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Pr.15 授業をまともに受けていないやつほど点数を取れる

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 テストで得点を取れる人と取れない人には色々法則がある。例えばノートのとり方。綺麗なノートと汚いけどどこに何が書いてあるのかはっきりしている、分かりやすいノートをとる2人がいるとする。その場合、多くの場合は後者がテストの得点が高くなる。また、テストを覚えるものと考えている人と、解けるものと考えている人がいた場合、定期テストでは前者の方が点数が高くなり、模試などの実力テストでは後者の点数が高くなる。

 そして最後に、授業をまともに受けるやつとまともに受けないやつ。この場合、何故か知らないが後者のほうが点数が高い場合が多いのだ。

「何考えてるの?」
「ん?この世の不条理について。」

出席番号順に戻されて、期末テストを終え、テストが返ってくる。俺はどの教科も平均ちょい上くらい。得意教科の化学や数学は平均+20くらい取れているが、その他はあまり奮っていない。

 それに比べて後ろの席に座るこの女。どれもこれも高得点ばかりで、非常に腹立たしい。

「あ~、授業まともに受けてないのに私の点数が高いことに嫉妬してるのかぁ。ごめんね~才能だから。こればかりはどうすることもできないや。」
「それ以上俺の気に障ることを言ってみろ。明日から一生喋れない口にしてやるよ。」
「きゃーこわーい(棒)」

煽り性能高めの口調に煽り性能高めの言葉。しかも言い返せないのがくそ悔しい。マークシートの解答のクラス順位のところにはいつも『1』だけ書かれてるし、学年順位、理系だけの順位では『1』か『2』しか書かれていない。それもそのはず、隣のクラスにこれよりも遥かにヤバい化け物がいるからだ。

「でも、原野くんは全部満点なんだろうな。」

原野航。隣のクラスの化け物の名前だ。同時に俺の親友原野知己の双子の弟でもある。

「だろうな。噂によると理IIIのA判定なんだろ?」
「そそ。全国模試3位。理系教科に至ってはダントツの1位。国語のとりこぼしがなければ全国1位も見えてくるらしいよ。」
「ほぇ~。」

ちなみにその40個下ぐらいにトモの名前がある。双子揃って化け物みたいな脳みそをしている。

 それはそうと、とりあえず得点を集計してみる。ほとんどが80点前後だから、合計は8割ちょい上くらい。まぁ、俺にしては上出来だ。

「その表情は前回よりもいい感じ?」
「なんで前回そんなだったのを知ってんだよ。」
「そりゃあ前見たら微妙な顔してるやつがいるんだもの。嫌でも目に入るっての。」

渡月は笑いながらそんなことを言う。また煽りやがったこいつ。

「んで、得点が上がった要因は?」
「誰かさんがずっと寝てるから、ちょっと真面目に授業受けて、先生の話メモするようになっただけ。そのおかげでノートは汚いけど。」
「そう?分かりやすいけど。」

ノートが汚い人にも得点の差はある。それを決めるのが、ただ汚いノートなのか、分かりやすいノートなのかだ。

「意識してるからな。でも、そんなノートとるようになって復習はしやすくなったかも。」
「ほほう。これは私のおかげですな。」
「自慢げに言うことじゃねぇぞ。」

 そしてだ。渡月のノートは本当に分かりやすい。俺のノートを見て、大切な情報だけ全て抜き取って書いてるからか、よく洗練されたノートになっている。

「一度経験してみろ、この面倒くささを。」
「そのことに関しては本当にありがたく思っております。」
「てか、中間のときはどうしてたんだ?どうせ寝てたんだろ?」
「あのときは昼の休み時間に橘くんのノート貰ってたから。」
「は?」
「あっ…てへっ!」
「よぉーし使用料でなんか奢ってもらおうか。あっそうだ俺今めちゃくちゃ眠たいんだよな。でも、200円じゃ安いし、220円でも足りない気がする。ん~実に悩ましい。」

わざとらしくあざとい表情を見せた渡月のことはとりあえず放っておいて、欲しいものを考えていく。

「いや、普通に味好きだから220円のやつにしよう。な、使用料くらい払えよ。」
「あっ、えーっと3乗のほうにしてもらえると…」
「ノーマルでいいから。」
「えっとね、3乗のほうが効くと思うんだけど。」
「ノーマルの方がお財布にダメージ入るだろ?」
「こいつ容赦ねぇな。」

休み時間の始まりを告げるチャイムが鳴って、渡月は恨めしそうな顔をして席を立つ。その手に財布を持って。

 数分後、戻ってきた渡月の手元には、2本のエナドリがあった。

「どうしたんだ?いつも飲んでないだろ?」
「たまにはいいかなーって。」

渡月からそのうち1本を受け取って、片手でプシュッと開ける。

「何その開け方!?やってみたい!」
「やめとけ。ここでこぼしたら大惨事どころじゃすまねぇぞ。」
「え~!いいじゃーん!」

渡月も片手でプシュッと開けようとするが、力が入らず顔だけ真っ赤になっている。

「開けれない…」
「普通に開けろって。」
「そうする。」

しゅんとした子供のようになって、結局机の上でプシュッと開けた。それを見てから俺はエナドリを喉に流し込む。添加物が身体に染み渡る。この感じがやっぱり好きだ。
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