16 / 24
Pr.16 陽キャは誰かの家に来たがる
しおりを挟む
「それじゃ、また夏休み明け。解散!」
担任がそう言って、夏休み前最後の日が終わった。これからは課題に追われるだけの日々になるだろう。それでも、学校の時間が減るわけだから、当然自由な時間も増えて…
今日は家に帰ったら一学期終了記念のトモとお祝いパーティーでもやろうと思ったのだが…
「なんでついてきている?」
「何となく、橘くん一人暮らしって言ってたし。」
渡月がついてきているこの状況。俺は果たして自由なんだろうか。
「どうせ暇でしょ?」
「暇じゃないと言ったら?」
「ん~、精神攻撃?」
「考えてることやばすぎだろお前。」
とりあえず並んできたので仕方なく一緒に歩く。いつもなら俺より3駅先に降りるはずなのに降りなかったのはこのためか。
近くのスーパーでポテチとコーラ、冷凍のピザ、そしてミント味のガムを買ってレジ袋を持つ。俺の後ろに並んでいた渡月はカップ焼きそばとサイダーを買っていた。
「地味に俺ん家で昼飯食おうとしてるよな。」
「悪い?寂しい寂しい橘くんの相手してあげようと思ってるのにな。」
寂しいが1個多いと思いつつも、とりあえずついてくる渡月が置いていかれないように歩く。
「あれれ?ダッシュで逃げてもいい所なのに、逃げないんだ。へぇ~。」
「うっせ。ここまで来たんだからもういいかって思えてんだよ。」
鍵を空けて家の中に入る。渡月も招き入れて…の前に一度外で待ってもらうことにした。そう。何も片付けていないのだ。
10分くらいでとりあえず人の住めるような環境に変えて招き入れる。
「ほぇ~、見た目によらず思ったよりちゃんとしてるんだね。」
「今日は自炊じゃないけどな。」
さっき買ったのは昼兼夜兼徹夜のお供。トモとはとりあえずゲームでもして徹夜することになっているのだ。
「それなら夕方ぐらいで私帰ることにするね。ここなら家からそう遠くないって分かったし。」
「どういうことだ?」
「私ね、3駅ぐらい短い区間で定期券買ってて、いつも3駅分自転車漕いでるんだ。」
「親には?」
「ちゃんとした区間で買ってるって言ってる。」
「悪いやつめ。」
「ずる賢いんです~!」
俺がピザを焼いている間に渡月は勝手にお湯を沸かし、そしてカップに注ぎ始める。つまり、渡月が住んでいるのは同じ最寄りの駅ということだ。
「それでどこに住んでるんだ?」
「え~っ!それ聞いちゃう?」
「そりゃあもちろん。」
「向かいのアパート。」
「向かいのアパート…って近すぎるな。」
俺の家の前には道路を挟んでもう1つアパートがある。そこはここよりちょっとだけ家賃が高いが、新しいアパートでめちゃくちゃ綺麗なのだ。
「まあそんなわけだから、この夏休みの間入り浸らせてもらうね。電気代かさむし。」
「それなら俺の家だってそうだぞ。」
「じゃあ私ん家来る?」
「その答えはNOだ。」
「ちぇー。」
なんて喋っていたらチーンと音がする。ピザが焼きあがったようだ。渡月はシンクにお湯を流し、湯切りする。俺はピザをさらに乗せ、6等分する。そして食器棚からグラスを2つ出した。
「てんきゅ。」
渡月はそれを受け取り、テーブルの上に置いてサイダーを注ぐ。俺もコーラを注いでグラスを持った。
「それでは一学期終了を記念して、家が近いという事実を記念して乾杯!」
「乾杯!」
こうして予定外のパーティーが始まった。
一学期のことを振り返りながら喋っているともう5時半。かれこれ5時間ほど喋っていたことになる。
「それじゃあ、私は明日みんなと遊びに行くから。友達の橘くんとはとりあえずバイバイ!また凸るから!」
そう言って渡月は部屋を出ていった。
テーブルの上に残る白いカップと空のグラス。そして空のベットボトル。そのどれもが渡月がここにいた証拠だ。
「はぁ~…」
俺はテーブルの上を片付けながら今日の夜のことを考える。結局夜の分もと思って買ったピザは食べてしまった。かと言って作るのも面倒だ。
冷凍庫を覗けば、そこには業務用のフライドポテトがあった。
「これにすっか。」
トモに「6時半くらいから」と連絡すると、「ごめん9時からでいい?」と返信が帰ってくる。「おけ」とだけ返して、俺はスマホゲームを少しすることにした。
