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マナツノ

聖地巡礼②

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「そろそろ行くか。」

奏の声で海を上がって、水分を拭き取る。濡れた水着の上から昨日の服を着て、荷物を持った。

 向かうのは近くにある温泉。ここの露天風呂からは瀬戸内海が一望できて、この旅行の目玉の1つなのだ。

「桜やっぱりさ、ちょっとおっきくなった?」
「そう?そんな感じあんまりせーへんけど。」

脱衣所で服を脱いでいると、隣に立つ楓がそんなことを言ってくる。そう言う楓も、少し前よりは大きくなったような気がするが、これはあえて口に出さない。絹のような白い肌はいつ見たって目を奪われる。私もスキンケアはちゃんとしてるが、ここまで綺麗じゃない。そしてその白さが、楓の茶色い髪をより一層映えさせる。

「こんな彼女がいるなんて、奏は幸せ者やな。」
「まあ、あいつのためにも可愛くいたいから。」

珍しく少しデレた。そんな楓が可愛くて、少し笑ってしまった。

「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!」

風呂の入り口のところからそんなきいの叫び声が聞こえてくる。

「どうしよう!どうしよう!2kgも増えちゃったぁ!」

きいは脱衣所中に聞こえる声でそう言う。きいの事だからどうせこの夏休み中動いてなかったんだろうな。

「大丈夫大丈夫、分からんて。」

音羽もそう慰めているが、音羽のその女子の理想を詰め込んだ体型を晒されながら言われると、嫌味にしか聞こえてこない。

 まずは体を洗って、そして露天風呂に出る。

「わぁー!」

さっきまで死にそうな顔をしていたきいも、その大海原を見たら、ててててと柵の方まで走り始める。

「きいだな。」
「絶対きいや。」
「この声そうなん?分からんわ。」

隣の柵の向こうからそんな声が聞こえてくる。

「久志、おんの?」
「女子たちも出てきたんやな。」

オープンしたてだからほぼ貸切状態。私たちは少しだけ大きな声で話し始めた。

「そっちどんな感じ?」
「そんな変わらんと思うで、海がめっちゃ綺麗なだけ。」

柵の向こうの久志と笑い合いながら喋っていると、後ろからクスクスと笑い声が聞こえてきた。

「アニメみたいなことを現実でやっちゃう人ってホンマにおるんやな。」
「どうぞどうぞ続けて。」
「やっぱり桜は2次元の存在やねんな。」

とても不服だが、聞こえなかったことにして、久志との話を続けた。

 そして昨日思うように浸かれなかった浴槽に入り、昨日から溜まったまんまの疲れを抜いた。
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