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マナツノ
私の進路②
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「ってことは福井県立大学?」
「そうだな。あそこなら研究もしっかりできるし。」
「なら一緒ね。」
私は嬉しくてそう言った。
久志はコーヒーを淹れてきて、テーブルの上に2つ置く。私は「ありがとう」って言ってそれを持ち上げた。
「そんなんや。学部は?」
「経済。てかあんまりないやろ。あそこ学部。」
久志が淹れてくれたコーヒーを飲みながらそう言う。
「でもさ、桜ならもっと上も目指せただろ?」
「それなら久志もでしょ?模試の結果毎回私よりいいんやし。」
「それは…」
久志はコーヒーを飲んで言い淀む。何年も一緒にいるからわかる。多分考えていることは同じだ。
「楽させてあげたいねん。今までこうやって杏と2人で暮らしてきて、その頃からいっぱいお金もらってた。父ちゃんも母ちゃんも向こうでいっぱい働いて、そのお金を俺に送ってくれた。だから、少しぐらい楽させてやりたいんねん。」
親を楽させてあげたい。そのためにレベルを落として、特待の枠に入り、授業料半額の待遇を受ける。その上で自分のやりたいことはしっかりする。そのための選択だろう。
私は言葉を紡いだ。
「私もね、あんなことがあって静岡行って、そして無理言って戻らせてもらった。お母さんはそのあと小浜に引っ越して、それでも連絡はしてもらってて、私のことを支えてくれてた。だから恩返ししたい。せめて少しでも近いところに住んで、一緒にいてあげたい。色々手に入れた私を、もっと近くで見て欲しい。」
そう言って久志を見る。手に入れたものは明るさとかそれだけじゃない。大切な友達、笑いあった仲間、そして大切な人。かけがえのない存在に巡り会えたことで私は変われた。
そんな私をお母さんに見て欲しいんだ。
「なら、絶対に受からないとな。」
「そうだね。絶対に受かる。でも、杏ちゃん1人で寂しくないかな?」
「そうだな。あいつなんやかんや言って寂しがり屋やからな。」
「久志が珍しくお兄ちゃんしてる。ウケる。」
「そんな珍しいか?」
「うん。明日隕石落ちるんちゃうかって思うくらい。」
ひとしきり笑いあって、そして久志の肩に頭を乗せる。久志の温もりが、呼吸が感じられる。私の鼓動がトクトクと速くなっていって、好きなんだなって感じる。
「最後の夏やな。」
「まだ夏は来るだろ。俺達には。」
「そうだな。あそこなら研究もしっかりできるし。」
「なら一緒ね。」
私は嬉しくてそう言った。
久志はコーヒーを淹れてきて、テーブルの上に2つ置く。私は「ありがとう」って言ってそれを持ち上げた。
「そんなんや。学部は?」
「経済。てかあんまりないやろ。あそこ学部。」
久志が淹れてくれたコーヒーを飲みながらそう言う。
「でもさ、桜ならもっと上も目指せただろ?」
「それなら久志もでしょ?模試の結果毎回私よりいいんやし。」
「それは…」
久志はコーヒーを飲んで言い淀む。何年も一緒にいるからわかる。多分考えていることは同じだ。
「楽させてあげたいねん。今までこうやって杏と2人で暮らしてきて、その頃からいっぱいお金もらってた。父ちゃんも母ちゃんも向こうでいっぱい働いて、そのお金を俺に送ってくれた。だから、少しぐらい楽させてやりたいんねん。」
親を楽させてあげたい。そのためにレベルを落として、特待の枠に入り、授業料半額の待遇を受ける。その上で自分のやりたいことはしっかりする。そのための選択だろう。
私は言葉を紡いだ。
「私もね、あんなことがあって静岡行って、そして無理言って戻らせてもらった。お母さんはそのあと小浜に引っ越して、それでも連絡はしてもらってて、私のことを支えてくれてた。だから恩返ししたい。せめて少しでも近いところに住んで、一緒にいてあげたい。色々手に入れた私を、もっと近くで見て欲しい。」
そう言って久志を見る。手に入れたものは明るさとかそれだけじゃない。大切な友達、笑いあった仲間、そして大切な人。かけがえのない存在に巡り会えたことで私は変われた。
そんな私をお母さんに見て欲しいんだ。
「なら、絶対に受からないとな。」
「そうだね。絶対に受かる。でも、杏ちゃん1人で寂しくないかな?」
「そうだな。あいつなんやかんや言って寂しがり屋やからな。」
「久志が珍しくお兄ちゃんしてる。ウケる。」
「そんな珍しいか?」
「うん。明日隕石落ちるんちゃうかって思うくらい。」
ひとしきり笑いあって、そして久志の肩に頭を乗せる。久志の温もりが、呼吸が感じられる。私の鼓動がトクトクと速くなっていって、好きなんだなって感じる。
「最後の夏やな。」
「まだ夏は来るだろ。俺達には。」
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