664 / 773
コタエハ
俺たちは答えを知らない⑨
しおりを挟む
「奏、そのドラム。」
「やっぱ気づいたか。ちょっとだけ変えた。叩きにくかったし、こっちの方がいいと思ったから。」
その日の練習、一度合わせてみたら少しだけ奏のドラムが変わっていた。しかも、俺たちの想像を超えてくるような刻み方をしていて、この曲をさらにいいものに仕上げている。
「なんか上手いこといってるし、今日は休憩にする?いいイメージのまんまで終わったほうがいいやろ?」
「ごめん。もう1回最後のだけやらせて。」
そう声を上げたのは楓。何かに焦っているような目をしている。
「わかった。みんなもええよな?」
『もちろん。』
そして2回目の演奏。楓のギターが少しだけ変わっていた。
「楓も変えた?」
「そう。まだ完成してないけど、ここだけは悩んでて。」
楓が悩んでると言ったのは1番と2番の間。ここのつなぎは俺達も悩んで、思いついたもので1番いいもので妥協した。
「もう1回。もう1回やらせて。今日中に完成せんと寝られへん。」
「分かった。」
そのあと数回弾いたが、結局しっくりくるものはなかった。
「これで私が思いついてたのは終わり。他なんかある?」
「俺は思いついてない。」
「俺と桜は作るときに死ぬほど試したからな。」
「それはそう。」
ここまで試してもしっくりくるのがないなんて、今までにない体験だ。
「音羽はなんかある?」
そして話は今まで黙っていた音羽に回される。
「逆に引き算は?」
「引き算。何も鳴らさんのとか?」
「そゆこと。ここは一旦落ち着くところやから、逆に何も鳴らさんのもありやと思う。私もちょっと音ちっさしてるし。」
『そうなん!?』
俺も気づいていなかった。というか音羽の音が元々そこそこ小さい音にしていたからそれよりもまだ小さくしているということ。
「とりあえず1回やってみよ。ハマるかもしれんし。」
「せやな。」
そして時間的にも今日はこれでラスト。その1曲を演奏した。問題の1番と2番の間に差し掛かる。元々ギター以外音を抜いているところだったからその2拍分だけ静かになる。そして俺の声で2番が始まった。他のどのパターンよりも歌い出しが気持ちいい。思わず笑みがこぼれていた。
「これやな。」
「うん。これ以外もう考えられへん。」
演奏後、汗を流して立つ俺たちはそう言い合った。これで本当にこの曲の完成だ。
「編曲んところ変えなあかんな。『KYUKA組』に。」
「やっぱ気づいたか。ちょっとだけ変えた。叩きにくかったし、こっちの方がいいと思ったから。」
その日の練習、一度合わせてみたら少しだけ奏のドラムが変わっていた。しかも、俺たちの想像を超えてくるような刻み方をしていて、この曲をさらにいいものに仕上げている。
「なんか上手いこといってるし、今日は休憩にする?いいイメージのまんまで終わったほうがいいやろ?」
「ごめん。もう1回最後のだけやらせて。」
そう声を上げたのは楓。何かに焦っているような目をしている。
「わかった。みんなもええよな?」
『もちろん。』
そして2回目の演奏。楓のギターが少しだけ変わっていた。
「楓も変えた?」
「そう。まだ完成してないけど、ここだけは悩んでて。」
楓が悩んでると言ったのは1番と2番の間。ここのつなぎは俺達も悩んで、思いついたもので1番いいもので妥協した。
「もう1回。もう1回やらせて。今日中に完成せんと寝られへん。」
「分かった。」
そのあと数回弾いたが、結局しっくりくるものはなかった。
「これで私が思いついてたのは終わり。他なんかある?」
「俺は思いついてない。」
「俺と桜は作るときに死ぬほど試したからな。」
「それはそう。」
ここまで試してもしっくりくるのがないなんて、今までにない体験だ。
「音羽はなんかある?」
そして話は今まで黙っていた音羽に回される。
「逆に引き算は?」
「引き算。何も鳴らさんのとか?」
「そゆこと。ここは一旦落ち着くところやから、逆に何も鳴らさんのもありやと思う。私もちょっと音ちっさしてるし。」
『そうなん!?』
俺も気づいていなかった。というか音羽の音が元々そこそこ小さい音にしていたからそれよりもまだ小さくしているということ。
「とりあえず1回やってみよ。ハマるかもしれんし。」
「せやな。」
そして時間的にも今日はこれでラスト。その1曲を演奏した。問題の1番と2番の間に差し掛かる。元々ギター以外音を抜いているところだったからその2拍分だけ静かになる。そして俺の声で2番が始まった。他のどのパターンよりも歌い出しが気持ちいい。思わず笑みがこぼれていた。
「これやな。」
「うん。これ以外もう考えられへん。」
演奏後、汗を流して立つ俺たちはそう言い合った。これで本当にこの曲の完成だ。
「編曲んところ変えなあかんな。『KYUKA組』に。」
0
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説

隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)
チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。
主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。
ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。
しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。
その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。
「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」
これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。

可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~
蒼田
青春
人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。
目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。
しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。
事故から助けることで始まる活発少女との関係。
愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。
愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。
故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。
*本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。

僕(じゃない人)が幸せにします。
暇魷フミユキ
恋愛
【副題に☆が付いている話だけでだいたい分かります!】
・第1章
彼、〈君島奏向〉の悩み。それはもし将来、恋人が、妻ができたとしても、彼女を不幸にすることだった。
そんな彼を想う二人。
席が隣でもありよく立ち寄る喫茶店のバイトでもある〈草壁美頼〉。
所属する部の部長でたまに一緒に帰る仲の〈西沖幸恵〉。
そして彼は幸せにする方法を考えつく――――
「僕よりもっと相応しい人にその好意が向くようにしたいんだ」
本当にそんなこと上手くいくのか!?
それで本当に幸せなのか!?
そもそも幸せにするってなんだ!?
・第2章
草壁・西沖の二人にそれぞれの相応しいと考える人物を近付けるところまでは進んだ夏休み前。君島のもとにさらに二人の女子、〈深町冴羅〉と〈深町凛紗〉の双子姉妹が別々にやってくる。
その目的は――――
「付き合ってほしいの!!」
「付き合ってほしいんです!!」
なぜこうなったのか!?
二人の本当の想いは!?
それを叶えるにはどうすれば良いのか!?
・第3章
文化祭に向け、君島と西沖は映像部として広報動画を撮影・編集することになっていた。
君島は西沖の劇への参加だけでも心配だったのだが……
深町と付き合おうとする別府!
ぼーっとする深町冴羅!
心配事が重なる中無事に文化祭を成功することはできるのか!?
・第4章
二年生は修学旅行と進路調査票の提出を控えていた。
期待と不安の間で揺れ動く中で、君島奏向は決意する――
「僕のこれまでの行動を二人に明かそうと思う」
二人は何を思い何をするのか!?
修学旅行がそこにもたらすものとは!?
彼ら彼女らの行く先は!?
・第5章
冬休みが過ぎ、受験に向けた勉強が始まる二年生の三学期。
そんな中、深町凛紗が行動を起こす――
君島の草津・西沖に対するこれまでの行動の調査!
映像部への入部!
全ては幸せのために!
――これは誰かが誰かを幸せにする物語。
ここでは毎日1話ずつ投稿してまいります。
作者ページの「僕(じゃない人)が幸せにします。(「小説家になろう」投稿済み全話版)」から全話読むこともできます!

転校して来た美少女が前幼なじみだった件。
ながしょー
青春
ある日のHR。担任の呼び声とともに教室に入ってきた子は、とてつもない美少女だった。この世とはかけ離れた美貌に、男子はおろか、女子すらも言葉を詰まらせ、何も声が出てこない模様。モデルでもやっていたのか?そんなことを思いながら、彼女の自己紹介などを聞いていると、担任の先生がふと、俺の方を……いや、隣の席を指差す。今朝から気になってはいたが、彼女のための席だったということに今知ったのだが……男子たちの目線が異様に悪意の籠ったものに感じるが気のせいか?とにもかくにも隣の席が学校一の美少女ということになったわけで……。
このときの俺はまだ気づいていなかった。この子を軸として俺の身の回りが修羅場と化すことに。



プール終わり、自分のバッグにクラスメイトのパンツが入っていたらどうする?
九拾七
青春
プールの授業が午前中のときは水着を着こんでいく。
で、パンツを持っていくのを忘れる。
というのはよくある笑い話。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる