陰キャの陰キャによる陽に限りなく近い陰キャのための救済措置〜俺の3年間が青くなってしまった件〜

コタエハ

俺たちは最後の祭り②

　合流して、学校に着いてみると、去年よりもお祭り感の増した装飾になっていた。

「そんじゃ、また後でな。」

教室の前になって、一旦みんなと別れる。中ではもう、男子たちが着替えていた。

「お前ら羞恥心とかないんか？」
「ないなあ。見られて減るもんちゃうし。」

女子がまだいるのに、着替え始めている男子共。もちろん女子の中には着替え終わっている船戸さんたちもいた。

「ようこんな環境おれるな。」
「まあね、気にせんかったら空気と同じようなもんよ。」

席に荷物を置いて、体操服を取り出す。そして、制服のボタンを一つ一つ外し始めた。

「あんなこと言っとったのに、自分も着替えるんや。」
「水泳部やったからな。人前で脱ぐのは慣れてる。」

船戸さんと喋りながら着替え、体育祭Tシャツになった。

　それはそうと、問題は今回出る種目だ。今回は借人競走に出るのだ。今まで自分には責任がかからないような種目に出ていたが、今回は全部自分の責任。まあ出る理由ってのは全部桜が関わっているのだが。「借られたい！」って言われたら出ないとな。

　あとは奏と楓は二人三脚、きいは障害物競走、カレンはパン食い競走、音羽は綱引きに出るらしい。

「誰か借りられるかなあ？」
「なんか俺がコミュ障みたいなこと言うてるやん。」
「実際そうやろ？」
「喋るぐらいはできますー！」

グラウンドに持っていく荷物をまとめながら、いつものように話す。

「作詞家くーん！」

すると久しぶりに柚さんがやってきた。最近はH組に行くのがほぼなかったからか、顔を合わせるのすら久しぶりな気がする。

「さくちゃん借りるやんな？借りろよ！わかってるな？」
「それってお題的外れでも？」
「やな。とりま1回はさくちゃん借りんと。借られたいって言われたんやろ？」
「まあ、せやけど。」
「なら借りんと。」

喋っているとチャイムが鳴り、一旦教室に集合の時間になる。

「じゃあ、また後でねー！」

柚さんは手をヒラヒラと振りながら自分のクラスに戻っていく。

「嵐やったね。」
「ホンマに、あの明るさはどこから出るのか。」
「陰の私たちには分からないことよ。」

こんな感じで体育祭直前の時間は過ぎていった。