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コタエハ

俺たちは答えを知らない⑨

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「奏、そのドラム。」
「やっぱ気づいたか。ちょっとだけ変えた。叩きにくかったし、こっちの方がいいと思ったから。」

その日の練習、一度合わせてみたら少しだけ奏のドラムが変わっていた。しかも、俺たちの想像を超えてくるような刻み方をしていて、この曲をさらにいいものに仕上げている。

「なんか上手いこといってるし、今日は休憩にする?いいイメージのまんまで終わったほうがいいやろ?」
「ごめん。もう1回最後のだけやらせて。」

そう声を上げたのは楓。何かに焦っているような目をしている。

「わかった。みんなもええよな?」
『もちろん。』

 そして2回目の演奏。楓のギターが少しだけ変わっていた。

「楓も変えた?」
「そう。まだ完成してないけど、ここだけは悩んでて。」

楓が悩んでると言ったのは1番と2番の間。ここのつなぎは俺達も悩んで、思いついたもので1番いいもので妥協した。

「もう1回。もう1回やらせて。今日中に完成せんと寝られへん。」
「分かった。」

 そのあと数回弾いたが、結局しっくりくるものはなかった。

「これで私が思いついてたのは終わり。他なんかある?」
「俺は思いついてない。」
「俺と桜は作るときに死ぬほど試したからな。」
「それはそう。」

ここまで試してもしっくりくるのがないなんて、今までにない体験だ。

「音羽はなんかある?」

そして話は今まで黙っていた音羽に回される。

「逆に引き算は?」
「引き算。何も鳴らさんのとか?」
「そゆこと。ここは一旦落ち着くところやから、逆に何も鳴らさんのもありやと思う。私もちょっと音ちっさしてるし。」
『そうなん!?』

俺も気づいていなかった。というか音羽の音が元々そこそこ小さい音にしていたからそれよりもまだ小さくしているということ。

「とりあえず1回やってみよ。ハマるかもしれんし。」
「せやな。」

そして時間的にも今日はこれでラスト。その1曲を演奏した。問題の1番と2番の間に差し掛かる。元々ギター以外音を抜いているところだったからその2拍分だけ静かになる。そして俺の声で2番が始まった。他のどのパターンよりも歌い出しが気持ちいい。思わず笑みがこぼれていた。

「これやな。」
「うん。これ以外もう考えられへん。」

演奏後、汗を流して立つ俺たちはそう言い合った。これで本当にこの曲の完成だ。

「編曲んところ変えなあかんな。『KYUKA組』に。」
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