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コタエハ

俺たちは最後の祭り⑧

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 突然来た葛城さんはそんなことを言った。

「まあ、いきなりやから断られることも前提やねんけどな。文化祭んときのライブ見て、このバンドが後夜祭のときに歌ってくれたらめっちゃ盛り上がるなあって思ってん。やから、一緒に祭りを盛り上げてくれん?」

そう言って頭を下げる。俺たちはそんな葛城さんを見て、少し悩んでいた。

 実際、あんなライブをもう一度できるんなら嬉しい。やっぱり楽しかったし、その喜びを全身で感じられたから。けど、怖いところもある。あのライブでやりきった感が出すぎたこと。やりきったって思っているから、あのライブ以上のものはもう作れないかもしれない。

 俺は桜の方を見る。桜は優しく笑っていた。ほかのみんなも俺を見て笑っている。

「久志の一言で決まると思うで。ねぇ、久志はどうしたい?」
「俺は…」

ライブというものはもうこれ以上経験できないほどいいものだった。楽しいものだった。だから、もう一度あの景色を見てみたい。

「葛城さん、リハーサルできる場所用意しといてください。あと、出番はちょっと後の方で。俺たちも思い出さなあかんから。」
「それって…」
「その話、のりますよ。」

覚悟は決まった。やるしかないな。

「分かった。じゃあ準備は任せて。知り合いのPAの人に頼んでみるから。そっちもそっちでよろしく。」

葛城さんは嬉しそうに走りながら戻っていく。

「よぉーしやるかぁ。」
「楽器はどのタイミング?」
「体育祭終わってからちゃうん?あの感じ、準備とかで今日の後夜祭のスタート遅れるっぽいし。」
「曲は?」
「ライブと一緒でいいんちゃう?あっ、自由にアレンジしてくれて構わんで。俺は合わせるだけやから。」

午後の部のスタートが近づいてきて生徒たちが少しずつ出てきた。

「あの感じシークレットにしたいやろうし黙っとくか。」
「せやな。」

これは俺たちだけが知ることにして、一度解散した。

 弁当を教室に戻してもう一度グラウンドに戻る。グラウンドのど真ん中には、マイクを持った葛城さんがいた。

「お前ら~!準備はいいか~!後夜祭までこの調子で突っ走っていくぞ~!」

グラウンドのそこら中から歓声が上がる。

「まだ足りねぇなぁ!上げてけ~!」

学年トップのあのお堅い見た目からは出て来なさそうな言葉がどんどん出てくる。

「行くぞお前ら~!体育祭後半戦や~!」

秋とは思えないような熱気がグラウンドを包み込む。冷たい風が吹けど、その熱は冷めることがない。
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