上 下
678 / 735
コタエハ

A.春⑪

しおりを挟む
 ついにこのライブも残すところあと2曲になった。今日はなんだか調子がいい。いつもより声が出てるし、気持ちよく歌えてる。

 ここで挟むのは俺と桜のデュエット曲。3人には基本的に入らなくてもいいけど、入りたい時はアドリブで入ってきていいと言っている。

「次は桜とのデュエット曲になります。このバンドで練習をやっている最中に生まれた曲になります。この曲の大まかな外枠はだいぶ前に作っていて、それを完成させた形の曲です。って、ことで、桜、いける?」
「おーけーだいじょーぶ。いつでもどうぞ。」
「ってことで次の曲いきます。聞いてください。『朝日』。」

 桜と目を合わせて呼吸を合わせる。そして、桜が伴奏を弾き始めた。朝日を思い起こさせるようなメロディー、桜との朝の風景を思い浮かべながら作った歌詞。この曲は全て、俺たちのことを書いた歌だ。

 サビに入る前に、示し合わせたかのように3人もアドリブで入ってくる。この曲の譜面は3人には渡していない。それに、この曲を練習で弾いたこともないから、3人も初めて聴く曲だ。


朝日
作詞作曲・編曲:由良久志・富貴桜


朝目が覚めてまず見えるのは君の顔
朗らかな笑みを浮かべて
目を擦る子供っぽい仕草
いつまでも変わらない
窓を開けて朝日と風を浴びたら
制服に着替えてさ
真っ白なカッターに袖通して
3年もやってきたこと

まるで夢の中みたいだな
なんとなくで築いてきた関係
それがいつしか当たり前になって
大切だって気づいたんだ君が

ねぇ
聞いてよね
この声を
この音を
数ある星の中ただ1つ
選んでここにやってきたんだから
ねぇ
聞こえてる
この音が
この鼓動が
錆び付いたレールに噛み付くほどに
君のことが好き


朝目が覚めてまず見えるのは君の顔
穏やかな笑みを浮かべて
「おはよう」と優しく言っては
ベッドから降りていく
頭が起きてブラウスにアイロンをかけて
シワを伸ばしていくと
淹れてくれたコーヒー苦め
貴方は持ってくる

まるで夢の中みたいだな
我儘で保ってきた関係
それがいつしか大切になって
好きってことに気づいたんだ
だから

ねぇ
聞いてよね
この言葉
この想いを
隠した気持ちは幾億年
飛んでは消えてしまうんだから
ねぇ
気づいてよ
この胸の
その真実を
仮面なんてどうでもいいほどに
貴方のことが好き


雪原の白兎を見つけるほどに難しいの
あーでもないこーでもない
そんなことばっかの人生
そんな私の人生に貴方が色をつけてくれたら
行先も分からない
闇を晴らしてくれる
人の心ってものはジェンガみたいなもので
1つでも欠けたらさ
崩れて塵に変わる
あなたが隣にいるだけでそのピースが埋まるから
これからも何があっても
ずっとそばに
ずっとそばに居てよね

ねぇ
聞いてよね
聞いてよね
この思いが全部届くまで

ねぇ
聞いてよね
この声が
この音が
ひとつに重なり花開く
僕らの世界に色がつく
夢のね
その先を
現実に
書き出してみよう
76億分の1の貴方を(君を)
この命尽きるまで好きだと叫ぶんだ





 後ろを向いてみれば笑顔の3人がいる。それを見て俺も笑顔になる。やっぱり音楽ってこうなんだと、改めてそう思った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~

蒼田
青春
 人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。  目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。  しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。  事故から助けることで始まる活発少女との関係。  愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。  愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。  故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。 *本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

冴えない俺と美少女な彼女たちとの関係、複雑につき――― ~助けた小学生の姉たちはどうやらシスコンで、いつの間にかハーレム形成してました~

メディカルト
恋愛
「え……あの小学生のお姉さん……たち?」 俺、九十九恋は特筆して何か言えることもない普通の男子高校生だ。 学校からの帰り道、俺はスーパーの近くで泣く小学生の女の子を見つける。 その女の子は転んでしまったのか、怪我していた様子だったのですぐに応急処置を施したが、実は学校で有名な初風姉妹の末っ子とは知らずに―――。 少女への親切心がきっかけで始まる、コメディ系ハーレムストーリー。 ……どうやら彼は鈍感なようです。 ―――――――――――――――――――――――――――――― 【作者より】 九十九恋の『恋』が、恋愛の『恋』と間違える可能性があるので、彼のことを指すときは『レン』と表記しています。 また、R15は保険です。 毎朝20時投稿! 【3月14日 更新再開 詳細は近況ボードで】

