。分かったな」
「何のこと言ってんの。格闘技でもやってんのかよ!」

「まあまあ、俺たちもついに情報屋として活動を始めたんだ。何なら、お前の好きな奴の身辺調査をしてもいいぜ」
「あんたらなんかにまかせられんよ! 情報屋とか訳の分からないインチキ商売なんて」

「だから、怒るなよ。いろいろと情報を教えてやろう。去年、戦争があったけど、近衛連隊が一番戦死者を出したらしい」
「そんな事知ってるわい」

「いや、それで論功行賞に不満持っている兵士が多い。全然、報奨金とか無いらしいぞ。まあ、領土が増えたわけじゃないから仕方が無いか。近衛連隊の兵士に知り合いがいるんだ。直接聞いたぞ」
「そんな情報、新聞にでも書いてあるでしょ。何が情報屋よ」

「ああ、お前、新聞とか読むのか。マンガしか読んでなかったのに」
「いつまでも子供じゃないわよ。マンガなんて卒業したんよ」

 本当は、全然、卒業してないけど。

「じゃあ、もう一つ、情報省がペンダントを明日の夜、運搬するそうだ」

 ペンダント! まさかドラゴンペンダントの事かしら。
 どこへ持って行くんだろう。

「何のペンダントよ」
「知らん」
「知らないなら、意味ないじゃない」
「そうだよ。だからお前に教えたんだよ」
「フン、下らない仕事ね」

 あたしはチェーザレに嫌味を言う。

「まあ、まだ俺たちも言わば処女航海中なんだよ。お前もそうだろ」
「しょ、しょ、処女じゃないよ」

 動揺するあたし。

「は? 何のことだ?」
「処女じゃないって言ってんでしょ!」

「仕事について、言ってんだけど。お前、何で処女にこだわるんだ」
「こ、こだわってないんよ!」

 こだわるあたし。

「お前、まだ十七歳だろ。別にいいじゃないか。普通じゃん。堂々としてろよ」
「う、うるさい。話しかけるな」

 堂々とできないあたし。

「妙にこだわると処女をこじらせて、ずっとそのまんまだぞ」
「何だとー! 死ね! このセクハラ男!」

「おいおい、こっちは、心配してやってんだぞ」
「あんたには心配されたくないんよ!」

「ちょっと、落ち着けってば」
「お、落ち着いてるよ、この鼻くそ男!」

 落ち着いていないあたし。

「何なんだよ、ったく。情報屋として使ってくれる件はどうなった」
「知るか、そんな事! どっか行け!」
「しょうがねえなあ、分かったよ、退散するよ。じゃあな、プルム首都警備隊員殿。ずっと、処女航海してな!」

 再びギャハハ! と笑いながら去っていくバカ三人組。

 クソー!
 全く、あのバカ三人組にはムカついてしょうがない。
 あー、イライラする。

 ん? また背後から視線を感じる。
 サっと振り向く。

 誰もいない。
 気のせいかな。

 ベッドに入って、妄想デートでラブレターを渡すシミュレーション。

 うーん、やはり、巡回中は怒られるか。シーフ技でさりげなくポケットに入れようか。ちょっと変か。退勤するとき、渡すのがいいかなあ。渡した後、あたしは顔を真っ赤にしてダッシュで帰ってしまいそうだ。もしかして渡したら、いきなりゴミ箱に捨てられたらどうしよう。多分、その場であたしショック死しちゃうな。

 シミュレーションでもドキドキする。
 ああ、眠れないわ、と言いつつ、寝た。
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