陰キャの陰キャによる陽に限りなく近い陰キャのための救済措置〜俺の3年間が青くなってしまった件〜

136君

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マナツノ

夏祭り④

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 1時間をこの炎天下の中で過ごす。それは何よりも苦行だ。

「じゃあどーするよ?」

楓は疑問をそのままぶつける。たしかに、今ここで1時間を無駄にするのは勿体ない。

「歩く?」

私は少し疑問気味にそう言ってみた。すると、みんなは私の方を向いた。「えっ?何?何?」と戸惑う私。そんな私を見て、笑顔でこう言うのだった。

『それだ!』

 そして結局私たちは歩き始めた。

「この先、見晴らしの丘ってやつがあるんやって。」
「それってこの上?」
「そそ。」

今日泊まる旅館までのガイドをするのは音羽。満場一致での決定だった。

 音羽は通り道にあるものを一つ一つ言いながら歩く。見晴らしの丘は少し坂を上ったところにあるようで、私たちは折角近くにあるのならと行ってみることにした。

 コンクリートで舗装された山道を登っていくと、小さな丘のようなところが見えてきた。

「これ?」

楓がその中に入っていく。

「地図上はそれになってる。」

木だけで作られた階段。いくつかの段は朽ち果てて無くなっていたり、崩れそうになっていたり。そんな階段を上ると絶景が拡がっていた。

 さっきまでいた港。小豆島の山。そしてどこまでも続く海。誰も彼も思わず写真を撮っていた。

「すげぇ。」
「ほんとすごい。」

口々に出てくる感嘆の声は、この景色を形容しているようだ。しばらく写真を撮り続け、そして全員がスマホをポケットにしまったのを見て、音羽が階段を降り始める。

「まだまだこれからやで。」

そう。この小豆島の旅はまだ始まったばかりなのだ。

 その後も歩き続ける。醤油の蔵があったり、佃煮の工場があったり。そして海の近くに出たと思えば、また山の中に入っていったり。そして、泊まる旅館に近づいてきた。

「とりあえず、先買い出ししとくか。」

いかにも地元のスーパーみたいなところで買い出しをする。

 今晩の宴に使うものの買い出しを済ませて、私たちは再度歩き始めた。

「あと10分ちょいで着くで。」

ここからは山側に向かって歩く。それも10分くらいのようだ。周りの風景は住宅から田んぼに変わり、カエルの鳴き声が聞こえるようになってきた。緑も増えてきて、電柱についている街灯の数も減ってきている。

 そして、少し大きめの建物が見えてきた。

「今日泊まるとこはここやな。」

昭和にタイムスリップしたかのような外観。今日泊まる旅館についに到着した。
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