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マナツノ
旅の終わり
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日も段々と低くなってきて、少しずつオレンジ色に色づき始める。
私たちは朝と同じように後ろの方に座り、バスに揺られていた。奏も楓も音羽もカレンもきいも寝てしまっている。起きているのは私と久志の2人だけだ。
「みんなめっちゃ寝るやん。」
「まあ疲れてるんでしょ。着いたら起こしてあげよ。」
バスの窓からは暖かい夕日が差し込んでいて、私たちの頬を朱く染めている。
「久志はどうやった?この旅。」
「いい息抜きになった。それに、このメンバーで高校生の間にどこか行けるのってたぶんこれが最後やからな。」
「せやな。」
久志は少し寂しそうに言う。出会った頃の久志なら、絶対にこんなことは言わなかった。
「久志も大人なったなぁ。」
「バカにしてんのか?」
「いや、高校生活満喫できてるんやったらいいんよ。どう?『青春』って何か見つかった?」
あの頃久志が知らなかったこと。今ならそれの答えは知っているのだろう。
でも、その答えは聞こえてこなかった。
左肩、久志が座っている席の方の肩に体重がかかる。大好きな匂いと、ゆったりとした呼吸が感じられる。
久志は私の肩に頭を乗せて眠り始めた。
「やっぱりかー。眠そうやったもんね。」
私は起こさないように久志の肩をこっちに寄せ、首を倒した。
「おやすみ、久志。」
そして私も眠りについた。
「起きろ~、起きろ~、もう着くぞ~。」
奏のそんな声で目を覚ます。そこにはニヤニヤ笑っている久志以外のみんながいた。
「おはよー、2人だけの世界はどうだったかな?」
「よくもまあ、そんなことやるよね。」
「私やったら人前でやろうとは思わんな。」
「アツアツショット、あざした。」
「えーっと、とりあえずひい君解放したげて。」
きいのそんな言葉に私は今の自分の状況を確認する。肩を寄せて、頭を寄せていたからか、私の首筋の辺りに目を覚ました久志がいるのだ。
「ご、ごめん!」
「別にええで。俺も起きたんさっきやし。」
荷物を持ってバスを降り、フェリーの待合所に入る。
「今から乗って、着くんは9時ぐらいと。どーせ船内は場所ないんやろうな。どーする?」
久志はチケットに書いてある到着予定時刻を見ながらこの後のことを考える。9時に三ノ宮に着くとして、そこから晩ご飯を食べてたら、今度は終電が危なくなってくるはずだ。つまり、家に帰って食べないといけないわけで…
「それやったら船内で食ったらええやん。立ち食いそばあったやろ?」
カレンがそんなことを言った。確かに記憶のどこかにそんなものがあったような気がする。
「じゃあ順番で食べに行こか。そんで、席やねんけど、いいとこあんねん。」
奏がニヤリと笑った。
やがてフェリーがやってきて、私たちは乗り込んでいく。奏を先頭に階段を上がって行き、そして最上階までやってきた。
「ここもないやん。どないすんの?」
「いやぁ、もっと上だ。」
そして外に出た。来る時にも写真を撮ったあの場所。
「夜の海の上やねんから、ほぼプラネタリウムやろ?」
少しずつ離れていく小豆島を見ながら、私たちは壁にもたれて座る。離れていく小豆島の写真を撮ろうと上がってくる人の背中を見ながら、小豆島の影を見送った。
「また来ような。」
久志が呟く。
「そうだな。また来よう。」
奏が反応する。
「集まれない訳ちゃうんやし、来れるやろ。」
楓が笑う。
「じゃあ、その約束ってことで、」
音羽が立ち上がる。
「写真でも撮るかぁ!」
カレンがスマホを壁に立てかける。
「次もこのメンバーで!」
きいが言うと、カウントが始まる。
「絶対来よう!」
私が叫ぶと、シャッターが切られた。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
これにて第14章完結!夏休み編終了です!
途中勉強を優先にしていた時期もあり更新が途切れ途切れになりましたが、何とか元の予定通りに進みました!
次は文化祭、そして受験が近づいてくる2学期編です。また更新が途切れることもあるかもしれませんが、作品の応援のほどよろしくお願いします!
