隣のマンションの白い壁

守 秀斗

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第10話:自撮りに飽きてきた

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 趣味は自撮りの私でも、そろそろネット投稿だけじゃあ、飽きてきたわ。やっぱり直に見てほしいわね。男の人から、いやらしい視線で見られたい。淫らな視線で私を乱暴してほしいの。ねっとりとした視線で私の全身を舐め回してほしいの。ああん、大勢で視線で嬲ってほしいわね。

 とにかく、いろんな方向からきれいな私を見てほしいのよ。そんなわけで、今日は昼間に外出。人がいっぱいいる場所に行くことにした。そこで、私のきれいな体を見てもらいたいの。デパートにでも行こうかしら。

 今日の格好は体にぴったりとした超ミニドレス。しかも銀色にピカピカ光っている。背中も大きく開いていて、セクシーだわ。前にピンヒール履いて、スっ転んでしまったので、今日はロウヒールのパンプスを履く。転んだのは情けなかったなあ。でも、いやらしい私は、今回別のことを試みる。下着無しなの。

 それで、ミニを着る。
 ぴったりとしたドレスだから、多分、見えないでしょうけど。

 私、完全な変態ね。
 けど、見られたいわ、このきれいな体を。

 みんなに見られたい、注目されたいの。

 だから、このナルシス女、うざいって?
 いいじゃないの、別に悪い事してないわって、私はきれいなの、若いのよー!

 何度言ったかしらね。
 無量大数くらいかしら。

 さて、愛車の軽自動車で近くのデパートへ行く。そこで自動車から降りて、デパートの外周を銀色の衣装で闊歩する私。男の人が見てるわ。みんな見てる。下着無しでワンピース一枚の私を。ああ、興奮してきた。大事なところが濡れてきそう。

 と言うか、今日はすごく暑い。
 真夏日。
 汗だく。

 太股あたりも汗まみれ。玉のような汗が脚を流れいって、何だかいやらしいわ。けど、何だか興奮してきた。あそこからも垂れ流してしまいそうね。

 興奮するなよ、お前は変態かって?
 変態ですよー!

 でも、ちょっと暑すぎるわね。デパートの中に入る。ああ、涼しいわ。デパートの案内係の女性が私のことを見て不審な顔をする。なに、このいやらしい格好の女はって感じかしら。

 でも、いいわ。

 私は美しいの。
 このきれいなボディを見てほしいのよ。

 まあ、せっかくデパートに来たんだから、なにか小物でも買っていこうかしら。私はエスカレーターに乗った。エスカレーターの横は鏡になっている。きれいな私が映っているわ。すっかり満足する私。まあ、この変態ナルシス女って、周りから思われてるんだろうな。いいじゃないの、きれいなんだから、って、また同じ事を考えてしまう。

 さて、すっかりいい気になってると、私の背後で怒鳴り声がした。あら、男の人たちがケンカしてる。何だろうと思ったけど、気の弱い私は巻き込まれるのが嫌なので、そのままさっさと上の階に行っちゃった。

 ふう、何なんだろう。まあ、私には関係ないわとアクセサリーやらいろいろと小物を見ていると、知っている男性が立っていた。元カレじゃないの。元カレと言っても例の佐島君じゃないわよ。最近まで付き合ってた人。

「千里じゃん。相変わらずそんな格好してんの」

 何だか、バカにした顔でミニドレス姿の私のことを見る元カレ。うるさいわね、いいじゃないの。セクシーな姿を見せて何が悪いのよ。すっかり不機嫌になる私。

「仕事のほうはどうだ」
「つまんないわよ」
「だから、ストレス解消でそんな格好してんの。お前、バカじゃないの」

 バカとはなによ、バカとは。変態ならいいけど。ああ、イラつく。さっさと帰ろうとすると、あら、小学生くらいの女の子が新品のランドセルを持って元カレに近づく。妹さんかしら。でも、兄弟姉妹はいないって聞いてたなあ。姪っ子さんかしら。でも、何やら元カレが焦っている。そして、その女の子が元カレに聞いている。

