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コタエハ

A.春⑫

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 誰かが言った。「俺に青春など必要ない」と。

 ずっと考えてきた。青春とは何か。ホンモノなんて存在するのか。ずっと探してきた。

 でも、今なら分かる。目の前で笑っている観客たち。すぐ後ろで支えてくれている仲間たち。キラキラと輝く目の前に多少の熱。心が満たされていくようなそんな感じ。青春しているんだなと今なら感じられる。

「2年半前は俺がこの舞台に立ってるとは思わんかった。青春なんてどこか遠い国の話のようで、俺には必要ないし、そもそも出会うわけもないと思ってた。」

これは俺が考えていたMCとは違う、俺自身が今紡いでいる言葉。ただの曲紹介で終わるつもりだった。けど、そんなのではもったいないと感じてしまった。

「今、ここに立って俺が感じること。これがきっと青春ってものなんだろうし、それ以外の表し方を俺は知らない。もちろん、みんなから見た青春とは全く違うものなのかもしれない。でも、これが俺にとっての青春なんだと、俺は思う。」

後ろのみんなにハンドサインで曲は同じでいいと伝える。今、降りてきたんだ。元々ラストの曲でやるつもりだったメロディーに合う、今の俺の気持ちが。

「もしかしたら、まだ答えを出すには早いのかもしれない。でも、今を生きる俺が出せる答えはきっとこれなんだ。だから、みんなに聞いて欲しい。俺が出す青春の答えを聞いて欲しい。」

 視界の端っこにシオちゃんを見つける。先生に出してもらった課題、今、完成させられそうです。

 音羽はこの目標を立てるときに一緒にいてくれた。

 カレンは一緒にアホやってくれた。

 奏は俺が挫けそうなときに励ましてくれた。

 楓はその明るさで俺たちを照らしてくれた。

 きいはたった1人の大切な幼馴染として、ずっとそばにいてくれた。

 杏の不器用だけど、俺のことをわかってくれてる優しさに何回も助けられてきた。

 そして、桜は、こんな俺の彼女になってくれた。こんな俺に最初に話しかけてくれた。こんな俺を青春の舞台に上げてくれた。

「聞いてください。『A.春』。」

今まで出会った全ての人に感謝を伝えて、この曲を奏でよう。

 

 これが俺の青春の答えだ。



A.春
作詞:由良久志
作曲・編曲:富貴桜


目の前にあるものを 1つ摘み上げたら
新しい世界が 見えるのだろうか
誰にも分からない 明日のことを嘆いては
またベッドにダイブして吐き出した夜

後ろ振り向けば君の声がして
前を向けば君の影があって
下を向けば君の足跡があって
「ここまでよく来たな」なんて思う

青い夏が僕の寒い心を
温めてくれたまるで夢のよう
他人(ひと)の暗いとこばっか見てきた僕の
瞳に光を灯してくれた
秋の季節なんて来ないから
君が枯れることはもうないんだ
こんなの僕の傍にいてくれて
本当にありがとう


指先で触れた 感覚を忘れないように
こんな不器用で どうしようもない僕は
何もできない そんな悲しいこの手を
また君は優しく 包んでくれた

後ろ振り向けば君のマエがあって
横を見れば君のイマがいて
前を見れば僕らのコレカラがあって
君と2人で一歩踏み出す

青い春は僕に必要ない
そう決めつけていたこんな僕でも
善人(ひと)に照らされて輝けたんだ
クラゲは宙に飛び出せたんだ
秋の季節なんて来ないから
君を傷つけられやしないんだ
こんな僕の傍でいいのなら
ずっと一緒にいよう


言葉だけだったら足りないの
ちゃんと形に残ってないと
ヒトは誰もが忘れっぽすぎる
だから焼き付くような刺激を

青い夏は僕の空欄を
『思い出』の3文字で埋めつくした
他人(ひと)と関わることで強くなれたんだ
僕は舞台に上がれたんだ
秋の季節なんて来ないから
君がかれることなんてもうないんだ
いつまでもずっとその桜を
咲かせ続けるよ
僕の傍にいてくれて
本当にありがとう
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