時間だけが静かに流れていき、8時過ぎになる。俺は一度ゲームを切り上げて、ポテトを揚げ始める。今日の晩餐はポテトとポテチ。油まみれだがこれでいい。マッチングのときに食って手を拭いたらいいだけだからな。
そして約束の9時になる。
『よぉっす。一学期お疲れぃ。』
「お疲れ。そっちの方がきついだろ。」
『いや、そう変わらんぞ。航のテスト見てたらうちの学校とほぼ変わらんし。』
「そんなもんか?」
喋りながらゲームのルームを作る。
『今日は何やんだ?』
「いつもの。」
『おっけー。』
トモも同じゲームを開き、ルームに俺が招待する。今日はイベントの開始日。トモと2人でタッグを組み、それで潜り続けるつもりだ。
「いつも通り寝たら罰ゲな。」
『今回はどうする?』
「明日、配信者の誰かと当たるまで寝れまてん。」
『しんど。』
宴の始まりだ。
担任がそう言って、夏休み前最後の日が終わった。これからは課題に追われるだけの日々になるだろう。それでも、学校の時間が減るわけだから、当然自由な時間も増えて…
今日は家に帰ったら一学期終了記念のトモとお祝いパーティーでもやろうと思ったのだが…
「なんでついてきている?」
「何となく、橘くん一人暮らしって言ってたし。」
渡月がついてきているこの状況。俺は果たして自由なんだろうか。
「どうせ暇でしょ?」
「暇じゃないと言ったら?」
「ん~、精神攻撃?」
「考えてることやばすぎだろお前。」
とりあえず並んできたので仕方なく一緒に歩く。いつもなら俺より3駅先に降りるはずなのに降りなかったのはこのためか。
近くのスーパーでポテチとコーラ、冷凍のピザ、そしてミント味のガムを買ってレジ袋を持つ。俺の後ろに並んでいた渡月はカップ焼きそばとサイダーを買っていた。
「地味に俺ん家で昼飯食おうとしてるよな。」
「悪い?寂しい寂しい橘くんの相手してあげようと思ってるのにな。」
寂しいが1個多いと思いつつも、とりあえずついてくる渡月が置いていかれないように歩く。
「あれれ?ダッシュで逃げてもいい所なのに、逃げないんだ。へぇ~。」
「うっせ。ここまで来たんだからもういいかって思えてんだよ。」
鍵を空けて家の中に入る。渡月も招き入れて…の前に一度外で待ってもらうことにした。そう。何も片付けていないのだ。
10分くらいでとりあえず人の住めるような環境に変えて招き入れる。
「ほぇ~、見た目によらず思ったよりちゃんとしてるんだね。」
「今日は自炊じゃないけどな。」
さっき買ったのは昼兼夜兼徹夜のお供。トモとはとりあえずゲームでもして徹夜することになっているのだ。
「それなら夕方ぐらいで私帰ることにするね。ここなら家からそう遠くないって分かったし。」
「どういうことだ?」
「私ね、3駅ぐらい短い区間で定期券買ってて、いつも3駅分自転車漕いでるんだ。」
「親には?」
「ちゃんとした区間で買ってるって言ってる。」
「悪いやつめ。」
「ずる賢いんです~!」
俺がピザを焼いている間に渡月は勝手にお湯を沸かし、そしてカップに注ぎ始める。つまり、渡月が住んでいるのは同じ最寄りの駅ということだ。
「それでどこに住んでるんだ?」
「え~っ!それ聞いちゃう?」
「そりゃあもちろん。」
「向かいのアパート。」
「向かいのアパート…って近すぎるな。」
俺の家の前には道路を挟んでもう1つアパートがある。そこはここよりちょっとだけ家賃が高いが、新しいアパートでめちゃくちゃ綺麗なのだ。
「まあそんなわけだから、この夏休みの間入り浸らせてもらうね。電気代かさむし。」
「それなら俺の家だってそうだぞ。」
「じゃあ私ん家来る?」
「その答えはNOだ。」
「ちぇー。」
なんて喋っていたらチーンと音がする。ピザが焼きあがったようだ。渡月はシンクにお湯を流し、湯切りする。俺はピザをさらに乗せ、6等分する。そして食器棚からグラスを2つ出した。
「てんきゅ。」
渡月はそれを受け取り、テーブルの上に置いてサイダーを注ぐ。俺もコーラを注いでグラスを持った。
「それでは一学期終了を記念して、家が近いという事実を記念して乾杯!」
「乾杯!」
こうして予定外のパーティーが始まった。
一学期のことを振り返りながら喋っているともう5時半。かれこれ5時間ほど喋っていたことになる。
「それじゃあ、私は明日みんなと遊びに行くから。友達の橘くんとはとりあえずバイバイ!また凸るから!」
そう言って渡月は部屋を出ていった。
