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ジャアマタ
聖夜行進歌①
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時計の針が進んでいくのは本当に早いものだ。
共通テストまで残り1ヶ月になっていて、最後の追い込みを始めている。
「……」
口から出てくる言葉はない。誰もいない部屋の中、すっかり冷えてきた空気から身を守るように膝掛けをかけて、足元のヒーターを動かしている。机の上には英語の問題集とノートだけ。解答編は足元に落ちていて、床はやった問題集が乱雑に捨てられている。
期末考査が終わってからというものの、随分と部屋を出ないようになった。それは桜も同じで、ここ2週間ほどは同じ家に住んでいるのにどこか遠い気すらしてしまう。
「寒っ」
机の上のマグカップにはホットコーヒーが入っていたはずだと持ち上げてみるが、軽く、もう冷えてしまっている。
仕方なく俺は立ち上がり、部屋のドアを開けた。
「「あっ」」
同じように部屋を出てきた桜と目が合う。
「そっちも休憩か?」
「うん。久志は?」
「休憩。」
部屋のドアを閉めて、冷たい廊下を歩き出す。桜もすぐ後ろをついてきて、俺たちは階段を降りた。
「どんな感じ?」
「んーぼちぼちって感じ。久志ほど余裕ちゃうけど。」
「そりゃあそうやろ。科目数ちゃうねんし。」
「久志が少ないにしてもさすがに余裕ありすぎやって。」
「そんな風に見えるか?」
「まあ、変わってないようには見える。」
たしかに、緊張感というか、焦燥感というか、そういうのには駆られてないような気はしてない。世の受験生を敵に回すかもしれないが、こんな時期になっても焦っていなくて、楽しんでいる自分がいる。
リビングには誰もいない。そういや、もうすぐ昼ごはんだ。今この時間に休憩したら真っ昼間には休憩しないだろうし、今のうちになにか腹に入れておくか。
「なんか食う?」
「たしかに、結構お腹減ってきたかも。」
「ぱっぱと食える方がええよな。」
「せやな。」
コーヒーを淹れるのは桜に任せて、俺は冷蔵庫の中を確認する。それなりにものは作れそうだ。
「焼き飯でいい?」
「ええよー。はいコーヒー。」
「ありがと。今から作るからもう食っていくよな?」
「そうする。」
必要な具材を全部取りだしていくと、桜が手を洗って具材を切り始めた。俺はご飯をチンしてコンロの横に置く。そして少し大きめのフライパンを出して油を敷いた。
一見いつもと変わらない風景。けど、生活の中の優先順位が全部勉強に移っている気がして少し寂しくも感じる。
(たまには休憩も挟むべきか)
この家の空気はちょっと前よりは少し冷えていて、それでも居心地の悪いものではない。けど、少しだけ暖かくしたい。でも、そんな方法、俺は知らない。
共通テストまで残り1ヶ月になっていて、最後の追い込みを始めている。
「……」
口から出てくる言葉はない。誰もいない部屋の中、すっかり冷えてきた空気から身を守るように膝掛けをかけて、足元のヒーターを動かしている。机の上には英語の問題集とノートだけ。解答編は足元に落ちていて、床はやった問題集が乱雑に捨てられている。
期末考査が終わってからというものの、随分と部屋を出ないようになった。それは桜も同じで、ここ2週間ほどは同じ家に住んでいるのにどこか遠い気すらしてしまう。
「寒っ」
机の上のマグカップにはホットコーヒーが入っていたはずだと持ち上げてみるが、軽く、もう冷えてしまっている。
仕方なく俺は立ち上がり、部屋のドアを開けた。
「「あっ」」
同じように部屋を出てきた桜と目が合う。
「そっちも休憩か?」
「うん。久志は?」
「休憩。」
部屋のドアを閉めて、冷たい廊下を歩き出す。桜もすぐ後ろをついてきて、俺たちは階段を降りた。
「どんな感じ?」
「んーぼちぼちって感じ。久志ほど余裕ちゃうけど。」
「そりゃあそうやろ。科目数ちゃうねんし。」
「久志が少ないにしてもさすがに余裕ありすぎやって。」
「そんな風に見えるか?」
「まあ、変わってないようには見える。」
たしかに、緊張感というか、焦燥感というか、そういうのには駆られてないような気はしてない。世の受験生を敵に回すかもしれないが、こんな時期になっても焦っていなくて、楽しんでいる自分がいる。
リビングには誰もいない。そういや、もうすぐ昼ごはんだ。今この時間に休憩したら真っ昼間には休憩しないだろうし、今のうちになにか腹に入れておくか。
「なんか食う?」
「たしかに、結構お腹減ってきたかも。」
「ぱっぱと食える方がええよな。」
「せやな。」
コーヒーを淹れるのは桜に任せて、俺は冷蔵庫の中を確認する。それなりにものは作れそうだ。
「焼き飯でいい?」
「ええよー。はいコーヒー。」
「ありがと。今から作るからもう食っていくよな?」
「そうする。」
必要な具材を全部取りだしていくと、桜が手を洗って具材を切り始めた。俺はご飯をチンしてコンロの横に置く。そして少し大きめのフライパンを出して油を敷いた。
一見いつもと変わらない風景。けど、生活の中の優先順位が全部勉強に移っている気がして少し寂しくも感じる。
(たまには休憩も挟むべきか)
この家の空気はちょっと前よりは少し冷えていて、それでも居心地の悪いものではない。けど、少しだけ暖かくしたい。でも、そんな方法、俺は知らない。
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