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第3話:冒険者ギルドが襲われた
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夕方、アデリーナさんに会計担当者として、冒険者ギルドに組合料を払いにいくよう頼まれた。
「いってきまーす!」
あたしは冒険服に着替えて、宿屋を出発。
宿屋から冒険者ギルドを歩いて目指す。
今は、秋。
夕方近く、街道を歩いているときれいな夕焼け空が見える。
時間とともに色を濃くしていく赤い空。
「きれい……」
あたしは思わずつぶやく。
あたしはきれいなもの、美しいものに弱いんよ。
惹きつけられるの。
永遠に見ていたいわ。
さて、しばらくきれいな景色を眺めながら歩いていると、街道途中の賭博場が見えてきた。
派手な赤い看板が私を誘う。
うーん、こちらにも惹きつけられる。
賭博場も美しいのかって? いや、美しくはないけど、やっぱり惹きつけられちゃうんよ。
え? ギャンブル依存症? 違うわよ! と言いたいとこだけど、うむむ、そうかもしれないわね。
うーん、困ったなあ。
今、懐が温かいんよ。
ダメダメ、これはみんなから預かった大切なお金。
ちゃんと冒険者ギルドに納めないと。
ダメダメと言いながらも、もっと増やせるかもしれないわ。
ギャンブル好きの言い訳ね。
「少しくらい、いいか」
体が賭博場に吸い込まれた。
……。
賭博場から放り出された。
「イカサマだあ!」
わめくあたし。
「おととい来やがれ!」
賭博場の用心棒にどつかれ、街道からはずれて草むらにゴロゴロと転がる。
「痛!」
薔薇の花やら何やらのトゲで顔を切った。
踏んだり蹴ったり。
組合費も自分のお金もギャンブルで全部パーにしちゃった。
どうしよう。
トンズラしちゃおうかな。
うーん、だけど、もともとギャンブルに負けて借金取りから逃げ回ったあげく、こんなド田舎に来たんよね。
もう逃げるところは山奥しかないじゃん。
悩んでると、突然、冒険者ギルドの方が騒がしくなった。
何事かと、草むらに隠れて様子を見ていると、馬に乗った黒装束の怪しげな連中が砂煙をあげて街道を走り抜けていく。
ん? あたしが隠れている草むらの前を通り過ぎたとき、何か落としていったぞ。
拾ってみると、丸くて平べったいペンダント。
何だか安っぽいペンダントだなあ。
だけど、ドラゴンのデザインはかっこいい。
かっこいいので貰っておこうっと。
おしりのポケットに入れておく。
冒険者ギルドに行って、情報収集しようかしら。
大勢の村人たちが集まっているぞ。
「何が起きたんですか?」
あたしは見物している村人たちに聞く。
「冒険者ギルドが盗賊らしき連中に襲われたらしい」
村人の方々に教えてもらった。
冒険者ギルドに何か宝物でもあったのかな。
「ギルドの主人が殺されたらしいぞ」
「あらまあ、それはかわいそうに」
かわいそうと思いつつ、ひらめいた!
博打でスッカラカンの件は、盗賊のせいにしよっと。
あたしは宿屋に帰ると、フラフラしながらリーダーのいる部屋に入り、倒れこむ。
もちろん演技。
「大変……冒険者ギルドが何者かに襲われたの……ギルドの主人が殺されたみたい」
「大丈夫か、プルム、顔が傷だらけじゃないか」
リーダーが優しく抱き起こしてくれる。
「ケガは大したことないです……」
薔薇のトゲだから、大したことないのは当たり前ね。
そして、バルドがあたしに聞いてくる。
「さっき、馬が何頭か街道を駆け抜けて行ったが、そのことか」
「……多分、そうだと思います。預けたお金も奪われたみたい、申し訳ありません」
「いや、これは仕方がない、気にするな。組合料の件はギルドに少し待ってもらおう」
リーダーありがとうございます!
自分の部屋に戻って、アデリーナさんに顔のケガを手当てしてもらう。
「大した傷じゃないわ。痕は残らないでしょう」
「お手数をおかけしてすみませんでした、アデリーナさん」
あたしがアデリーナさんにお礼を言ってると、廊下からゾロゾロと人が歩く音がして、隣の二〇三号室に入った。
新しい宿泊客かな。
そして、二〇三号室との中扉が開く。
まずい! 鍵を閉めとくの忘れてた。
かっこいい魔法使いの服を着ている男が入ってきた。
「おっと、失礼した」
あたしらを見るなり、扉を閉めかけるとアデリーナさんがその男に声をかけた。
「イヴァーノじゃない」
「何だ、お前も呼ばれたのか」
アデリーナさんと知り合いかな、この男性は。
「呼ばれたって、どういうこと」
「盗賊が出たんで、討伐隊を結成するからって呼ばれたんだけど」
「そう、知らなかった」
「まあ、お前も参加するなら、よろしく」
イヴァーノと呼ばれた男は顔を引っ込めた。
サビーナちゃんがアデリーナさんに聞いている。
「アデリーナさんはあの方を知ってるんですか」
「名前はイヴァーノ・アルベリーニ。ちょっと、知ってるだけ。あの人も魔法使いだけど、いい加減なところがあるから、あんまり好きじゃない」
厳しいご発言のアデリーナさん。
もしかして、男嫌い?