脅され彼女~可愛い女子の弱みを握ったので脅して彼女にしてみたが、健気すぎて幸せにしたいと思った~

みずがめ
青春
陰キャ男子が後輩の女子の弱みを握ってしまった。彼女いない歴=年齢の彼は後輩少女に彼女になってくれとお願いする。脅迫から生まれた恋人関係ではあったが、彼女はとても健気な女の子だった。 ゲス男子×健気女子のコンプレックスにまみれた、もしかしたら純愛になるかもしれないお話。 ※この作品は別サイトにも掲載しています。 ※表紙イラストは、あっきコタロウさんに描いていただきました。

切り札の男

古野ジョン
青春
野球への未練から、毎日のようにバッティングセンターに通う高校一年生の久保雄大。 ある日、野球部のマネージャーだという滝川まなに野球部に入るよう頼まれる。 理由を聞くと、「三年の兄をプロ野球選手にするため、少しでも大会で勝ち上がりたい」のだという。 そんな簡単にプロ野球に入れるわけがない。そう思った久保は、つい彼女と口論してしまう。 その結果、「兄の球を打ってみろ」とけしかけられてしまった。 彼はその挑発に乗ってしまうが…… 小説家になろう・カクヨム・ハーメルンにも掲載しています。

ネットで出会った最強ゲーマーは人見知りなコミュ障で俺だけに懐いてくる美少女でした

黒足袋
青春
インターネット上で†吸血鬼†を自称する最強ゲーマー・ヴァンピィ。 日向太陽はそんなヴァンピィとネット越しに交流する日々を楽しみながら、いつかリアルで会ってみたいと思っていた。 ある日彼はヴァンピィの正体が引きこもり不登校のクラスメイトの少女・月詠夜宵だと知ることになる。 人気コンシューマーゲームである魔法人形(マドール)の実力者として君臨し、ネットの世界で称賛されていた夜宵だが、リアルでは友達もおらず初対面の相手とまともに喋れない人見知りのコミュ障だった。 そんな夜宵はネット上で仲の良かった太陽にだけは心を開き、外の世界へ一緒に出かけようという彼の誘いを受け、不器用ながら交流を始めていく。 太陽も世間知らずで危なっかしい夜宵を守りながら二人の距離は徐々に近づいていく。 青春インターネットラブコメ! ここに開幕! ※表紙イラストは佐倉ツバメ様(@sakura_tsubame)に描いていただきました。

怪我でサッカーを辞めた天才は、高校で熱狂的なファンから勧誘責めに遭う

もぐのすけ
青春
神童と言われた天才サッカー少年は中学時代、日本クラブユースサッカー選手権、高円宮杯においてクラブを二連覇させる大活躍を見せた。 将来はプロ確実と言われていた彼だったが中学3年のクラブユース選手権の予選において、選手生命が絶たれる程の大怪我を負ってしまう。 サッカーが出来なくなることで激しく落ち込む彼だったが、幼馴染の手助けを得て立ち上がり、高校生活という新しい未来に向かって歩き出す。 そんな中、高校で中学時代の高坂修斗を知る人達がここぞとばかりに部活や生徒会へ勧誘し始める。 サッカーを辞めても一部の人からは依然として評価の高い彼と、人気な彼の姿にヤキモキする幼馴染、それを取り巻く友人達との刺激的な高校生活が始まる。

俺の家には学校一の美少女がいる!

ながしょー
青春
※少しですが改稿したものを新しく公開しました。主人公の名前や所々変えています。今後たぶん話が変わっていきます。 今年、入学したばかりの4月。 両親は海外出張のため何年か家を空けることになった。 そのさい、親父からは「同僚にも同い年の女の子がいて、家で一人で留守番させるのは危ないから」ということで一人の女の子と一緒に住むことになった。 その美少女は学校一のモテる女の子。 この先、どうなってしまうのか!?

処理中です...