「この人、どなた」
「いや、えーと、知り合い」
「え、もしかして変態の元彼女かしら」

 変態!
 何よ、この小学生は。
 腹立つー!
 事実だけど。

「あの、誠に申し訳ありませんが、私の彼に近づかないでください」

 は? 彼。
 え、小学生の彼女なの。
 え、それはさすがにまずいんじゃないの。

 すると、元カレが焦って私に説明する。

「この人は会社の同僚なんだ」

 えー、小学生にしか見えないわよ。こんな幼い顔して、もう成人なの。まあ、幼い顔の女性って日本人に多いけどね。

 でも、なんでランドセル持ってんの。

「じゃあ、これで」

 焦って帰ろうとする元カレ。
 でも、そのまるで小学生みたいな彼女はランドセルを見せつけて、私に勝ち誇ったように言った。

「うふふ、これで夜を楽しむのよ」

 え? どういう意味。彼女にランドセルを背負わせて楽しんでんの? ランドセルプレイ?
 思わず言ってしまった。

「それ、変態じゃないの」

 すると、元カレが怒って言った。

「お前ほど変態じゃないよ!」

 そして、彼女の手を引っ張って去っていく。もしかして、元カレってロリコンだったの。ロリだからボンデージファッションなんて大人の格好は嫌だったのかしら。だったら、あんただって真性変態じゃないの。

 ああ、でもどうでもいいわ。私も変態だから。他人の性的嗜好に興味無いわ。でも、ちょっと高給取りの元カレに未練があったけど、これで完全になくなったわ。ロリコンとは付き合えないわね。私は大人の男性と付き合いたいの、支配されたいの。服従したいの。たくましい男性に征服されたいのよ。

 女はみんなそう思ってるのよ!
 え? お前だけだって?
 そうなのかしら。
 
 そして、結局、何も買わずに帰る。貧乏だからね。この銀色のドレスも安物よ。

 でも、振り返ると今日はいい気分だったわ。いろんな人に見られて。やっぱり、ネットじゃなくて実際に見られる方が気持ちいいわね。

……………………………………………………

 後日、ネットに動画が投稿されていた。

『スマホで盗撮する男』って題名。

 で、動画を見ると、私が映ってるじゃないの。あら、私の背後からスマホで、私の股の間を撮影している男を横から映している動画だわ。その男を、他の男の人たちが捕まえている。でも、私はさっさと上の階に行って動画から姿が見えなくなる。顔はよく映ってないわね。

 動画にいろいろとコメントが書き込まれている。

『男って、本当にいやらしい』ってコメントから、『こんないやらしい格好をしている女の方が悪い』ってコメントもあるわね。

 でも、私は別の事を考える。この盗撮した人は、デパートの事務室とかに連れていかれたのかしら。そして、そこでデパートの関係者と一緒に、撮影した私の大事な部分を確認したのかしら。複数の男の人に下着を履いていないあそこを見られちゃった。そのことを想像して、興奮してくる私はやっぱり変態ね。

 私が一番いやらしいわね。興奮しちゃって、また自分でしちゃったわ。

……………………………………………………

 今日は遊園地のプールに行くことにした。大勢の男性に私のセクシーな姿を見せつけたいの。そして、いやらしい視線で見られて興奮するのよ、私は。

 おまけに、今回は仕事の方で失敗ばかりでストレスマックス状態!
 もう、爆発しそうよ!
 それもこれも、全部、ブラック企業が悪いのよ!
 注目を浴びるとストレスが解消されるのよ!