テーブルの上に残る白いカップと空のグラス。そして空のベットボトル。そのどれもが渡月がここにいた証拠だ。
「はぁ~…」
俺はテーブルの上を片付けながら今日の夜のことを考える。結局夜の分もと思って買ったピザは食べてしまった。かと言って作るのも面倒だ。
冷凍庫を覗けば、そこには業務用のフライドポテトがあった。
「これにすっか。」
トモに「6時半くらいから」と連絡すると、「ごめん9時からでいい?」と返信が帰ってくる。「おけ」とだけ返して、俺はスマホゲームを少しすることにした。
時間だけが静かに流れていき、8時過ぎになる。俺は一度ゲームを切り上げて、ポテトを揚げ始める。今日の晩餐はポテトとポテチ。油まみれだがこれでいい。マッチングのときに食って手を拭いたらいいだけだからな。
そして約束の9時になる。
『よぉっす。一学期お疲れぃ。』
「お疲れ。そっちの方がきついだろ。」
『いや、そう変わらんぞ。航のテスト見てたらうちの学校とほぼ変わらんし。』
「そんなもんか?」
喋りながらゲームのルームを作る。
『今日は何やんだ?』
「いつもの。」
『おっけー。』
トモも同じゲームを開き、ルームに俺が招待する。今日はイベントの開始日。トモと2人でタッグを組み、それで潜り続けるつもりだ。
「いつも通り寝たら罰ゲな。」
『今回はどうする?』
「明日、配信者の誰かと当たるまで寝れまてん。」
『しんど。』
宴の始まりだ。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
妻がエロくて死にそうです
菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。
美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。
こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。
それは……
限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
おっぱい揉む?と聞かれたので揉んでみたらよくわからない関係になりました
星宮 嶺
青春
週間、24hジャンル別ランキング最高1位!
高校2年生の太郎の青春が、突然加速する!
片想いの美咲、仲の良い女友達の花子、そして謎めいた生徒会長・東雲。
3人の魅力的な女の子たちに囲まれ、太郎の心は翻弄される!
「おっぱい揉む?」という衝撃的な誘いから始まる、
ドキドキの学園生活。
果たして太郎は、運命の相手を見つけ出せるのか?
笑いあり?涙あり?胸キュン必至?の青春ラブコメ、開幕!
可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~
蒼田
青春
人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。
目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。
しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。
事故から助けることで始まる活発少女との関係。
愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。
愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。
故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。
*本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。
男子中学生から女子校生になった僕
葵
大衆娯楽
僕はある日突然、母と姉に強制的に女の子として育てられる事になった。
普通に男の子として過ごしていた主人公がJKで過ごした高校3年間のお話し。
強制女装、女性と性行為、男性と性行為、羞恥、屈辱などが好きな方は是非読んでみてください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる