陰キャの陰キャによる陽に限りなく近い陰キャのための救済措置〜俺の3年間が青くなってしまった件〜

136君

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ノンビリ

one flame㉗

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「ひい君、桜は?」
「今日はクラスのメンバーで遊びに行くんだと。」
「ほうほう、てことはひい君はぼっちということかね?」
「一言で言えばそうなるな。」

いつものようにI組に行ったらひい君がまだ残っていて、そう話しかける。こうやって2人になるのって久しぶりやな。

「んじゃ、私たちもどっか行く?」
「とか言っても買いたいもんとか特にないやろ。」
「まあね。そんじゃ普通に帰るか。」

荷物を持ち上げているひい君を横目に教室から出ていく。本当に分かってないんやから。まあ、ここまでずるずる引きずっている私も悪いのかもしれないけど。あー、もうちょっと楽に考えれたらいいんやけどな。

 校舎から出たら、11月後半の冷たい風が吹いてきた。

「寒なってきたな。」
「せやな。もうすぐマフラーの出番かな?」
「さすがに早ない?そんなことしとったら共テ…あぁ、受けんでええのか。」

共テというワードに少しだけ反応してしまった。そう、ひい君は国学社大学は蹴っている。つまりどう足掻こうと同じ大学に進むことはない。

 寂しいのは寂しい。けど、それ以上に頑張って欲しい。昔から魚関係の職業に就きたいとは言っていたけど、まさかここまで続くなんて思わなかった。

「ひい君ってさ、私と離れるってなったとき、寂しい?」
「そりゃあ寂しい。まだ繋がりのある唯一の幼馴染やからな。」
「そう。」

また言われて気がついた。幼馴染がいいんだ。

「じゃあさ、行かないでって私が言ったら、残ってくれたりする?」

付き合ってもないくせに重い女だ。ただの幼馴染なのに、このセリフを言うのは間違っている。というか、言いたくない。ひい君の夢を邪魔することなんて言いたくない。

「きいは、そんなこと言わんやろ。そういう奴やからな。」

その言葉に私は思わず立ち止まる。私が立ち止まったことに気がついたひい君は少し先に行ってから振り返った。

「違うか?」

ひい君はそう言って微笑む。桜を見るのとも、杏ちゃんを見るのとも全く違う目で。優しい目で。

 そのとき思った。この目を見れるのは私しかいないと。幼馴染の私だけだと。

「そうやな。なんかごめん。」
「おう。」

私は今、完全に失恋した。でも、これでいい。この目を私だけが独占できるんなら、この想いにはしっかり蓋をしよう。
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