 まあ、会社は悪くないかな、私が変態なだけね。

 そんなわけで、思いっ切り胸が開いた過激なハイレグ水着で降臨する私。ちょっとどよめきが起きたような。ああ、全ての男性が私を見てるわ。最高の気分。ああん、気持ちいいわ。女性は呆れてるけど。どうでもいいわ。すっかりいい気になって、プールサイドを歩いていると、呼び止められた。ああ、やっぱり来たかと私は思った。

 プールの監視員さん。
 ちなみに女性。

「あのー、申し訳ありませんが、こちらの施設では過度に露出した水着は禁止されておりますので売店で別の水着を購入して着替えてくれませんでしょうか」
「そ、そうですか。あの、別の水着を持ってきているのですぐに着替えてきます」

 実は気の弱い私。あっさりと更衣室に戻る。まあ、多分、怒られると思っていたけど、やっぱりね。でも、市民プールにくらべると対応はやさしい。やっぱり遊園地は民間営業だから、私はお客さんってことだからかしら。さて、あらかじめ用意していた水着に着替える私。

 だったら、最初から変態水着を着るなよって? 
 
 だから、私は見られたいの!
 見てほしいの!

 いろんな人に注目されたいのよ!
 いいじゃない、それくらい。

 男性だってつまんないでしょ! なんで、ハイレグ水着廃れちゃったのよ! もう、ハイレグ新党を作って都知事選に出馬したいくらいだわ。公約はハイレグ水着以外禁止! もう、都知事選終わっちゃったけど。次は四年後か。その頃、私は二十六才。まだ、大丈夫ね。
 って、バカなことを考えてしまう。

 さて、着替えたけど、やっぱりハイレグ水着。これは信念ね。ハイレグを着るのよ、私は! ハイレグは永遠に不滅よ! まあ、わりと角度はおとなしめだけどね。そして、胸の部分は普通に隠れているワンピースだけど、背中は大きく開いている。首の後ろの部分で結ぶホルターネックの水着ね。これはこれでなかなか色っぽいわ。

 それに、白い水着なのよ。白い水着って透けやすいのよ、セクシーだわ。他の色の水着も全部透けるけど、特に白色は透けやすいの。まあ、今回はアンダーショーツは履いているけど。上はパットがついてないの。

さて、先程の監視員さんのとこへ、一応確認を取りに行く。

「あの、これでどうでしょうか」

 私のややハイレグ水着姿を見て、ちょっと首をかしげる女性監視員さん。

「うーん、まあ、いいでしょう」

 やった! 監視員さんの許可を得たわよ。これで堂々とプールサイドを歩けるわ。先程みたいな注目は浴びないけどね。まあ、いいや。さて、過激な衣装を一度は着て、大勢に見られてすっかりウキウキしてご満悦の私。ちょっと水深の浅いところで、一旦、プールに入る。ちょっと泳いで、すぐにあがる。ああ、私の体が透けて見えるわ。そして、みんなが見てるの、ああ、興奮する。

 本当に変態だなあって?
 変態よ。

 すっかり気持ち良くなる私。おっと、ウォータースライダーがある。ちょっと、ゴール地点の水深を確かめる。大丈夫ね、足がつく深さだわ。たまにはこういうので遊んでみようかしら。でも、ハイレグが深くなって、大事なとこが見えたらまずいかな。ちょっと注意しよう。

 そして、順番が来た。外から見るよりけっこう高いなあ。まあ、大丈夫でしょう。私はウォータースライダーで滑る。あっと言う間に滑り落ちる。なかなか面白いじゃないと思ったら、首の後ろで結んでいた水着が解けてしまった。うわ! おっぱい見られちゃった。恥ずかしい!

 お前、変態水着を着て、喜んでいたんじゃないかって?

 いや、突然、予期してないことが起きるとやっぱり恥ずかしいわ。見られたいけど、あからさまに見られるのは恥ずかしいのよ。

 おまけに先程の監視員さんがやって来た。

「あの、失礼ですが、わざとじゃないですよね」
「いえ、違いますよ。アクシデントです」
「そうですか……」

 ふう、市民プールだったら、また事務室で説教くらうとこだった。

 さっさと家に帰る。ああ、恥ずかしかった。何、恥ずかしがってんだ、この変態女って?
 私にもまだ乙女心は残ってるのよ!
 え? 乙女はあんな変態水着は着ないって?

 それはどうもすみませんでした!

 でも、大勢の人に胸を見られたことに、ちょっと興奮している自分を自覚して、やっぱり、変態だなあと思ってしまう私であった。
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