陰キャの陰キャによる陽に限りなく近い陰キャのための救済措置〜俺の3年間が青くなってしまった件〜

ノンビリ

one flame㉙

　最後の1週間が始まった。今日からは全ての曜日に「最後の」って枕詞がつく。

「実感ねぇなぁ」
「そう？もう大学生なんやって私は思うけど。」

今日も今日とて俺の家。楓は目の前で勉強しているし、俺の手元にもノートと問題集が広がっている。

「なんかさ、前回の卒業のときってさ、どうせまた高校で一緒やからって感じやったやん。あと普通に進んで国学社大学やねんから、そこでまた会えるかもやし。」
「たしかにな。でも、あんなけ広いんやからなかなか会えんやろ。」
「まあそうか。ピー也も会えんとか嘆いてたし。」
「嘆くんやあの人。」

この前急に電話かかってきたときはびっくりした。内容は絶対話せないけど。

　この頃楓は本格的にずっと一緒にいるようになってきた。今までは夜には帰していたのだが、最近は一緒に寝ることもよくある。それなりの回数もしているし、徹夜で学校に行くこともしばしば。楓は自分の家にいる時間よりもこっちにいる時間の方が多くなってきている。許されてはいるが、さすがにこのままじゃダメなんじゃないかって思うこともしばしば。

「で、奏は大学どうするん？」
「あ、それな。ちょっと考えてんけど、国学社行くわ。ネットで活動してみたらいいかなって。」
「あーね。良かった。奏と離れ離れなったらちょっと嫌やったから。」

楓は俺の足をつんつんとつつく。

　そういえば学校という箱庭に入って以降、楓と別クラスになったことがない気がする。ってことは、学部が変わる大学が初めて違うクラスになるということか。よく言えば幼馴染、悪く言えば腐れ縁やな。

「いいこと考えた。」
「なんや？」
「大学行ったら取れる講義は奏と同じやつできるだけ取ろ。」

楓は本当にいいことを考える。けど、楓は頑張ってはいるが学部を選べる選択肢が少ないし、少なくとも俺と同じ学部には入れない。文学部はもう定員オーバーしてるからな。

「別にいいけど。それがちゃんと繋がるんやったら。」
「じゃあ取ろ！」

楓は嬉しそうに笑う。そんな姿を見て、やっぱり俺は幸せ者だなと思った。