陰キャの陰キャによる陽に限りなく近い陰キャのための救済措置〜俺の3年間が青くなってしまった件〜

136君

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コタエハ

俺たちは答えを知らない⑩

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「そんじゃ、今日がラストの練習やな。」

明日からはそれぞれのクラスの準備があるということで、今日が最後の練習。次に合わせられるのはリハのときになる。

 今までベースとしてみんなを見てきたけど、このチームは本当にいい感じだと思う。多分他のどこのバンドよりも。奏のリズムもちゃんとなってきたし、楓もたまに無意識に遊んでいる。それに乗っているのが桜とQで4人とも本当に楽しそうだ。

(それに比べて私は…)

私はベースとしてみんなを支えることしかできてない。遊べる余裕なんてあまりないし、変えたとしてもリフを変えることはない。

 今のままで本当にいいのだろうか。このメンバーでまともに弾いたとて、それは本当に音“楽”なのか。

 聞いてみたんだ。私の名前の由来を。お母さんたちは音楽を通じて出会ったらしい。たまたま行ったジャズバーにお父さんがいて、それで仲良くなったんだとか。だから、「音に乗って羽ばたけ」という意味を込めた名前にしたみたいだ。

 今の私は羽をもがれた小鳥のようだ。音に縛られているだけのただの醜い鳥だ。

「ちょっと動画撮ってみていい?」
「いいぞ。」

だから知りたくなった。周りからどう聞こえているのか。私たちの音が。私の音が。

 練習後、私は部屋に1人籠って、今日の演奏を聴いてみる。

「目立ってないけど、悪い意味で空気みたいだ。私。」

ほかの4人の輝きに消されてしまっている、私の音。たしかに支えているのに、どこか心もとない感じ。例えるなら、朽ちたベニヤ板の床の上でブレイキンを踊っている感じだろう。

「私ももうちょっと暴れてみるか。」

幸いにも音のデータは貰っている。それにハマるように、そして奏のドラムに合うように、上手く噛み合せて新しいベースラインを作ってみる。

「とりまこんなもんか。」

全曲作り終わって、窓の外を見てみたらもう明るくなり始めていた。少しくらい寝とかないとやばいかもしれない。私はすぐに眠りについた。

 カタカタと作業をする音で目が覚める。キッチンに立っていたのはカレンだった。

「起きた?もうちょっと待っててや。すぐできるから。」

最近はずっと私がご飯を作っていなかったから知らなかった。カレンはもう私がほぼほぼ教えることがないほどまでに成長していた。

「作れるようになったんや。」
「そりゃあ2年半も教えてもらってんねんから。」

そう言ってカレンは笑う。私は安心してもう一度眠りについた。
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