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第13話:リーダーに告白に行く

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 山が吹っ飛んだのは大惨事だけど、山奥なんで一般人の被害は少なかったみたい。
 一件落着したんで、村に帰って、集会場でボロボロになった冒険服を村人から貰った新しいのに着替えているとクラウディアさんに呼ばれ、お話があった。

「プルムさんの今回のご活躍を電報で報告したら、王様から直々に感謝の意を伝えたいので、ぜひ、首都の王宮に来てほしいとのことです」
「クラウディア様、私がドラゴンを倒したんじゃないですよ。単にペンダント一個を外しただけです。言ってみれば、ドラゴン秘儀団が自滅したわけで」
「それは秘密にしてほしいんです。ドラゴンはプルムさんが退治したことで事件は解決した事にしたいんです。ご協力よろしくお願いします」

 何だかそわそわして、落ち着かないクラウディアさん。

「いくらなんでも、十六歳の小娘に倒されたなんてドラゴンさんに失礼じゃないですか。山を吹っ飛ばすドラゴンですよ。おまけにドラゴンキラーなんて言われちゃうし、迷惑です。それにバレたら、私は詐欺師扱いですよ」
「プルムさん、そこを何とかよろしくお願いいたします」

 クラウディアさんに深々と頭を下げられちゃった。何か必死な感じが伝わる。うたた寝の件とかロミオ少佐の件とかポカやったから、出世にひびくと焦ってんのかな。

 まあ、クラウディアさんは美人なんで、協力しよっと。美人には優しくしないと。あたしは美しさに弱いんよ。女のくせに、美人に優しくするとは珍しいって? そんなこたーないわよ、クラウディアさんみたいな国宝級の完璧美人なら許すよ。

 大した顔してないのに、美人を気取っている女にはムカツクけどね。
 それに完璧美人は性格が良いし、他人に優しいからね。
 じゃあ、お前は性格極悪で他人を虐めてばかりなのかって? ウルセー! コノヤロー! 死ね!

 さて、どうやらナロード王国政府はドラゴン秘儀団のことを世間には秘密にしたいらしい。あんなバカ集団がいるなんて、そりゃ王国にとって恥ずかしいよね。おまけに精鋭部隊の副隊長がその仲間だったなんて。裏切り部隊の故ロミオ少佐とその仲間たちについてはドラゴンを見てパニックになって味方に誤爆したということで片付けられたみたい。

「わかりました、クラウディア様。ご協力いたします」
「そうですか、ありがとうございます。では、私と一緒に首都の王宮に来て下さい」

 笑顔が戻ったクラウディアさん。やっぱり笑顔が素敵。

「ははー、クラウディア様。仰せの通りにいたします。ただ、ちょっと荷物をまとめますので、小一時間待ってください」

 貴賓室から集会場の一階に降りると、そわそわしているサビーナちゃんに会う。

「今、クラウディアさんに、この前、治癒していただいたお礼を言いにいくつもりなんですが、会ってくれるでしょうか」
「クラウディアさん優しいから会ってくれるよ。美人は優しいからね」
「プルムさんも優しいですね」

 うーん、あたしは美人じゃないけど優しいのか、美人だから優しいのか、どっちの意味でサビーナちゃんは言ったのか。
 まあ、どうでもいいか。

 さて、急がなきゃ。

 ああ、時間がない。
 リーダーに告白するんだ。

 宿屋に向かって、あたしは街道を前のめりになって走る。
 もしかしたら、二度と会えないかもしれないし。
 何て言えばいいの。
 好きな人に告白したことなんて一度もないし。
 ええい、ストレートに言えばいいんだ。

「好きです!」

 優柔不断なリーダーの隙をついて、押して、押して、押して、押しまくるんだ!
 押しまくった後は……リーダーにおまかせ!
 突撃あるのみ!
 愛があれば何もいらない。
 愛こそ全て!

 あれ、前方からバルドが歩いてくる。

「あっ、プルム」
「バルド、散歩?」

「あ、ちょっと言いたいことが……」
「今、忙しいの、何?」

 足踏みしながら、バルドと対応。

「ん~じゃあ、いいや」
「そう、じゃあ、後でねー!」

 宿屋に到着。
 三段抜きで階段を登って、二〇一号室の前にドキドキしながら立つ。

 バルドがいないとなると、リーダーは部屋に一人のはず。グッドタイミング!
 扉をノックする。

「……誰?」

 リーダーの声が聞こえてきた。

「あ、あのプルムです。ちょ、ちょっとお話が」

 あたしは緊張している。
 声が上ずっている。 

 リーダーはなかなか出てこない。
 どうしたの? もしかして、さっきのケガで動けない? 体調不良?
 やっと出てきた。

「や、やあ、プルム、何だい」

 顔が上気してるリーダー。
 服が乱れている。

 奥の方を見るとベッドでアデリーナさんが服を直している。
 アデリーナさん、頬を赤く染めて、恥ずかしそうな顔。
 まさか!

「え! え!」

 動揺するあたし。

「ああ、もう言っちゃおうかな。俺、アデリーナと結婚するんだ」

……………………………………………………

 宿屋から出て、街道の横の草原に、両手を頭の後ろで組んで寝っ転がる。
 リーダーとアデリーナさんがいる部屋はカーテンが閉まっている。

 さっきバルドが街道の途中で、あたしを止めたのはこの事だったのか。
 隣の部屋にいると二人に邪魔だろうからね。
 安普請の宿屋だし。

 今頃、ベッドの上で、あたしのせいで中断された試合の再開ですか。
 真面目で潔癖症でも、やってることはやってるのね、アデリーナさん。

 そういや、アデリーナさんを通じてリーダーに告白しようかと考えもしたんだっけ。
 恥かかなくて良かったあ。

 よかねーよ!
 アデリーナの奴、「ロミオ様ー!」とか嬌声をあげてたのに、今は安普請の宿屋の二階で嬌声あげとんのか! おっと、ダメダメ、下品なこと考えちゃダメ。だいたい、リーダーもアデリーナさんもあたしがリーダーのこと好きだなんて知らないし、あたしの一方的な片思いだもんね。

 雲ひとつない晴天の空。そよ風が吹く、気持ちがいい天気。
 気持ちがいいのに、あたしは涙を流す。
 さて、そろそろ試合は終わったかな。
 経験ないからよくわかんないけど。

 部屋に戻って、荷物をまとめなきゃ。

 リーダーにもさよならを……言いたくない!
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