アデリーナさんがリーダーに討伐隊の件を報告しに行った。
中扉の鍵がなぜか開いていたことは、うやむやに。
助かった。
それにしても、盗賊討伐隊か。
もし、うちらのパーティが参加するなら、もうちょっと調子の悪いふりをしておこうっと。
さぼりたい……じゃなくて、もう少し休みたいだけよ。
「いってきまーす!」
あたしは冒険服に着替えて、宿屋を出発。
宿屋から冒険者ギルドを歩いて目指す。
今は、秋。
夕方近く、街道を歩いているときれいな夕焼け空が見える。
時間とともに色を濃くしていく赤い空。
「きれい……」
あたしは思わずつぶやく。
あたしはきれいなもの、美しいものに弱いんよ。
惹きつけられるの。
永遠に見ていたいわ。
さて、しばらくきれいな景色を眺めながら歩いていると、街道途中の賭博場が見えてきた。
派手な赤い看板が私を誘う。
うーん、こちらにも惹きつけられる。
賭博場も美しいのかって? いや、美しくはないけど、やっぱり惹きつけられちゃうんよ。
え? ギャンブル依存症? 違うわよ! と言いたいとこだけど、うむむ、そうかもしれないわね。
うーん、困ったなあ。
今、懐が温かいんよ。
ダメダメ、これはみんなから預かった大切なお金。
ちゃんと冒険者ギルドに納めないと。
ダメダメと言いながらも、もっと増やせるかもしれないわ。
ギャンブル好きの言い訳ね。
「少しくらい、いいか」
体が賭博場に吸い込まれた。
……。
賭博場から放り出された。
「イカサマだあ!」
わめくあたし。
「おととい来やがれ!」
賭博場の用心棒にどつかれ、街道からはずれて草むらにゴロゴロと転がる。
「痛!」
薔薇の花やら何やらのトゲで顔を切った。
踏んだり蹴ったり。
組合費も自分のお金もギャンブルで全部パーにしちゃった。
どうしよう。
トンズラしちゃおうかな。
うーん、だけど、もともとギャンブルに負けて借金取りから逃げ回ったあげく、こんなド田舎に来たんよね。
もう逃げるところは山奥しかないじゃん。
悩んでると、突然、冒険者ギルドの方が騒がしくなった。
何事かと、草むらに隠れて様子を見ていると、馬に乗った黒装束の怪しげな連中が砂煙をあげて街道を走り抜けていく。
ん? あたしが隠れている草むらの前を通り過ぎたとき、何か落としていったぞ。
拾ってみると、丸くて平べったいペンダント。
何だか安っぽいペンダントだなあ。
だけど、ドラゴンのデザインはかっこいい。
かっこいいので貰っておこうっと。
おしりのポケットに入れておく。
冒険者ギルドに行って、情報収集しようかしら。
大勢の村人たちが集まっているぞ。
「何が起きたんですか?」
あたしは見物している村人たちに聞く。
「冒険者ギルドが盗賊らしき連中に襲われたらしい」
村人の方々に教えてもらった。
冒険者ギルドに何か宝物でもあったのかな。
「ギルドの主人が殺されたらしいぞ」
「あらまあ、それはかわいそうに」
かわいそうと思いつつ、ひらめいた!
博打でスッカラカンの件は、盗賊のせいにしよっと。
あたしは宿屋に帰ると、フラフラしながらリーダーのいる部屋に入り、倒れこむ。
もちろん演技。
「大変……冒険者ギルドが何者かに襲われたの……ギルドの主人が殺されたみたい」
「大丈夫か、プルム、顔が傷だらけじゃないか」
リーダーが優しく抱き起こしてくれる。
「ケガは大したことないです……」
薔薇のトゲだから、大したことないのは当たり前ね。
そして、バルドがあたしに聞いてくる。
「さっき、馬が何頭か街道を駆け抜けて行ったが、そのことか」
「……多分、そうだと思います。預けたお金も奪われたみたい、申し訳ありません」
「いや、これは仕方がない、気にするな。組合料の件はギルドに少し待ってもらおう」
リーダーありがとうございます!
自分の部屋に戻って、アデリーナさんに顔のケガを手当てしてもらう。
「大した傷じゃないわ。痕は残らないでしょう」
「お手数をおかけしてすみませんでした、アデリーナさん」
あたしがアデリーナさんにお礼を言ってると、廊下からゾロゾロと人が歩く音がして、隣の二〇三号室に入った。
新しい宿泊客かな。
そして、二〇三号室との中扉が開く。
まずい! 鍵を閉めとくの忘れてた。
かっこいい魔法使いの服を着ている男が入ってきた。
「おっと、失礼した」
あたしらを見るなり、扉を閉めかけるとアデリーナさんがその男に声をかけた。
「イヴァーノじゃない」
「何だ、お前も呼ばれたのか」
アデリーナさんと知り合いかな、この男性は。
「呼ばれたって、どういうこと」
「盗賊が出たんで、討伐隊を結成するからって呼ばれたんだけど」
「そう、知らなかった」
「まあ、お前も参加するなら、よろしく」
イヴァーノと呼ばれた男は顔を引っ込めた。
サビーナちゃんがアデリーナさんに聞いている。
「アデリーナさんはあの方を知ってるんですか」
「名前はイヴァーノ・アルベリーニ。ちょっと、知ってるだけ。あの人も魔法使いだけど、いい加減なところがあるから、あんまり好きじゃない」
厳しいご発言のアデリーナさん。
もしかして、男嫌い?
アデリーナさんがリーダーに討伐隊の件を報告しに行った。
中扉の鍵がなぜか開いていたことは、うやむやに。
助かった。
それにしても、盗賊討伐隊か。
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