陰キャの陰キャによる陽に限りなく近い陰キャのための救済措置〜俺の3年間が青くなってしまった件〜

136君

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ノンビリ

one flame⑥

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 スマホでセットした1時間20分のタイマーを止める。

「ふぅ。」
「意外と読めるな。」
「そだね。」

1時間20分。それは共テのリーディングの時間。俺たちは今、一昨年の過去問を解いている。そう、桜も一緒に。

「まさか桜が志望校変えるとはな。」
「他にやりたいことできたから。」
「やりたいこと?」
「久志を支えること。」

 独自テスト1週間前の日曜日。絶対にこの時期にやるべきことではないが、このタイミング以外にやれる日がない。

 10月31日には校内選抜、つまり国学社大学への志望届を提出しないといけない。それまではいつでも蹴れるし、それは個人の自由だ。

 でも、俺たちの性格上、明確に行けると分かってからしかその決断はできない。臆病者なんだ。

「たぶん結構波乱万丈になると思うが。」
「いいよ別に。それくらい何回でも越えてきた。」

そう言って桜は笑う。

 このことは杠葉さんにも母ちゃんにも相談している。もちろん2人ともOKとのこと。あとは本当に俺たちの心持ちだけなんだ。

「リーディングはイヤホンでいいか。なんか呟く?」
「分からん、自分で理解するのになんかするかも。」
「じゃあお互いの部屋ってことで。」
「やな。」

リビングから自分の部屋に向かう。ちなみに杏は今日はいない。今は和歌山にいる。

「じゃあまた30分後。」
「うん。」

同じ屋根の下で同じように頑張っている人がいるって本当に心強い。俺も頑張らんととか思う。

 でも、受験はもっとシビアな世界だ。数字によって全部決められる。それが水泳みたいでちょっと好きだ。

「ほないっちょ頑張りますか。」

俺は耳にイヤホンを差し込む。そして機械音声を聴き始めた。

 30分のテストを終えて部屋を出る。ちょうど桜も同じタイミング。

「どうやった?」
「どーなんやろ?リスニングって取れるとき取れるけど取れんとき全くやからな。」
「しかも、これって答えが最終的に分からんくなるし。」
「それな。」

リビングに降りて軽く昼飯を作る。今日は何となくホットサンドの気分だ。

「どうしたん?」
「やっぱこれかなって。」
「なんで?」
「桜と何かが始まる時って毎回これやなって思ってな。これかなって。」

そう、これはきっと始まりなんだ。そんな予感が何となくするんだ。

 昼飯を食べたあと、共テの化学、そんで別れて各々必要な科目。まるで模試みたいな1日を過ごして、そして、

「採点終了っと。」

俺は赤ペンを置いた。
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