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Pr.5 友達とは何かを陰キャは知らない
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友達とは何か。高校生活を送る、俺たち青春真っ盛りの10代にとっては最も重要な課題の一つと言えるこの問題の答えに辿り着いた者はそう多くないだろう。辿り着いた者ですら、それが果たして正解なのか、それも分からないだろう。
それでも人々はこの課題に向き合ってしまうのだ。自分が何者なのかを知るために。
今日も今日とて教室。授業が終わって担任からの連絡を聞き流しているのだが、他の声がどうも混じってくる。
「ねぇ、今1番おすすめのラノベってなに?」
今日の朝からこんな感じで話しかけられている。昨日、俺の趣味がラノベって知ってから、こうやって聞いてくるのだ。
(なんでここまで俺に構ってくるんだろう。)
「なんでここまで俺に構ってくるんだろうって顔してる。それはね。橘くんと友達になりたいから。」
そんな渡月の何気ない一言。その中のある言葉が、俺の中に強く響いた。
そして本日の俺の問題が決まった。『友達とは何か』だ。今まで誰にも話しかけられず、誰とも話さずに生きてきたから、こんなことを考える必要がなかった。『友達』とかなど言われることがなかったのだ。
友達とは何か。
まずは友達というものの定義から。やれ遊んだとか、一緒に昼食を食べるだとか、連絡先交換したとか。10人いれば10人が別の回答をするだろう。ちなみに俺にはトモくらいしか友達がいたことがないから、これに関しては特に何も答えられない。
「私はよく話すようになったらって答えるかな?」
思考を読むな。渡月には聞いていない。
まあなどなど、友達というものにはいくつもの定義がある。その中で自分に都合のいい条件に当てはまる者のことを、人々は「友達」と言い張り、グループを形成するのだ。
次に、友達というものの必要性だが、俺はあまりないと考えている。理由としては、人間という生き物は、1人でもどうにか生きていけるように設計されているからだ。言語野の衰退とか記憶野の衰退とか、そんな問題はあるにしろ、基本的に生きてはいける。
それなのに友達という存在があるだけで、人は何故かそいつと一緒にいたくなり、依存してしまうのだ。それは人間としての機能を存分に使いきれていない証拠であり、自分自身を大事にできていないということにもなる。
「私はそうは思わないけどな。」
だから渡月には聞いてない。
そして最後に、友達がいることに関しての利点だ。あるとするならば、教科書を忘れたときに貸してもらえるとか、見せてもらえるとか。あるいは、授業中に分からない問題が会った時に、天の声になってくれるとか。まあ、そんなところだろう。あぁ、あと先輩との繋がりは過去問が貰えたりするから、それも必要になってくる…かもしれない。勉強しろって話なんだが。
ってな訳で、結局のところ『友達』とは何かを俺は知らない。陰キャなんて基本的にそんなものだ。友達と言える人が少ない以上、例として挙げられるものが少なくて、おかげで悩まされる。
そんなのが億劫になって、俺は友達というものを作らず、親友というものしか作らないと決めたんだ。
「なんか証明終わったみたいね。お疲れ様。」
気づけば時間が経っていて、もう終礼が終わりそうだ。俺の使いまくった脳内には、たまにノイズが入ってくるが、それもそのうち消えていくんだろう。
「消えないよ。橘くんが口をきいてくれるまで話しかけ続けるから。」
それも怖い話だ。俺はこの1年間をどうやって過ごせば良くなるんだ?
「さあ?」
渡月はそうやって俺の思考を読みながら会話をし、終礼が終わって全員が立ち上がる。そして礼をした。
俺はすぐに今日使った教材を持ってロッカーに行く。できるだけ早く行動することで、このときに誰とも話さないで済むからだ。
ロッカーの鍵をポケットから取り出そうとしていると、横から1人割り込んできた。
「先入れるね。」
渡月はそれだけ言って、俺の下のロッカーを開け、今日使った教材を直し始めた。その間にも何人もの生徒が教室から出てきて、一旦人が溢れかえる。
渡月は自分のロッカーを閉めて、そのままこっちを向いてきた。
「どいて欲しい?」
は?
「だからどいて欲しい?」
意味がわからない。どかない以外に選択肢があるのか?今、この状況で?