私たちは朝と同じように後ろの方に座り、バスに揺られていた。奏も楓も音羽もカレンもきいも寝てしまっている。起きているのは私と久志の2人だけだ。
「みんなめっちゃ寝るやん。」
「まあ疲れてるんでしょ。着いたら起こしてあげよ。」
バスの窓からは暖かい夕日が差し込んでいて、私たちの頬を朱く染めている。
「久志はどうやった?この旅。」
「いい息抜きになった。それに、このメンバーで高校生の間にどこか行けるのってたぶんこれが最後やからな。」
「せやな。」
久志は少し寂しそうに言う。出会った頃の久志なら、絶対にこんなことは言わなかった。
「久志も大人なったなぁ。」
「バカにしてんのか?」
「いや、高校生活満喫できてるんやったらいいんよ。どう?『青春』って何か見つかった?」
あの頃久志が知らなかったこと。今ならそれの答えは知っているのだろう。
でも、その答えは聞こえてこなかった。
左肩、久志が座っている席の方の肩に体重がかかる。大好きな匂いと、ゆったりとした呼吸が感じられる。
久志は私の肩に頭を乗せて眠り始めた。
「やっぱりかー。眠そうやったもんね。」
私は起こさないように久志の肩をこっちに寄せ、首を倒した。
「おやすみ、久志。」
そして私も眠りについた。
「起きろ~、起きろ~、もう着くぞ~。」
奏のそんな声で目を覚ます。そこにはニヤニヤ笑っている久志以外のみんながいた。
「おはよー、2人だけの世界はどうだったかな?」
「よくもまあ、そんなことやるよね。」
「私やったら人前でやろうとは思わんな。」
「アツアツショット、あざした。」
「えーっと、とりあえずひい君解放したげて。」
きいのそんな言葉に私は今の自分の状況を確認する。肩を寄せて、頭を寄せていたからか、私の首筋の辺りに目を覚ました久志がいるのだ。
「ご、ごめん!」
「別にええで。俺も起きたんさっきやし。」
荷物を持ってバスを降り、フェリーの待合所に入る。
「今から乗って、着くんは9時ぐらいと。どーせ船内は場所ないんやろうな。どーする?」
久志はチケットに書いてある到着予定時刻を見ながらこの後のことを考える。9時に三ノ宮に着くとして、そこから晩ご飯を食べてたら、今度は終電が危なくなってくるはずだ。つまり、家に帰って食べないといけないわけで…
「それやったら船内で食ったらええやん。立ち食いそばあったやろ?」
カレンがそんなことを言った。確かに記憶のどこかにそんなものがあったような気がする。
「じゃあ順番で食べに行こか。そんで、席やねんけど、いいとこあんねん。」
奏がニヤリと笑った。
やがてフェリーがやってきて、私たちは乗り込んでいく。奏を先頭に階段を上がって行き、そして最上階までやってきた。
「ここもないやん。どないすんの?」
「いやぁ、もっと上だ。」
そして外に出た。来る時にも写真を撮ったあの場所。
「夜の海の上やねんから、ほぼプラネタリウムやろ?」
少しずつ離れていく小豆島を見ながら、私たちは壁にもたれて座る。離れていく小豆島の写真を撮ろうと上がってくる人の背中を見ながら、小豆島の影を見送った。
「また来ような。」
久志が呟く。
「そうだな。また来よう。」
奏が反応する。
「集まれない訳ちゃうんやし、来れるやろ。」
楓が笑う。
「じゃあ、その約束ってことで、」
音羽が立ち上がる。
「写真でも撮るかぁ!」
カレンがスマホを壁に立てかける。
「次もこのメンバーで!」
きいが言うと、カウントが始まる。
「絶対来よう!」
私が叫ぶと、シャッターが切られた。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
これにて第14章完結!夏休み編終了です!
途中勉強を優先にしていた時期もあり更新が途切れ途切れになりましたが、何とか元の予定通りに進みました!
次は文化祭、そして受験が近づいてくる2学期編です。また更新が途切れることもあるかもしれませんが、作品の応援のほどよろしくお願いします!
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