陰キャの陰キャによる陽に限りなく近い陰キャのための救済措置〜俺の3年間が青くなってしまった件〜

136君

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マナツノ

夏休み勉強会1-2

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「そろそろ昼飯にすっか。」

時間は12時を少し回った頃、もうそろそろ腹も空いてくる頃かなと思い、一旦勉強を切り上げて立ち上がる。船戸さんの言うとおり、数Cは早く終わりそうだ。

 俺が立ち上がると、みんな集中の糸がぷっつりと切れたように伸びをする。何人かへばって机に突っ伏している奴もいるが。

「何作るん?」
「この人数やし、無難にざるそばやな。簡単やし。」

キッチンのところに置いてあるカゴの中からそばの乾麺を取り出す。

「へぇ~、Qって料理できるんや。」
「まぁ、家事は杏と分担してしていたからな。」
「別に、この人数やねんからデリバリーでもよかったのに。」
「金かかるやん。」
「そりゃそうだ。」

奏はテーブルからこっちを見て、そんなことを言う。元から俺の頭の中にデリバリーの選択肢はなかった。別に料理するのは苦ではないからな。

「久志、なんか手伝おうか?」
「ん~、んじゃ上の棚からざるとあとちょうどいいサイズの皿出して。器もよろしく。てか、7個もあるかな?なかったらちょうどいいやつにしといて。」
「了解。」

そばを茹で始めると、桜が来て俺の隣に立った。俺はネギを切って、使う用と冷凍保存用に分ける。使う用のネギは器に入れて、わさびと一緒に机に持って行った。

 きいは机に突っ伏したまんま固まっている。楓は天を見上げている。もちろん2人とも勉強道具は片付けていない。

「きい、楓。片付けてくれ。そっちに置かんと全員座られへんから。」
「おっけー。」
「ちょっと待ってちょっと待って。あとちょっとだけぇ。」

楓はすぐに動き始めたが、きいは全く動く気配すらない。

 俺は無言で音羽にGOサインを出す。音羽は頷いて、きいのそばに寄って行った。そして耳元に口を持っていく。その瞬間、きいの肩がビクッと跳ねて、そしていそいそと片付け始めた。

「何言ったんだ?」
「さぁ?」

音羽はとぼけながらそんなことを言う。俺はネギとわさびを置いて、桜が火の番をしてくれているキッチンに戻った。

「てんきゅー。」
「もうそろそろ?」
「せやな。」

タイマーの表示は残り1分ちょい。桜は上の棚にあるボウルを背伸びして取り出した。

「向こう置いとくね。」
「おう。」

桜はボウルを流しのところに置き、俺は湯切りで茹でていたそばを取り出す。そして手早くボウルの中に移していった。

 〆るのは桜がやってくれてそのまま盛り付けまでやってくれるようだ。俺は麺つゆを水で割って、器に注いでいく。

「なんか夫婦みたいだな。」

背後の奏がそんな冗談を言う。

「まだ早いね。」
「まだ早いな。」
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