そんなことは口に出せずに、俺はちょうど渡月の頭の位置にあるロッカーの鍵に手を伸ばし、開けた。渡月に「どけ」と言わんばかりに。
「ちぇっ!これなら話せると思ったんだけどな。」
渡月は拗ねたようにそう言い残し、教室の中に戻って行く。何なんだと思いながら俺は教材を直した。
教室の中に戻ってみると、鞄を持った渡月が待っていた。誰かを。
「橘くん、帰ろ。」
俺には上手く聞き取れなかったようなので、とりあえず無視する。こんな言葉聞いたことがない。「イッショニカエル」なんて変な言葉があるものだ。
俺は持って帰る荷物をぱぱっと詰めて、鞄を持ち、そのままスタスタと教室を出る。
「待ってよぉ!」
その日、アイドル並みに可愛い美少女が、特になんの特徴もない、どこにでもいそうな陰キャの後ろを追いかけるとかいう異常現象が見れたそうな。本当に奇妙な話もあったものだ。
それでも人々はこの課題に向き合ってしまうのだ。自分が何者なのかを知るために。
今日も今日とて教室。授業が終わって担任からの連絡を聞き流しているのだが、他の声がどうも混じってくる。
「ねぇ、今1番おすすめのラノベってなに?」
今日の朝からこんな感じで話しかけられている。昨日、俺の趣味がラノベって知ってから、こうやって聞いてくるのだ。
(なんでここまで俺に構ってくるんだろう。)
「なんでここまで俺に構ってくるんだろうって顔してる。それはね。橘くんと友達になりたいから。」
そんな渡月の何気ない一言。その中のある言葉が、俺の中に強く響いた。
そして本日の俺の問題が決まった。『友達とは何か』だ。今まで誰にも話しかけられず、誰とも話さずに生きてきたから、こんなことを考える必要がなかった。『友達』とかなど言われることがなかったのだ。
友達とは何か。
まずは友達というものの定義から。やれ遊んだとか、一緒に昼食を食べるだとか、連絡先交換したとか。10人いれば10人が別の回答をするだろう。ちなみに俺にはトモくらいしか友達がいたことがないから、これに関しては特に何も答えられない。
「私はよく話すようになったらって答えるかな?」
思考を読むな。渡月には聞いていない。
まあなどなど、友達というものにはいくつもの定義がある。その中で自分に都合のいい条件に当てはまる者のことを、人々は「友達」と言い張り、グループを形成するのだ。
次に、友達というものの必要性だが、俺はあまりないと考えている。理由としては、人間という生き物は、1人でもどうにか生きていけるように設計されているからだ。言語野の衰退とか記憶野の衰退とか、そんな問題はあるにしろ、基本的に生きてはいける。
それなのに友達という存在があるだけで、人は何故かそいつと一緒にいたくなり、依存してしまうのだ。それは人間としての機能を存分に使いきれていない証拠であり、自分自身を大事にできていないということにもなる。
「私はそうは思わないけどな。」
だから渡月には聞いてない。
そして最後に、友達がいることに関しての利点だ。あるとするならば、教科書を忘れたときに貸してもらえるとか、見せてもらえるとか。あるいは、授業中に分からない問題が会った時に、天の声になってくれるとか。まあ、そんなところだろう。あぁ、あと先輩との繋がりは過去問が貰えたりするから、それも必要になってくる…かもしれない。勉強しろって話なんだが。
ってな訳で、結局のところ『友達』とは何かを俺は知らない。陰キャなんて基本的にそんなものだ。友達と言える人が少ない以上、例として挙げられるものが少なくて、おかげで悩まされる。
そんなのが億劫になって、俺は友達というものを作らず、親友というものしか作らないと決めたんだ。
「なんか証明終わったみたいね。お疲れ様。」
気づけば時間が経っていて、もう終礼が終わりそうだ。俺の使いまくった脳内には、たまにノイズが入ってくるが、それもそのうち消えていくんだろう。
「消えないよ。橘くんが口をきいてくれるまで話しかけ続けるから。」
それも怖い話だ。俺はこの1年間をどうやって過ごせば良くなるんだ?
「さあ?」
渡月はそうやって俺の思考を読みながら会話をし、終礼が終わって全員が立ち上がる。そして礼をした。
俺はすぐに今日使った教材を持ってロッカーに行く。できるだけ早く行動することで、このときに誰とも話さないで済むからだ。
ロッカーの鍵をポケットから取り出そうとしていると、横から1人割り込んできた。
「先入れるね。」
渡月はそれだけ言って、俺の下のロッカーを開け、今日使った教材を直し始めた。その間にも何人もの生徒が教室から出てきて、一旦人が溢れかえる。
渡月は自分のロッカーを閉めて、そのままこっちを向いてきた。
「どいて欲しい?」
は?
「だからどいて欲しい?」
意味がわからない。どかない以外に選択肢があるのか?今、この状況で?
そんなことは口に出せずに、俺はちょうど渡月の頭の位置にあるロッカーの鍵に手を伸ばし、開けた。渡月に「どけ」と言わんばかりに。
「ちぇっ!これなら話せると思ったんだけどな。」
渡月は拗ねたようにそう言い残し、教室の中に戻って行く。何なんだと思いながら俺は教材を直した。
教室の中に戻ってみると、鞄を持った渡月が待っていた。誰かを。
「橘くん、帰ろ。」
俺には上手く聞き取れなかったようなので、とりあえず無視する。こんな言葉聞いたことがない。「イッショニカエル」なんて変な言葉があるものだ。
俺は持って帰る荷物をぱぱっと詰めて、鞄を持ち、そのままスタスタと教室を出る。
「待ってよぉ!」
その日、アイドル並みに可愛い美少女が、特になんの特徴もない、どこにでもいそうな陰キャの後ろを追いかけるとかいう異常現象が見れたそうな。本当に奇妙な話もあったものだ。
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